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日常すれすれ  作者: しゅんたろう
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孫は”転生者”?9 ― 妹・玲の魔法発動? ―


その日は、特別なことは何もなかった。


いつもの午後。

ウサギの家は相変わらず「昆虫の館」として完成され、

蒼ちゃんは静かに指揮を執っていた。


窓にはクモ。

手すりにサソリ。

玄関前には蜂の隊列。


「じいじ、そこはだめ」


私はココちゃんを持ち、素直に引き下がる。

ばあばはコアちゃんで、いつものように裏口を探っている。


蒼ちゃんは落ち着いている。完璧な布陣だ。


その時


リビングの隅。ベビーベッドの中で、妹の玲ちゃんが目を覚ました。


ご機嫌が良いらしい。小さな手を動かし、こちらを見ている。


私は声をかけた。


「玲ちゃん、みてるの?」


すると――


玲ちゃんは、声をあげはっきりと笑った。


声は小さい。だが、確かに「笑顔」だった。


■一斉崩壊


次の瞬間だった。


カタン。


まず、窓際のクモが倒れた。


続いて、サソリ。蜂の列が、まるで糸を切られたように崩れる。


室内に配置された昆虫フィギュア(使役獣魔)が、

同時に、同じ方向へ倒れた。


誰も触っていない。

風もない。


ただ、玲ちゃんが笑っただけ。


....................................。


一瞬、全員が黙った。


ばあばが言った。


「……あら?」


私は喉を鳴らした。


「今のは……(広域魔法では?)」


蒼ちゃんだけが動かなかった。


倒れた昆虫たちを見つめ、それから、ゆっくりと玲ちゃんのほうを見た。


その目が――妙に、静かだった。


蒼ちゃんは立ち上がり、

倒れた昆虫を一体ずつ拾い上げた。


丁寧に、元の場所へ戻す。


「きょうは、おしまいっ!」


そう言って、ウサギの家を閉じた。


それはどうやら戦略的撤退の合図のようであった。


ばあばが笑った。


「重みで倒れただけよ。たくさん置きすぎたのね」


私は頷いた。


「そうだな。バランスが悪かったんだ」


ふたりとも、「同時に倒れた」ことには触れない。


触れてはいけない、とどこかで思った。



その夜。

蒼ちゃんはベビーベッドのそばに座り、

玲ちゃんをじっと見ていた。


玲ちゃんは、何事もなかったように静かに眠っている。


蒼は小さく、つぶやいた。


「……まだ、はやいよ」


誰に言ったのかは、わからない。


■ジィジの独白


私は布団に入りながら、

昼間の光景を思い出していた。


偶然。

気のせい。

重力。


理屈はいくらでもつく。


だが――


あの瞬間、守る側がすべて無力化された。


そんな気がしてならない。


私は天井を見つめ、考えるのをやめた。


考えすぎるのは、もう十分だ。


そして翌日。


蒼は昆虫を並べなかった。


玲の近くには、

何も置かなかった。


ウサギの家が、

久しぶりに「家」になっていた。


私はそれを見て、なぜか少し安心した。


今日は、守らなくていい日なのだ。


そう思うことにした。

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