孫は”転生者”?6蒼の所作に「武家の気配」
孫の兄 蒼を見ていて、最近どうにも落ち着かない。
3歳児の感情表現や動きというのは、普通はもっと雑で単純だ。
走る、転ぶ、泣く、笑う。
だが、じいじの欲目かもしれぬが、この子は違うのだ。
玩具を手に取る前に、一瞬だけ間がある。
座るとき、必ず背中を伸ばす。
妹に近づくとき、必ず自分が外側に立つ。
――守る位置だ。
そんな言葉が、ふと頭に浮かんだ。
おかしな「礼」
ある日、私は床に座って積み木をしていた。
兄は少し離れたところからこちらを見ていたが、近づくと、なぜか一瞬だけ立ち止まり、軽く頭を下げた。
もちろん、誰に教えられたわけでもない。
保育園でもそんなことは普通習わないだろう。
「……今、礼をした.......のか?」
気のせいかと思った。
だが、その後も同じような仕草が何度か続いた。
物を渡すときは、両手。
叱られたとき、言い訳をせずに黙って聞く。
泣く前に、ぐっとこらえる。
3歳児の所作ではない。
■妹への態度
妹に対する態度が、また妙だった。
かわいがる、というより
..............気遣う。
泣けばすぐに近づくが、抱き上げようとはしない。
周囲を確認し、ママを呼ぶ。
自分は一歩引いて、見守る。
まるで――
主君と距離を保つ家臣のようだ。
「玲ちゃん、僕は玲ちゃんのおにいちゃまなの。はやく大きくなって遊ぼうね」
そう言うと、兄は一瞬だけちらり、とこちらを見た。
言葉は幼児そのものなのだが、その目が、どうにも...........
ふとした既視感
夕方、妹が眠った後。蒼が窓の外をじっと見ていた。
私は隣に腰を下ろし、何気なく言った。
「蒼ちゃん、何見てるん?」
返事はない。
だが、背筋はまっすぐで、視線は遠い。
その姿を見た瞬間、胸の奥がざわついた。
――ああ、これは知っている。
昔、史料館で見た武将の肖像。
戦の前夜、城を見下ろす家臣の立ち姿。
あの感じに、よく似ている。
理屈をつける
私は首を振った。
「馬鹿だな。考えすぎだ」
図鑑をよく読む子は、賢く落ち着いて見える。
妹を大事にするのは、きっと、優しい性格なだけだ。
所作が丁寧なのは、両親のしつけがよいからだろう。
そう自分に言い聞かせる。
だが――
抱き上げるとき、兄の重心の置き方が妙に安定していること。
転びそうになっても、手をつく方向が的確なこと。
(運動神経が良いだけなのか?)
どうも、納得できない。
夜、布団に入りながら、私は苦笑した。
「まさかな……」
異世界だの、転生だの。
そんな話を信じる歳でもない。
それでも。
この兄妹には、ただの兄妹以上の“何か”がある。
そう思ってしまう自分を、完全に否定できないのであった。
「……まあいい。蒼が玲を守ってくれるなら、ありがたい話だ」
妹がすやすや眠る声が聞こえる。
その横で、兄は小さな身体を丸めながらも、どこか張りつめたまま眠っていた。
――まるで、夜番に就く武士のように。
私は電気を消し、そっとドアを閉めた。
知らないほうが、幸せなこともある。
だが、気づいてしまった以上、
じいじは――少しだけ、そっと覚悟を決めたのであった(笑)。




