孫は”転生者”?5 ― 兄・蒼、と妹・玲。ママに内緒の“魔法修行” ―
兄の蒼はもうすぐ3歳。妹の玲は、生まれてまだ間もない。
だが蒼は知っている。玲はただの赤子ではない。
蒼は、前世で彼女の守護者だった。
滅びゆく王国で、最後まで姫を守る役目を負った剣士――いや、護衛騎士。
そして玲は、魔法を司る亡国の姫だった。
世界は失われ、二人は別々の時を経て、この世界に転生した。
蒼の記憶は断片的だが、確信だけは揺るがない。
守るべき存在が、再び目の前にいる。
■修行の始まり
リビングの午後。
ママが洗濯物を干しに行った隙を見て、蒼は静かにベビーベッドの横に座った。
「姫。今は力を使わなくていい。
だが、感覚だけは取り戻しておこう」
玲は蒼をじっと見つめ、わずかに唇を動かす。
声にならない声が、確かに届いた。
――わかっている。焦らないわ。
蒼はうなずいた。
言葉は要らない。前世からの意思疎通だ。
■風の魔法(再確認)
蒼は、そっと手のひらを前に出した。
「これは風の基本だ。力ではなく、流れを意識する」
息をゆっくり吐く。
その瞬間、エアコンの風向きが変わったかのように、カーテンがわずかに揺れた。
偶然かもしれない。(じいじ:そう、ただの偶然だろう。)
だが玲は、はっきりと反応した。
視線が動き、蒼の手を追う。
――成功している。
蒼は確信した。玲の魔力は眠っているだけだ。
■結界の痕跡
蒼は床に置かれた新聞に、近くにあった赤いクレヨンを見つけ、丸を描いた。
無意識の行動だったが、その形は前世の魔法陣に酷似していた。
「ここは安全だ。結界の外には漏れない」
玲はその円の中で、驚くほど落ち着いた表情を見せた。
――結界は、まだ残っている。
蒼は少し安堵した。
■ママ接近
背後から足音がした。
「二人とも、何してるの?」
蒼は一瞬、身構えた。だがすぐに平静を装う。
「れいちゃんとまるかいて遊んでたの」
玲はタイミングよく小さな声を上げ、何事もなかったかのように振る舞った。
――姫も心得ている。
ママは疑うことなく微笑み、キッチンへ戻っていった。
■守護者の誓い
静けさが戻ると、蒼は玲の小さな手をそっと包んだ。
「この世界では、まだ力を使う必要はない。
だが、いずれ思い出す時が来る」
玲の指が、微かに蒼の指を握り返す。
――その時まで、任せるわ。
蒼は胸の奥で誓った。
(王国はもうない。だが、守るべき姫はここにいる。)
この世界では、剣も魔法も不要だ。
必要なのは、仮初の兄として、先に歩くことだけ。
ママには知られなくていい。修行は静かに続ければいい。
まずは――
クレヨンを片付けることから始めよう。
(以上が昨日みた、じいじの夢であった。)




