孫は“転生者”?2 知らない天井 (じいじの妄想 孫目線)
――知らない天井だ。
わらわはゆっくりと瞼を開いた。
薄いオレンジ色の光。白い天井。
なにか柔らかい布に包まれて揺れている。
(……ここはどこだ?)
最後の記憶は、異世界で魔王軍との決戦のさなか、爆炎魔法を真正面から受け――
いや、思い出すだけで頭が痛い。
まさか……転生?
わらわとしたことが……!
すると、とつぜん巨大な顔が近づいてきた。
うわっ、でかい! 迫力がすごい!
そしてそいつは言った。
「ジィジだよ〜〜、かわいいなぁ〜〜」
(ジ、ジィジ? な、なんだその称号……?
こいつ、王国の賢者か? それとも村の長老か?
いや、口が……近い! 息が!!)
私は必死に小さな手をバタつかせる。
(やっ、やめろ、今は魔力が充分に回復していない!
そんな至近距離で喋るな、飛沫が!)
すると今度は、別の巨大生物が現れた。
柔らかい匂いの、優しげな女性だ。
「おはよう〜、おむつ替えようね〜」
(おむつだとっ? ふざけるな!
王国一の魔導士であるこのわらわを赤子扱いとは!
おい、勝手に脱がすな! わらわはまだ心の準備が……)
しかし体は言うことを聞かない。
指先もろくに動かせぬ……まさかこれは“乳児の身体”?
(くっ……転生のリスク、甘くみすぎておったようじゃ……)
そのとき――再びあの「ジィジ」が現れた。
「ほら〜、声出た!かわいい〜」
(ち、違う! 今のは詠唱だ!
魔力を高めるための古代語なんだ!
“あうー”ではない!)
しかしジィジは満面の笑み。
「はいはい、魔法使いさんですね〜、かわいいね〜」
(……え? まさか、バレてる?
この男……侮れん。
異世界からの転生すら看破するとは……)
私は決意した。
(この家でしばらく世話になることにする。
力が戻るまで、転生のことは絶対に秘密だ……
だが、あの“ジィジ”だけは油断できん)
するとジィジが、そっと私のほっぺをつついた。
「笑った!今、絶対笑ったよ〜」
……しまった。
頬がゆるんだのだ。
(くっ、赤子の体、反射が多すぎる……!
このままでは“かわいさ”に心まで侵食される……!)
そんな私の葛藤をよそに、
ジィジとバァバは顔を見合わせ、幸せそうに笑っている。
(……まあ、しばらくこの世界の暮らしも悪くないか)
そう思った瞬間、私はまた眠気に飲まれた。
これは魔力枯渇か、はたまた単なる乳児の睡眠サイクルか。
――こうして第2の人生は始まった。
ジィジとバァバに囲まれた、ふわふわで、あったかい日々。
(……転生も悪くない)
そう思いながら、私は再び夢の世界へと落ちていった。
などと、まいにち妄想するじいじであった。




