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日常すれすれ  作者: しゅんたろう
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再起動



今年の夏は異常だった。

昼間、アスファルトの温度は60度を超え、

家の中もエアコンなしでは危険域。

それでも在宅勤務を続ける僕の横で、ノートパソコンが唸っていた。


「熱暴走かな……」

ファンが回りっぱなしだ。


午後3時。

Zoom会議の途中、画面がフリーズした。


その瞬間、パソコンのスピーカーから「……あ……ああ……」という、

かすれた女性の声が聞こえた。


……誰だ? 今、誰か喋った?


ヘッドセットを外すと、今度はスマホのSiriが勝手に反応した。


「すみません、それはわかりません」


いや、呼んでない。


僕はパソコンとスマホを一度、強制終了した。

再起動すると、特に異常はない……ように見えた。


けれど、メールの下書きに“見覚えのない文”が残されていた。


「ここは……暑い……出して……」


誰かのいたずらか?

それともウイルス?

そう思い、ウイルスチェックをかけたが異常なし。


その夜、寝ようとしたとき。

ベッドの枕元に置いたスマホがまた光った。


「パスワードが間違っています。……もういちど、出して」


スマホのロック画面には、見知らぬ女性の顔写真。

見たこともない。撮った覚えもない。

端末のアルバムには“最近撮影した写真”として、その女性が複数写っていた。


うちのリビングで。

パソコンの前で。

僕の背後で。


だんだん顔が近づいてくる。


「……暑いの、もう……イヤ……」


その瞬間、ブレーカーが落ちた。

真っ暗な部屋。静かな、猛暑の夜。


耳元で、かすかにファンの音が聞こえた。

いや、違う。


これは、

誰かの、呼吸だ。


電子機器は高温に弱く、想い出はもっと壊れやすい。

夏の終わりに、どうぞ冷やしておいてください。あなたの、端末も、心も。

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