孫は“転生者”?
なろう系の異世界転生ものが大好きな私は、還暦を迎え二人目の孫が生まれた日、また“悪い癖”が顔を出した。
――こやつ、まさか中身が異世界人では?
お産直後の赤ん坊を抱いたとき、つい脳内でベタな転生テンプレが再生されてしまう。
(……知らない天井……)
(こいつらは誰だ? なぜわらわの言葉が通じる?)
(よだれ垂らしながら近づくこの男……さっき“じいちゃん”と言ったな?)
いやいやいや、落ち着け自分。
ただの赤ん坊だ。異世界からの亡命者じゃない。
……と、自分に言い聞かせながらも、2人目の孫(女の子)のおむつ替えをしたときは、思わず妄想が暴走した。
(おい待て……なに勝手にわらわの服を脱がせてる!? このロリコンがァァァ!!)
脳内の“中の人”が叫ぶ。
私は思わず素早くおしりをきれいにすると、視線をそらし無言でテープをとめた。
初孫の2歳の男の子にも、時々こんな想像をしてしまう。
「ジーちゃんだよ〜」
(くっさ! 口近づけんな!)
「飛行機びゅーん!どうだじいちゃんのかっこええだろっ。」
(いや、“飛竜騎士団”の機動そんなじゃねぇから!!)
もちろん、全部妄想。
だが、想像すればするほどおかしくて、可愛くてたまらない。
そんなある日。
二人目の孫娘の沐浴を手伝っていたときだ。
お湯につけると、彼女はぱっちり目を開け、湯面を見つめて小さく口を動かした。
「……あー……うー……」
その瞬間、私の脳裏に“転生者あるある”が駆け巡る。
(……水属性魔法の詠唱か!?)
思わず身構える私。
すると、赤ん坊が小さくくしゃみをした。
「……ぷしゅっ」
その拍子に、私の白髪に湯しぶきが飛んだ。
すかさず脳内の“中の人”が呟く。
(……すまぬ。魔力暴走した。じいや、許してつかわせ)
脳内では孫は、異世界のやんごとなき魔法使いのお姫様と化していた
私はふっと笑い、赤ん坊のほっぺを指でつついた。
「暴走でもなんでもいいけどね。
君が元気でいてくれたら、じいちゃんはそれで十分だよ」
すると赤ん坊はふにゃっと笑った。
その笑顔を見て、私は思った。
――もし本当に異世界の魂が入っていたとしても、
結局この子は、世界で一番かわいい“わが孫”なのだ。
……ただし、将来しゃべり始めたとき、
「前世では魔王だった」
とか言われたら、そのときは全力でツッコもうと思う。




