夏のカフェテラス
「夏のカフェテラスにて」
真夏の夕方。
健二はオープンテラスのカフェで、わざとらしく文庫本を片手にコーヒーを飲んでいた。
健二(心の声)
「知的で余裕のある俺を演出。素足にデッキシューズも映える……声をかけるなら今だ」
ちょうど隣の席に女子大生の二人組。健二、さわやかな笑顔で声をかける。
健二「暑いですね。アイスコーヒーでもご一緒にどうですか?」
女子A「……あ、ありがとうございます」
女子B(小声で)「ねえ、なんか臭わない?」
女子A(小声)「うん……。あの納豆みたいなすっぱい匂いみたいなの……」
健二、耳ざとく気づいて慌ててフォロー。
「いやいや、それはね……フェロモンのにおいなんです。
科学的に証明されてるんですよ!
あなた方のような素敵なお嬢さんに出会えば、男はみんなフェロモン出すって。」
女子B、首をかしげつつ笑い飛ばす。
「ちがうでしょ! フェロモンじゃなくて、ただ足が蒸れて発酵してるだけじゃん!」
女子A「たしかに(笑) 夏に素足にデッキシューズとか今時、無理あるよね!!
どっかのおじさんトレンディータレントJ.I.じゃあるまいしWWWW」
二人は笑いながら去っていく。
残された健二、額の汗をぬぐいながら。
「……やっぱり、この夏はメッシュのスニーカーに戻すか」
彼の“完璧な演出”は音もなく崩れ、デッキシューズは、人知れず涙した。




