定時メロン
商社勤めの俺の楽しみは、毎日「15時ちょうど」に支給される、社員食堂のメロン半玉サービスだ。
福利厚生の一環――らしいが、創業者の「おやつは果物に限る!」という謎のポリシーによって、30年以上続いているという。
この時間になると、社内のあちこちから「チッチッチッチ……ピッ」という時報音が鳴り始め、社員全員がメロンをもらいに一斉に移動する。
「メロン定時」と呼ばれ、始業・終業よりも守られている。
ある日、俺はふと思った。
「この商社、メロンで動いてるな……」
そんなときだった。人事異動でやってきた若い女性が、驚愕の事実を口にした。
「えっ、みなさん15時のメロンって……自費じゃないんですか?」
「は? 社食で無料でもらってるけど?」
「……え?私、渡された紙に“1回980円・給与天引き”って書いてありましたよ……」
……ざわっ。
調べてみると、新入社員や転入者だけが有料になっていた。理由は「メロン愛が本物か見極めるため」らしい。
その日、社内で小さな暴動が起きた。
翌日、総務部が発表した。
「制度は撤廃します。今後、全社員有料とします。なお、希望者には時計型メロン定期券を支給します(※税込39,800円)」
……高すぎるだろ。
だが数日後、俺はその腕時計型メロンパスを装着していた。
なぜなら、それをつけて食堂に行くと、厨房のおばちゃんがにっこり笑って言うのだ。
「お兄ちゃんは、“本物”だね」
……悪い気はしない。
俺の腕には、時刻とともに糖度が表示される“メロンウォッチ”。
どうやら、俺はこの会社から一生、逃れられないらしい。