夢の階乗19「夢同盟 Luna=Sophy Sophy=Luna 」
■再び夢世界にて
その夜も俊一郎は、CPAPを装着せずベッドに入る。
浅い眠りに落ちた瞬間、視界が歪み、あの赤い影が現れる。
彼女はもう笑わない。静かに告げる。
(夢の中だとやはり死なないのか......ちょっとうれしいような....)
「私は御影ルナ。御影の妹。そして——西暦2150年からの使者」
(Luna=Sophy Sophy=Luna........ 成程ね)
俊一郎は息をのむ。
「えっ。未来……?」
「あなたの歴史介入で、我々の時代は崩壊の淵に立たされた。だが兄は……もっと危険な改変を企てている」
■同盟の条件
ルナはテーブルに“未来の地図”を広げた。
そこには見覚えのない国境線、存在しない都市名。
「これが兄の計画後に出来上がる世界。あなたの現代から見れば、完全に別の歴史よ」
「で、俺は何をすればいい」
「私と同盟を結び、兄を止める」
「……裏切らない保証は?」
「そんなもの、あなたこそ信じていないでしょ。命の保険外交員さん!この世界に保証なんてのは存在しないのよ」
二人は無言で頷き合い、夢同盟が成立した。
■現実世界の作戦会議
官邸地下室。SPを遠ざけ、ノートPCの画面に奇妙な波形が映る。
それはルナが未来から送った“時系列干渉ログ”。
株価、為替、選挙結果、気象災害——改変の痕跡が点滅していた。
俊一郎は呟く。
「これを逆に使えば……」
ルナは眉をひそめた。
「未来の情報で今を操るのは、御影と同じ過ちよ」
一瞬、二人の視線がぶつかる。
そこに微かな火花——信頼か、それとも......
■最初の共同任務
夢世界に潜入し、御影が仕込んだ“歴史のトリガー”を探す。
廊下の両側には浮遊するページ——日付や出来事が揺らめく。
突然、未来の断片が襲いかかる。
AIが首相を務める国会、火星都市の入植式、海面上昇で沈む東京湾——。
ルナが手を伸ばし、俊一郎の腕を掴む。
「こっちへ!」
二人は扉を駆け抜け、時系列の裂け目を飛び越えた。
■裏切りの影
ミッションを終え、現実に戻った夜。
俊一郎の枕元に、見覚えのない小さな封筒が置かれていた。
中には、ルナが御影と並んで写る未来世界の写真。
裏には手書きの文字——
「同盟は仮初め。真の主はひとりだけ」
俊一郎は写真を握りつぶし、窓の外を見やった。
夜空には月が浮かび、雲の切れ間に赤い光が一瞬、またたいた。
「……さて、どっちが裏切るか、最後まで分からないな」




