夢の階乗18「裏切りの赤いドレス MI-Kage」
■再会の朝
赤いドレスの夜から、わずか二日後。
俊一郎の執務室。
分厚い封筒が、机の上にそっと置かれていた。差出人不明。
開くと、中には一枚の古びた写真——
そこに写るのは、昭和初期の上海租界で撮られたと思しき外国人女性。
真紅のチャイナドレスに身を包み、右手には……明らかに最新型の暗号通信機。
裏面には短くこう書かれていた。
「彼女は“MI-Kage”と呼ばれている」 Cf. MI-Kage=Military Intelligence-Kage
御影——。あの夢世界で幾度も対峙した男と同じ姓。
偶然か、血縁か、それとも——。
■尾行と罠
夜、銀座。
俊一郎はSPを撒き、ひとりで人混みに紛れた。
ポケットには、小型の心電図ペン型暗号受信機。
一定の周波数に合わせると、短波の中から英語とロシア語が交互に流れてくる。
その一部に、彼女の声——低く、抑揚を抑えた「交渉は決裂、対象を削除せよ」という冷たい響き。
「……削除?」
まさか、自分のことか?
俊一郎は、後を追った。
彼女は高級ホテルの裏口から、黒塗りのセダンに乗り込む。
タクシーを追跡しながら、心の中でつぶやく。
(なんで、おれはまた、夢ン中でスパイごっこしてる!)
■夢世界での接触
その夜も、CPAPを装着せずに眠る。
気がつくと、再び“歴史編集室”にいた。
机の上に並ぶのは、未来と過去の出来事が記された数百冊のファイル。
そこに——彼女がいた。
もう赤いドレスではない。黒のスーツに身を包み、冷たい瞳でこちらを見ている。
「あなた、やっと気づいたのね」
「……誰の指令で動いてる」
「未来よ。あなたが思っているよりずっと先の未来」
彼女は、時代改変を阻止するどころか、未来の政権のために“歴史の剪定”を行っていた。
そして——俊一郎もその対象のひとつだった。
■最終警告
夢世界の空が赤く染まり、歴史ファイルが次々と崩れ落ちていく。
彼女が右手を上げると、ファイルの中の「2025年」のページが燃え始める。
「これはあなたを消す未来。そうすれば——この時代はもっとクリーンになる」
俊一郎はポケットから、AED型スタンガンを取り出した。
「悪いが、俺はクリーンじゃない方が性に合ってるんでね」
ソフィーの額に照準をあわせる.......
Sophy: “You wouldn’t kill me. You would miss me” (私のこと殺れないでしょ。恋しくなるから)
Shunichiroh “I never miss. (狙いは外さない!=寂しくない)cf. From “007 World is not enogh”
バチンッ——!
(500J えぐいな!)
閃光が走り、彼女の姿が一瞬にしてかき消えた。
■現実への帰還
目を覚ますと、官邸のベッド。
SPの一人が耳打ちする。
「首相、先ほどの赤いドレスの女性ですが……外務省のリストに該当者がいません」
「だろうな。あれは、この時代の人間じゃない」
俊一郎はゆっくり立ち上がり、窓の外を見た。
霞ヶ関の夜景の中、どこかで赤い影がこちらを見ている気がする。
彼は薄く笑って呟いた。
「また夢で会おう——MI-Kage」




