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日常すれすれ  作者: しゅんたろう
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夢の階乗16「歴史崩壊まで、あと〇時間」


 

〈歴史の編集室〉——無数のホログラム画面が宙に浮かび、古代から未来までの出来事が同時再生されている。

 その中央に据えられた赤いレバー、それが“歴史改変のトリガー”だ。

 握れば過去と未来の因果を一瞬で書き換えられる。


「そのレバーから手を離せ、御影」


「離す? 君こそ、歴史を自分の都合で塗り替えてきただろう」


「俺は選択と集中をしただけだ」

私もだ——ただし、君よりもっと“徹底的に”な」


 二人の指先が同時にレバーにかかる。

 ソフィアは背後のパネルで暗号を解読し、御影の書き換えリストを上書きしようとする。

 だが御影の部下たちが武器を構えて突入、AED型スタンガンの青白い閃光が走る。


 その瞬間——未来からの情報が、嵐のように編集室に流れ込んできた。

 農作物の作況表、未発表の企業決算、軍事衝突の勃発時刻まで——全てが一度に。

 データは画面から溢れ、床に波のように押し寄せる。


「やばい……時系列が混線してるわ!」ソフィアが叫ぶ。


「おかげで歴史が美しいカオスになりそうだ」御影は愉快そうに笑った。


 床の一部が光り、室内の一角が別の時代——昭和の銀座、戦国時代の城下町、未来の東京——に切り替わる。

 境界が揺らぎ、時間そのものが千切れそうだった。


同時刻:現実世界・国会本会議場

 野党議員が立ち上がる。


「総理! 本件に関して、いつまでに結論を出されるのですか!」

 

総理大臣・柊俊一郎は、夢世界と現実を行き来しながら、微笑して答える。


「——来年の9月2日、午後3時42分です」


「なぜそんな秒単位まで!?」「根拠は!?」

 

議場がざわつく。だが柊はすでに次の“答え”を知っている。

 未来のスクリーンには、その日、その時刻に法案が可決される映像が流れていた。


再び歴史の編集室

 御影がトリガーを押し下げる。

 柊も同時に押す——二つの意思がせめぎ合い、歴史の流れが二分化する。

 画面には「歴史崩壊まで、残り6時間」の警告が点滅した。


「おい御影、このままじゃ未来も過去も吹き飛ぶ!」


「いいじゃないか、ゼロからやり直せば」


「——俺は、守りたい未来がある!」


 心電図ペンが最後の暗号を送り終えた瞬間、編集室全体が白い光に包まれた——。


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