夢の階乗14「Martiniと医療改革」
霞ヶ関の夜、冷たい霧雨が路面を銀色に染めていた。
柊俊一郎は、黒いコートの襟を立て、路地裏のBarへ。
店の奥のカウンター席には、ブロンドの髪を揺らす美女が座っている。
「You must be… Prime Minister Shunichiro Hiiiragi?」
「Name is Hiiraghi…Shunichirou Hiiraghi」
そう言って、わざと名前を強調しながら腰を下ろす。
彼女の名はソフィア・クレメンティ。
表向きはWHOの感染症アナリスト、裏の顔は国際諜報機関のエージェント。
バッグの中から、最新式の暗号解読デバイスを取り出した。
(連絡員なのか?)
外国人バーテンダーに酒を注文する
“Vodka Martini, Shaken, not stirred"
会話は続く
「これは、御影の次の“夢計画”の断片。
でも暗号化されてる。解けるのはあなただけ」
「なぜ俺が?」
「あなたは唯一、過去と未来の両方で現場を見ている総理だからよ」
その瞬間、窓の外で水たまりが弾けた。
影が動く——尾行だ。
柊はオリーブかじると、マティーニを一気にのどに流し込み、外に飛び出す。
先ほどよりかなり雨脚が強い。
雨にぬれながら(にやけつつ、つぶやく)
“Dry martini. As usual.”(……マティーニはドライのままだぜ!)
濡れたコートを翻し、またニヤリと笑う。完全に彼になりきっている自分に酔っている。
追跡は続く。
夜の高架下、救急車がサイレンを鳴らして通り過ぎる。
柊はソフィアの手を取り、狭いビルの間に身を隠した。
彼女の髪から、かすかにシトラスの香り。
「あなた、本当にあの医療改革の総理なの?」
「いや、医療改革はカモフラージュだ。
本業は命の保険外交……副業が世界史の修正だ」
尾行を撒き、二人はホテルの一室へ。
机の上には盗聴発見器、レーザーマイク、パスポートの束、そしてなぜか血圧計。
柊は暗号文を解析しながら呟く。
”A medium dry martini, lemon peel, shaken not stirred, Sophy”
(ソフィー。ミディアム・ドライのマティーニ。レモン・ピールひと切れシェイクでたのむ)
「御影の目的は…人口削減と選択的医療資源配分……
これは“夢”じゃなく現実に移行しつつあるな」
「次の夢で、止められる?」
「止めるさ」
マティーニのグラスを掲げて笑う。
「
なにしろ俺は——俊一郎、柊俊一郎だからな」




