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夢の階乗13「干渉者の影」
夜。
久々にCPAPを外し、夢の海へ潜った柊俊一郎は、違和感に気づいた。
——景色が、誰かに「先回り」されている。
着いたのは昭和39年、東京五輪開幕直前の代々木競技場。
だがそこには、自分が植え付けようとしていた医療投資計画が、すでに別の者によって実行されていた。
役人たちは「あの方から聞いてます」と言い、柊の言葉を遮る。
次に未来へ跳ぶ。
2057年、首都圏の海面上昇対策会議。
出席者の間で議論されていたのは、「柊案」ではなく、聞き慣れぬ名の提案だった。
議事録の末尾には小さく——
《干渉許可コード:OMEGA》の文字。
さらに深く潜った夢の5乗目。
霧のような空間に、一人の人物が立っていた。
長身で、黒いマスクをつけ、声は加工されている。
「ようやく気づいたか、柊俊一郎。
お前だけが夢を操れると思ったか?」
「お前は……誰だ」
「未来を“救う”者だ。だが、お前の救いは時に破壊になる」
柊は息を呑む。
相手の声には、かすかに聞き覚えがあった。
——現実で何度も会った、あの厚労官僚の声に。
「次に潜るとき、お前は選ばねばならない」
黒い影は、そう言い残し、霧に溶けた。
目を覚ますと、官邸の机の上に一枚のメモが置かれていた。
そこにはたった一行——
『次はお前の番だ』




