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日常すれすれ  作者: しゅんたろう
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夢の階乗11「未来と過去の天秤」

CPAPは主治医の処方通り正しく使用しましょう。これはフィクションです。SASを放置しても、CPAPの設定をいじってもタイムトラブルはできません。

でも、正しく使用し良い睡眠が出来れば、ひょっとしたら夢の中でタイムトラベルができるかもしれません。


 

総理執務室の机の引き出しには、誰にも見せない小さなUSBメモリが隠してある。

 中身は、未来で見てきた株価や為替、商品市況の詳細データ。

 官邸から徒歩5分の“匿名口座”を経由し、既に数百億円の利益が積み上がっていた。


 ──夜、柊俊一郎はもう「コツ」を掴んでいた。

 

 夢の中で眠ると、さらに先の未来。

 浅く眠れば近未来、深く眠れば遠未来。

 逆に、意識をほんの少し手前で切ると、過去の誰かに入れる。


 その晩、ふと過去を試したくなった。

 目を閉じ、意識を“引き戻す”感覚で沈んでいく。


 ──次の瞬間、少年時代の自分の体に入っていた。

 そこは、医師になると決めた高校2年の夏。

 目の前には、早逝した母の笑顔。

 「俊一郎、立派なお医者さんになってね」

 その言葉が胸に刺さる。


 だが同時に、今の自分──総理として未来を操り、巨額の利益を得ている姿が頭をよぎる。

 母の瞳は、誇りと期待に満ちていたが、その奥に「欲に溺れるな」という光があった。


 夢から醒めると、USBメモリを握りしめていた。

 机の引き出しを開け、迷った末に金庫に封印する。


「……少し控えよう。俺は金のために、この力を手に入れたわけじゃない」


 その日の国会答弁で、野党議員が皮肉を言った。

「総理、最近は“予言”をしませんね」

「未来ばかり見ていると、足元をすくわれると学びましたので」


 議場に笑いが広がる。

 だが俊一郎の胸には、あの夏の母の微笑みが、まだ鮮やかに残っていた。

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