『パブロフとシュレディンガー』 Schrödinger's cat Part3
ある秘密研究所で、2匹の動物が同じ部屋に入れられた。
ひとつは犬。
もうひとつは猫。
ただの動物ではない。
犬は、条件反射によってベルの音でヨダレを垂らす「パブロフの犬」。
猫は、観測されるまで生きているか死んでいるかわからない「シュレディンガーの猫」。
研究テーマはこうだ。
「観測できる反射行動(犬)と、観測できない生死(猫)を同時に存在させることは可能か?」
さっそく実験が始まった。
まずはベルを鳴らす。
「チーン!」
犬はヨダレを垂らす。お決まりの反応だ。
だが――猫は反応しない。
「……観測してないからな」
研究者は猫の箱を開けないまま、次の実験に進んだ。
今度は、猫の生死が“死”だった場合にだけ、毒ガスが出て、ベルが鳴るように設定した。
「もしベルが鳴ったら、猫は死んでいる。
すると、犬はヨダレを垂らす……」
つまり、犬のヨダレで、猫の死が観測できる!
天才的発想だと思った。
いざ実験!
部屋は沈黙。
……チーン。
犬がヨダレを垂らした。
「猫は死んだ!」
「いや、観測したのは犬の涎だけだ。人間はまだ見ていない」
「だが、ヨダレが出たということでベルが鳴った!ベルが鳴ったということは……!」
「待て、人間が犬のヨダレを見る前に、それも“未観測”じゃないか?」
「つまり我々が見るまで、犬も猫も、そしてベルも“可能性の重ね合わせ”状態にある……」
「じゃあ、今この瞬間、我々も生きてるか死んでるかわからないのでは?」
沈黙。
重く、長い沈黙。
そのとき――
猫が箱から出てきて、こう言った。
「うるせえな。腹減ったんだよ、はよ観測しろ ヽ(`Д´)ノプンプン」
犬はヨダレを垂らした。
のちにこの実験は、“観測前に腹が減る量子生命体の存在証明”として論文掲載された。
だがその論文、誰も読んでいないため、その存在が確定していない。




