表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常すれすれ  作者: しゅんたろう
11/77

『シュレディンガーの三毛猫』 Schrödinger's cat Part2



大学物理学科・量子力学ゼミ。

今日の発表担当は、留年を3回繰り返した伝説の問題児・佐久間だった。


「それでは発表します。タイトルは――


“シュレディンガーの猫が三毛猫だった場合の波動関数の崩壊について”」


教室がざわつく。


「先生、猫の生死とかより性別の話になってませんか?」


「黙れ、そこが核心だ」


佐久間はホワイトボードに猫のイラストを描いた。明らかに()()()。しかも()()っぽい顔つき。


「さて、三毛猫のオスの発生率はご存知のとおり、およそ3万匹に1匹。XXY型、つまりクラインフェルター型の突然変異です」


「それが……?」


「この箱の中にいる三毛猫が、オスかメスかわからない。つまり、“性別が重ね合わせ状態”にある」


「……え?」


「つまり、箱を開けるまでは、生きてる・死んでるだけでなく、オス・メスも未確定なんです!」


佐久間の声が熱を帯びる。


「ここで問題です!」


「箱の中に入っている猫が、

① 三毛猫であり

② 生死不明であり

③ 性別も未確定である場合――

どの瞬間に、波動関数は崩壊するのか?」


「そもそも性別って量子ビットで定義できるんですか?」と誰かが小声で突っ込んだ。


佐久間はボタンを押した。スクリーンに映ったのは……


「メスだったら生きている」

「オスだったら死んでいる」


という狂気の真理表。


「えっ、死因は!?」


「社会的抹殺です。三毛のオスは希少すぎてネットで炎上するんです。たぶん」


「それ、量子関係ないですよね!?」


「いや、これは“観測されること”そのものの恐ろしさを表現しているんだ!」


「観測社会だ!」


「それっぽいけど違う!」


教授がそっと口を挟んだ。


「……ちなみに、君の論文の査読結果なんだが」


「はい?」


教授は言った。


「“猫の性別を観測によって決定するのは、生物倫理的に不適切”とのご意見だった」


「倫理かよ!! 量子より先に道徳が波動崩壊してるじゃねーか!」


佐久間は崩れ落ちた。



その後、佐久間は哲学科に転籍し、卒論のテーマはこうなった。


『性とは観測か、本質か――三毛猫における自己認識と他者の目』


教授は、そっと推薦状を書いた。


「この学生、生きてるのか死んでるのかわかりませんが、とてもユニークです。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ