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……再会

 美しい龍人と目が合い。一気になんとも言えない緊張感がピリリと体中を駆け巡る。

 なんか言わなきゃ……私!


「あっ……えと、どうもです」

「くくく……なんだ? その変な話し方は?」


 月夜に照らされ美しく輝く漆黒の髪をなびかせ、私を見て笑う。

 笑われているのに、つい見惚れてしまい言葉を失う。


「ん?」


 そんな私の姿を不思議そうに見ながら、妖艶に首を傾げる名もしらない龍人。

 あなたの姿が美しすぎて固まっているんです。

 固まって何も話せずにいた私を見ながら、龍人が先に口を開く。


「今ちょうど、樹と其方の話をしていたところなんだよ」

「え……私の?」

「そうだ。樹がの? 最近其方の姿が見えんで寂しかったみたいじゃぞ。樹によほど気に入られてれておるな」

「……気に入られて?」

「うむ。樹がこんな事を言うのは珍しい」

「あっ……ありがとうございます」

「はははっ、なんの礼ぞ」


 嬉しくて思わず樹の木に頭を下げた私を見て、高らかに笑う龍人。

 私は言われた事が嬉しくって、勢いよく樹の木に抱きついた。


「私も会いたかったです。今日もここにある薬草をお裾分けしてくださいね」


 ギュッと抱きしめながら私がそう言うと、大きな樹の葉っぱが激しく揺れる。


「くくく。樹が喜んでおる。我が来てもそこまで喜ばんのにの、ちとヤキモチを焼いてしまうのう」

「ふぇぇ?」


 クスリと笑いながら私を見つめる美しい龍人……もうなんだかこの空気に耐えられない。


「うう……あっそうだ。薬草、薬草」


 もうどうして良いかわからず、おもむろに近くにあった薬草を摘み出す。

 だって変に緊張しちゃうから。目に前にいる龍人は村にいた男の人と余りにも違いすぎて、緊張しちゃう。


 緊張を和らげるため、必死で薬草を摘んでいたら。大好きな薬草の匂いに癒され何だか心が落ち着いてきた。

 さすが薬草様。今日も素敵な癒しをありがとう。


 夢中になり薬草を摘んでいたら、近くに美しい龍人がいる事も気にならなくなり、私は嬉々と薬草摘みを楽しんでいた。

 そんな私の姿を龍人は何も言わず、ただ優しく見守っていてくれたように感じた。

 そんな心地よい時間がすぎていく。


「よし! いっぱい薬草を採れた」


 籠いっぱいに集めた薬草を見て、私は再び樹の木を抱きしめお礼を言った。


「素晴らしい薬草をお裾分けして頂きありがとうございます」


 すると再び大きく樹の葉が揺れた。


「欲しい薬草は集まったようじゃの? 良かったの」

「はい! 今日は怪我を治す薬草が欲しかったので、素晴らしい薬草のお裾分けをして頂き大満足です」


 薬草の話になりつい早口で捲し立てるように話してしまった。


「くくく。それは良かったの」


 そう言って、優しく私に向かって笑いかける龍人。


「あっあう……そそっそれじゃ! 失礼します」


 何だかこの前よりも緊張してしまい。

 深々とお辞儀をした後、逃げるようにその場を去ってしまった。


「え……!?」


 そんな私の姿を、驚き見ていたように思ったけれど、それに気遣う余裕なんてあるわけがなかった。


 その時。


 私の服に付着していた、赤茶色に染める前の真っ赤な髪の毛が、フワリと龍人の頬にふれ、それを龍人が手に取り不思議そうにジッと見ていたなんて、知るよしも無かった。


「ほう……なんと美しい……真紅色の髪の毛。初めて見たのう……これはどこから飛んで来たのかの? 樹は分かるか?」


 龍人がそう言うと、樹の葉が激しく揺れた。


「ははは。そうか、面白いのう」

 

 美しい龍人はニヤリと笑うと、漆黒の龍の姿となり空へと飛んでいった。


 


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