運命の番
「眩しっ……」
目を細めてどうにか見ると、真っ赤な龍心の光が私の体を包むように照らしている。
「これは……!?」
時間が経つと私を包んでいた真紅の光が、一筋の光の柱となり私の胸の上あたりを指している。光の柱は、そのまま私の胸に吸収されるように消え去った。
「え? え? え?」
何が起こったのか理解できず、少しパニックになっていると。
「これで我と翠蘭は真の番となった。自分の胸をちゃんと見てみよ」
人の姿に戻った飛龍様が私の胸を指さす。
「……胸?」
見てみると、胸の上あたりに真紅色に輝く宝石が輝いている。
なんで私に飛龍様の龍心が!?
「これは……!?」
「番はのう? 魂の伴侶じゃから、翠蘭は我と同等の力を得たのだよ。胸の上で輝く龍心はその証拠」
「飛龍様と同等……それってもしかして寿命も?」
「そうじゃ。番は魂の伴侶だから、魂年齢も同じになったからのう。どちらかが先に死ねば、番も後を追うように亡くなる。我らは運命を共にしておるのだよ」
「じゃあ……じゃあ私が飛龍様を置いて先に死ぬことはないのですね」
「うむ」
飛龍様は頷くと、蕩けるような顔で微笑み私を抱きしめた。
番は魂の伴侶……良かった。
先に死ぬ事……それが一番怖かった。子供が出来ても飛龍様と子供を残し先に死ぬなんて耐えられない。
本当に良かった。
「翠蘭を我の番だと発表しなくてはのう……」
「発表?」
「うむ。皆を龍宮殿に呼び盛大な宴をしようではないか。心待ちにしておるはずじゃからのう」
盛大な宴で発表!? なんだか緊張するし、恥ずかしい。
宴は楽しそうだけど……。
そうなると、番候補だった明々達はどうなるんだろう?
「それじゃあ、あのメイメッ……番候補だった人たちはどうなるんですか?」
「んん? もちろん宴に参加してもらうつもりだ。その後、箱庭は解散し好きに生きて良い。この龍人国で生活してもええしのう。他の国に行っても良い。我には翠蘭さえおればそれで良いのだから」
そう言いながら私の頭を優しく撫でる飛龍様
翠蘭さえいればいい……。
はうっ……そんな事を言われたら、飛龍様の事が見れなくなって俯いてしまう。
「なんで下を向くのだ? 可愛い顔を我に見せてくれぬか?」
「ふえぇ……!?」
飛龍様が両手で優しく私の頬を挟み、上に向かせる。
美しい飛龍様の顔が近付き「今度はちゃんと息をしてくれよのう?」そう言って私の口を塞いだ。
「……んっ」
また身体中が痺れるような感覚に、力が入らなくなる。
甘くて……蕩けそう。
「ふふっ、今はこのくらいにしとこうかのう。時間はたっぷりあるからのう」
飛龍様は唇をぺろりと舐め悪戯に笑った。
「あっ……あっ……」
これ以上とか、もう無理なんですが。
この後、番の発表の盛大な宴が催された。
色んな人にお祝いしてもらって、すごく嬉しかった。
明々には「番だったのー!? まだ爆弾を隠してたなんて! 詳しく教えなさいよ」っと色々と詳しく聞かれた。
宴の後。
番候補の人たちは、それぞれいろんな道に進んだ。
嬉しかったのは、明々が龍宮殿の女官として残り、私の近くにいてくれる事。
なんだか龍王国に来て、信じられない事ばかりが起こったけれど、いまだに夢じゃないのかなと思うくらいに私は幸せ。
そんな私に、新たなる問題が発生するんだけれど、それはまたのお話で。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
これにて、このお話の一章は終わりです。
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希望があれば二章も書きたいと思ってます。
二章は翠蘭の化粧が龍王国でブームとなったり、腐死病の原因となる大元を発見したり、明々にも運命の番が現れたりします。そんなお話になる予定です。