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私が番


 樹の木の場所から無我夢中で部屋に戻って来た。もうどんなふうに帰って来たのかさえも思い出せない程に、動揺していた。


「はっ……はぁ……はぁっ」


 部屋に入るなり勢いよくベットにダイブすると、気持ちを落ち着かせるために大きく深呼吸し、息を整える。

 だけど……何度深呼吸しても、心臓の鼓動は激しくなるばかり。


 落ち着け私。気のせいだよ!

 たまたま赤く光って見えただけかも知れないんだから。

 そんな簡単に番とか見つかるわけないもの。

 だってほとんどの人が番に出会えないって言ってたもん!


 あれはきっと……何かが反射して、飛様が赤く輝いたように見えただけだよ。


「うん! そうだ、それに違いない」


 今度、龍の姿を見せてもらったら、きっと誤解だってわかる。


 だから……落ち着け私の心臓。


 なのに、もしかしたらって気持ちがあるからか、顔の火照りも心臓の激しい鼓動もおさまらない。


 ……こんな時は、リラックス効果のある茶葉でお茶を作ってのもう。

 乾燥しておいた茶葉を茶器にいれお湯を入れる。

 するとふわ~っと心地よい香りが広がる。この香りを嗅ぐだけでも心が落ち着いていくのが分かる。


 茶葉が茶器の中で花が咲いたように広がると、飲み頃。

 それを口にごくりと流し込む。


「ふぅ~……やっと落ち着いた」


 動揺しすぎだよ。私。


「ふふっ」


 さっきの自分の姿を思い出して何だか可笑しくて笑ってしまう。


「あふ……」


 落ち着いたら今度は急に眠くなってきた。

 ふと籠を見ると中にはさっき採ってきた沢山の薬草がいっぱい。

 

「……むにゃ」


 目を開けようと抗うも、瞼が勝手に閉じようとする。

 仕分けしたいけれど……明日の朝にしよう。

 



 ★★★



「……んん~?」


 よく眠れた。リラックスできるお茶を飲んで寝たからかな?

 両手を上にあげ思いっきり伸びをすると。


「おはよう翠蘭!」

「えっ?」


 声の方を見ると。

 机の上には豪華な朝食が並べられ、椅子に明々が座り私を見てニカっと笑う。


「新しい部屋が広くて落ち着かないのよね」


 明々が困ったように言いながら、ふぅーっと大きなため息を吐く。


「ふふふ。確かにね」

「まぁでもさ? 朝食を中央塔までとりに行かなくても、この棟の食堂に運んで来てくれるのは楽になったけどね。翠蘭、ぼーっとしてないで顔洗ってきて一緒に朝ごはん食べよ」

「そうだね。分かった」


 私はベットから降りると、部屋の奥にある洗面所にて顔を洗う。この新しい部屋にはお風呂に洗面所、更には水洗の厠まであるのだ。

 本当に至れり尽くせりとはこの事。こんな生活をしていたら、怠慢な人間になりそう。


「朝食持って来てくれてありがとう」


 明々にお礼を言って、向かい合って椅子に座る。


「どういたしまして、だって広い部屋で一人で食べても何も美味しくないもんね」

「確かにね。明々と食べる方が何倍も美味しいね」

「ふふふっ、翠蘭大好き」


 たわいも無い会話をしながら食事を口に運ぶ。朝からそんな時間がとれるなんて幸せ。


「んん~! 美味し」


 それにしてもここでの食事は、本当に美味しい。

 全てのお野菜が新鮮で、それに調理方法も完璧。

 毎回違った料理が出てくるから飽きない。


「ねぇ、ところで翠蘭? 龍王様からご褒美何かもらった?」

「え? ご褒美? 何も貰ってないよ」


 なんのご褒美なのか……。私はまだ龍王様にもあった事ないって言うのに。


「あれぇ? おかしいなぁ。この前の謁見の時に、翠蘭の事を龍王様に聞かれてね? 褒美をって……言ってたんだけどなぁ」

「ごふっ、はええええ? 龍王様が私の事を聞いたの?」


 急に辺な事を言うから、食べたものが喉に詰まるところだった。


「うん。あの時いなかったのは翠蘭だけだったし……いない理由を聞かれて。私を助けてくれたから、謁見の場にいなかったって説明して……ええと、それで名前聞かれて……褒美をって言ってたんだけどなぁ?」


 そう言いながら明々が首をコテンっと傾げる。

 嘘でしょ……そんな事になっていたなんて。私はてっきり……あの時私を運んでくれた龍人が私の事を明々に聞いて、近くにいた飛様も偶然名前を聞き、私の名前を知ったと思っていた。

 まさか……龍王様が私の事を質問していたなんて……。


 まぁでも、褒美なんてねぇ。忘れてるでしょ。


 そんな風に考えていたのだけれど、事態は私の想像を超え。

 三週間後、龍王様から直接褒美を頂く事になり、私はパニックになるのだった。


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