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5.無知蒙昧のプランニング

結界魔法。それは魔王・エンデヴが発明した魔法革命とも呼ばれるものだった。

高度で複雑な術式と多大な魔力を要するこの魔法は魔法を用いた戦争の歴史を大きく変えた。軍事的重要施設にはほとんど結界が張られ、それにより要塞攻略の難易度は格段に上がった。


そもそも結界とは、ほどんどの魔力攻撃と物理攻撃を遮断する防御魔法の一つである。ほとんど、というのはその結界の種類や術式によって少々差が出る為完璧に全てを遮断できるわけではない、ということだ。しかし魔法を遮断し、兵士の侵入を拒絶する、この魔法は軍事的防御戦略において、大きな役割を果たしていることは確かだった

結界を破る方法はいくつかあるが最も使用される戦術は手数による破壊、である。これは魔法兵達が一斉にある一点を攻撃魔法を撃ち続け結界を破り、そこに兵が投げれ込み制圧する、というもので、そしてこれが最もセオリーな攻略戦術だった。

しかし、この弱点をも克服した結界が、レナース要塞には張られていた。

レナース要塞に張られていた結界は内側からの魔術は一切の障害なく通り抜けられたのだ。これにより外からの砲撃を結界が守り、内側から安全に迎撃することが可能になったのだった。

その結界の恩恵により、レナース要塞は難攻不落の要塞という名に恥じない鉄壁の要塞だったのだ。


ただ、軍事力が著しく低下している帝国軍に対しこのセオリーな攻略戦略は十分現実性があるものだといえた。例え迎撃されても圧倒的な数により、強行突破。

そしてこの作戦においての特殊0部隊の立ち位置はただの一般兵だった。少しでも多くの数を要するこの作戦に彼らは一般兵として、元よりある軍階級に従って本来の仕事をする。

リッター軍は結界撃破に向け、兵を三等分し三方向から結界を攻撃させる。そうすることで敵の砲撃の攻撃力を分散させる。


これがグレイブスに聞かされた作戦だった。


例えばロイエンなら3000程の兵を率いた団長だった。彼にとってこの仕事は、多くの兵を率いて迎撃魔法の的となって死ね、という命令をするけの事だった。


「隊長、気に食わない様子ですね。」

ベシュテモンがそういった。

「あぁ、実に気に入らない。彼らは歴史の過ちを知らないのか。戦争という愚かな行為を人はいつになったらやめるんだ。」

ベシュテモンは椅子から立ち上がり、少し笑って言った。

「ならなぜあなたは軍に入ったんです。まさか、軍がタバコを作る工場だと思っていたんですか。」

ロイエンは即答した。

「仕方なかった、ってやつだ。入隊以外の選択肢なんてなかった。」

そういうと彼はベシュテモンに背を向け軍事作戦会議室を後にした。


レナース要塞攻略作戦。

この情報を一握りの貴族は耳にした。そしてその一握りにシューベルト家は含まれていた。この情報を知った貴族達はようやくか、とそう思わずにはいられなかった。戦場に足を踏み入れた事の無い彼等はレナース要塞のその鉄壁さなど知る由もなかった。


ロイエンは久しく自宅に帰った。そこは到底、貴族とは思えない家だったが、一人暮らしの軍人の家に大きな庭と執事なんて不要だった。

翌日からレナース要塞への出征が始まる。作戦はグレイブス元帥に聞かされた作戦だった。あれは兵士が死ぬことを何とも思っていない作戦だ、と彼は思う。思考を放棄した、命を尊重しない愚かな作戦であることはことは明確だった。

確かに、あのレナース要塞を血を一滴も流さずに攻略するのは不可能に等しい。ただ、もう少しやりようがあるだろうが。


「まぁ、そういうものなのか、人は。」

彼はそう呟きながらベッドに寝転んだ。右手にタバコを摘んで。

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