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一章  ~こんな俺なんて異世界でも死んじゃいますよね……~


 重い瞼を開くと最初に眩い光が目に入ってきた。周りに陽キャや不良はいなかった。




 「ここは一体……?」




 周囲は木に囲まれ、近くには川が流れている。森の中だろうか。




 焚火の跡があり、仄かに暖かい。気を失った俺を誰かが介抱してくれていたのだろうか。


 


 ここで突如、脳にある言葉が浮かび上がる。




 「ステータス・オープン」




 浮かび上がってきた単語を呟くと、俺の目の前にRPGで見るようなステータス画面が現れた。




 「こ……これは俺のステータスなのか……!?」




 レベルは5、体力も力もほとんど無いに等しい。魔力は全くなく、魔法は当然使えない。防御や素早さ、運や魅力といったステータスも低く、お世辞にも恵まれたステータスとは言えない。




 スキルを見ると、絶対反射という聞いたことのないスキルがあった。しかしそれ以外にスキルはなかった。




 (底辺でしかも陰キャな俺にはお似合いなステータスだな……)




 そう思いながらステータスを閉じた。どこまでも広がる青い空と緑の木々、俺の服や持ち物は特に変わりなかったが、スマホは事故の衝撃だろうか画面は粉々に割れて使えなくなっていた。




 「これってもしかして『異世界いせかい』ってやつなのかな……」




 俺が呟くと同時に正面の草むらが騒めき、オオカミの群れが現れた。




 そしてオオカミに周囲を囲まれ逃げ出すこともできなくなった。武器やアイテムを持っていないので襲い掛かられたら抵抗することもできない。




 俺は近くにあった木の棒を振り回すが、逃げだす気配もない。




 一瞬、風が止んだ。騒めく木々の音が一層大きく聞こえ、何か巨大な怪物の唸り声のように聞こえる。




 一瞬、影が消えた。俺を囲んでいたオオカミは、目に見えぬ怪物から逃げるように一斉に襲い掛かってきた。




 「絶対反射!絶対反射!絶対反射!」




 オオカミは素早く、避けることができない。腕や足に噛み付かれ、その眼にはそのまま引き千切ろうかという思惑があることが人間である俺にも伝わる。




 「絶対反射!絶対反射!絶対反射!」




 俺が唯一持っている『絶対反射』のスキル名を叫び続けるが、何も起きない。




 全身から血が噴き出し、痛みが全身を何度も駆け巡る。肉は裂け、呼吸が乱れ、全身がただ震えるのみであった。




 「なんでスキル発動しないんだよ!!さっさとどうにかなれよ!!異世界に行ってもゴミ屑だって言いたいのかよ!!もうやめてくれよ――!!」




 その時、身体から痛みが消えた。全身の傷口から血液ではない何か赤いものが俺の胸のあたりに集まる。




 刹那、オオカミの群れは何かを察し俺から離れようとした。しかし、俺の胸に集まる赤いものは急激に膨張をはじめ、逃げ出すオオカミの群れを木々ごとあっという間に飲み込んでしまった。




 ――爆発。轟音が鳴り響き、爆風が周辺の木々を吹き飛ばし、地を抉り、辺り一帯はビリビリと振動していた。




 それと同時に俺の身体の傷が消えていった。爆心地にいた俺は無傷であったが、俺を襲い、逃げ出していたオオカミは全て死んでいた。


 


 「もしかして受けた攻撃をすべて無効化して相手に返すっていうスキルが『絶対反射』なのか?」




 ステータスには恵まれなかったが、発動さえすればどんなに強力な攻撃を受けたとしても無効化でき、どんな敵でも倒すことができるスキルを手に入れた。




 「これを使えば今まで俺を苦しめた奴らに復讐できる……!」




 俺は復讐の炎を心に燃やし、その場を後にする。森は広いが歩き続けていればいずれ町にたどり着けるだろう。



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