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その魔法少女は物理系  作者: 須美音
第一部
8/50

08

ツバキはミリアの姉であるトウコと戦う気満々である。


(何で魔法少女って、こうも好戦的なんだ!)


「いや、俺は全く戦う気は無いし、もう帰るし」


「これはミリアの姉とは思えない発言ですね。ミリアの前で私に負けるのを恐れているのですか?」


ツバキは必要にトウコを挑発している。


「いや、もう女の子とは戦いたくないんだよ。それじゃ」


トウコがその場を立ち去ろうとしたらツバキが変な事を言い出した。


「何をたわけた事を…殺らねば殺られる、それがこの世界の理(ことわり)なのは魔法少女なら誰でも知っている事」


(それってポン太が以前言ってたけど冗談じゃなかったのかよっ! どんだけ混沌とした世界なんだよっ!)


「お姉様! やはり私が!」


ミリアは勝負がつかないのにまだ戦おうとしている。


「いやいや、勝負つかんだろ…ハァ…気は乗らんが相手もやる気満々みたいだし、しゃーなしか。おい、ツバキ。相手になってやるからかかって来い」


トウコは仕方なくツバキと戦う事にした。


「その気になってくれて何よりです。では参ります」


(残念ですが私には勝てません。私には相手が使える魔法と得意とする魔法が分かるので対処が出来るのです)


ツバキが得意とするのは雷での攻撃魔法だが、それ以外にも様々な魔法が使える。

その中には相手の使用できる魔法を知る事が出来る魔法もある。


(反射魔法を持っていると厄介なので、攻撃する前にまずはミリア姉の所持魔法を…)


ツバキは足を止め、トウコが使用できる魔法を調べる探知魔法を使った。


(えっ…そんな馬鹿な事が…無い? 使える魔法が無い…ミリア姉は確かに魔法少女…

はっ! 探知魔法がガードされている…私が探知魔法を使う事を見通して、先にガードを…先手を打たれていたとは…)


トウコは魔法が使えない。故に探知魔法は正常に作動していてガードされてはいない。


(しかし、探知魔法をガード出来る魔法は上位の魔法…やはりミリアの姉を名乗るだけはある、上位の魔法もたやすく使えるって事ですか…出来る…

しかも魔法だけじゃなく戦略にも長けている…私の得意とする雷魔法も対策されているはず、ならば…)


重ねて言うがトウコは魔法が使えない。

トウコが魔法少女と思われている事とミリアの姉と言う事でトウコは上位魔法も容易く使える魔法少女と思われていた。

ツバキが長々と戦闘分析に没頭していると、いつのまにかツバキの目の前にトウコが居た。


「おーい。フリーズしているが、かかってこんのかー?」


トウコはツバキが動かないので覗き込むように声をかけてみた。


「フリーズ…えっ!? キャアアアアアア!!!」


ツバキは目の前に居るトウコに驚き悲鳴を上げてしまった。

我に返ったツバキはトウコと距離を取った。


(い、いつのまに! うぅ…こんな事で悲鳴を上げてしまうなんて…恥ずかしい…そ、そんな事より今フリーズと…

はっ! 凍結魔法…私を氷漬けにすると宣言したって事ですか! な、何故わざわざ宣言を…黙ってやればいいものを…

よ、余裕…敢えて使用する魔法を宣言し、格の違いを見せつける為…

くっ…流石ミリアを降しただけの事はある…強い…しかし、私もこのまま黙って負ける訳には…)


ツバキは最初の探知魔法が防がれたと思い込んでから焦って思考が混乱している。

今までは探知魔法で相手の使える魔法を知り有利に戦っていたからである。

そして、再びトウコは間合いを詰めツバキの目の前に現れた。


「おーい。やる気あんのかー?無いなら帰るぞー」


再度トウコはツバキを覗き込むように声をかけてみた。


「!!!」


ツバキはまたもやいきなり目の前に現れたトウコに驚いたが今度は悲鳴をこらえる事が出来た。

が、しかし、トウコはツバキの手首を掴み離れられない状況にしたのだった。


(さっきから簡単に間合いに入れるなあ…魔法を使う様子も無いし、キョドってるようにも見えるし…)


トウコはツバキの様子の変化に気づき観察していた。


(なっ! つ、掴まれた! こ、この状況で使える魔法は…だ、ダメだ…その前に姉の魔法が来る…)


今の冷静さを欠いたツバキにはこの状況で反撃出来る魔法を考える事は出来なかった。


(やはりな。視線が定まってないし脈も高い。何故か分からんが相当動揺してる。このまま帰っても問題ないな)


トウコは先ほどからのツバキの不自然な動きに疑問を抱きツバキの精神状態を確認したのだった。


「サラバだ!」


トウコはそう言って手を放した。


(終わった…こんな桁違いに強い魔法少女が居ただなんて…)


ツバキは死を覚悟した。


しかし、トウコはこの場から離れミリアと共に去っていってしまった。


「な、何故…」


ツバキはその場に座り込んだ。

そして、暫く考えてから、ツバキはある決心をした。


トウコとミリアは街の宿屋で一泊し明日帰る事にした。


次の日。


「さて、今日はまず、食料を買い込んでトネシンに移動するか」


「はい。お姉様!」


ミリアは元気に返事をした。


「手遅れじゃ」


ポン太が以前に言ったようなセリフを言った。


「いや、何がだよ…って…まさか…」


いきなり部屋のドアが豪快に破壊された。


「やっと見つけました!」


ツバキが現れた。


「余裕で想像付いたわ。後、ツバキお前、ドアとか弁償しとけな」


「承知しました。姉上様」


ツバキは既にトウコを姉と呼んでいる。


「あ、姉っ!?」


トウコはツバキの登場には想像出来たが、姉になるとは予想していなかった。


「こ、これはツバキさん。朝から宿屋のドアを破壊し、あろう事か私のお姉様を姉と呼ぶなど無礼が過ぎるのではありませんか?」


ミリアはツバキがトウコの事を勝手に姉と呼んでいる事に怒りを隠せない様子。


(いや、お前も朝っぱらから宿屋のドアを破壊してただろって盛大に突っ込みを入れたい所ではあるが…ミリアと同じパターンだとすると、ツバキの要件は…)


トウコはミリアにツッコミを入れたい気持ちを堪えつつツバキが何をしに来たのか見当がついていた。


「これはミリア殿、異な事を…姉上様に完敗した以上、妹になる事は魔法少女として当然の事と思いますが?」


ツバキはミリアと全く同じ理由で妹になると言い出した。


(やっぱりかっ! この世界の魔法少女って戦って負けると相手の妹になる生き物なのかよっ!)


「そ、それは…」


ミリアは返答に困っている。


「おい、この世界の魔法少女って負けた相手の妹になるものなのか?この2人が特別とかじゃなくて?」


トウコは一応ポン太に確認してみた。


「自分より強い相手の妹になる…それが魔法少女の理(ことわり)じゃ」


またポン太は変な事を言い出した。


「んな訳あるかっ! アホかっ!」


「自分より強い相手の妹になりたいと思うのは魔法少女の理。ミリア殿も分かっているはず」


ツバキもポン太と同様に変な事を言い出した。


(そうなのっ!? まあ、ポン太が言うより魔法少女本人が言うなら説得力があるっていうか…いや、この2人が特別な気も…)


「お姉様はこの様な非常識な者が妹になるのは反対でございますよね?」


ミリアはツバキが妹になるのは反対している。


(いや、非常識って点ではお前達2人共同じステージに立ってるけどな!)


しかしトウコは悩んでいた。

それは…

片や洋風金髪美少女、片や和風黒髪美女。

この2人を左右に侍(はべ)らしたいと思ってしまったからだ。


「え、えーっと…」


トウコは返答に悩んでいた。


「姉上様! どうか私を妹の末席に加えて下さい。何卒…」


トウコにはツバキを受け入れたいと言う気持ちはあった。

しかしミリアが反対している以上受け入れる事は出来ない。

仕方ないので例によってポン太に相談をしてみた。

すると、ポン太からとんでもない提案をされた。


「えっ…マジでそれ言うの?2人共引かない?ほんと大丈夫なんだろうな?」


「大丈夫じゃ」


ポン太は自信満々に答えた。


(仕方ない…他に策も無いし、ここはポン太の言う通りに言ってみるか…)


「よし! ツバキを妹にする!」


トウコは妹にすると宣言した。


「姉上様、有り難う御座います! 今後は姉上様のお役に立てる様に精進致します!」


「お姉様っ!」


当然ミリアはそれに対して納得がいかない様子だ。


「ただし! ミリアを第1メス豚とし、ツバキを第2メス豚とする!」


ミリアは第1メス豚と聞き非常に喜んでいる。

これでツバキを妹として受け入れる事ができたのだった。


(いや、ほんとにそれでいいのかよ…まっ、いいか…)


「あー、そうそうツバキよ。お前は常に俺を魔法からガードしろ。出来るな?」


「御意で御座います。姉上様」


(私如きに活躍の場を与えて下さるとは、流石姉上様)


ツバキは良い感じに捉えているが、トウコは魔法耐性が無いので不意の魔法攻撃に備える為だった。


「お姉様っ! どうか私にもご命令下さい!」


(ドエムかっ! いちいち張り合わんでも…しかし、ミリアに頼む事か…)


「え、えーっと…じゃ、じゃあ、うーむ…お、俺の許可無く勝手に暴れないように!」


「かしこまりました。お姉様」


「じゃ、じゃあ、飯食ってトネシンの街に戻るとするか!」


宿屋近くの大衆的な食堂に到着。

席に着席し注文を終えると、何処からか声が聞こえてきた。


「これはこれは、スター様が3人も、こんな食堂に来るなんて珍しい事もあるもんだ」


ちょっとガラの悪そうな女がトウコ達に近づいてきた。

それを見た店員がトウコに近づき耳元でささやいた。


「あの人達は、この街では有名な盗賊まがいのエリート集団です。どうかお逃げ下さい」


「なるほど。教えてくれて感謝する」


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