05
スターギルド(魔法少女ギルド)で登録を済ませたトウコ。
魔法少女ランク認定の為、魔力の測定を行う事となった。
しかし、トウコは魔法が使えない魔法少女である。
そんなトウコは今、魔力の計測をさせられようとしているのだった。
「なっ、なんだってーっ!」
(どっ、どどどどうしよう…流石に魔力が無い魔法少女とかって…)
「さあ、どうぞ。この水晶に手を当てて下さい」
トウコが戸惑っていたら受付嬢は再度、水晶に手を当てる事を要求してきた。
ここで時間稼ぎをしても仕方ないのでトウコは水晶に手を触れた。
「えっ…あ、あれ?ま、魔力が…ゼロ…なのですが…」
受付嬢はトウコの魔力が無い事に驚いている。
(やっぱりかーっ!)
「そんなはずはありませんわっ! 別の水晶で測り直しなさい!」
ミリアが激怒して再度測り直しを要求した。
受付嬢は別の水晶を持ってきて再度測り直したが結果は変わらず。
「お姉様。私に良い考えが御座います!」
どうやらミリアには良案があるみたいなので話を聞く事にした。
「この女を八つ裂きにして、スターギルド本部の連中も皆殺しにするのです!」
ミリアは拳を握り締め笑顔で言い放った。
(怖い怖い怖いっ! 発想がいちいち怖いっ! この娘、何言っちゃってるの?? 悪魔かっ! 全く良い考えじゃない上に受付のねーちゃんが腰抜かして滅茶苦茶怯えてるし)
「お、落ち着けミリアよ。発想が怖いし、皆殺しにしたらお金が貰えなくなってしまうだろ」
「なるほど! この女の首を本部に持って行って脅すと言う事ですね! 流石お姉様です!」
「流石じゃねーよっ! そんな事1mmも思ってねーわっ!」
「ならば、その女が死なない程度に拷問すると言う事じゃな?」
今度はポン太が口を挟んできた。
「お前はしゃべるなっ! そしてお前は殴る!」
トウコはこの2人(1人と1匹)が言っている事は半分くらい高度なボケだと思っていた。
しかし、2人(1人と1匹)は決してボケている訳では無く真面目に言っているのである。
トウコは仕方なく加護による弊害的な何かで水晶では魔力が計測出来ない状態になってるので受付嬢は悪くないとミリアに嘘の説明した。
例によって苦しい言い訳ではあるが加護と言う言葉を出しておけば一応は納得してくれるからだ。
だがしかし、魔力が測定出来ないので魔法少女ランクは保留となり毎月のお金の支給は無しとなった。
ギルドから出てトボトボと歩いているとミリアが今後の予定を聞いてきた。
「所でお姉様。今後はどの様な予定なのでしょうか?」
「んー…先ずは住む所の確保かな。流石にずっと宿屋って訳にもいかんしなあ」
するとミリアは自分の家で住まないかと提案してきた。
これはトウコにとって非常に有意義な提案だった。
ミリアはSクラスの魔法少女。毎月支給されるお金結構な額なので養ってもらえるとトウコは考えたからだ。
そんな訳でトウコは快諾したのだった。
ミリアが拠点としている街は、この街から馬車で数日の距離にあるトネシンと言う街。
他の街に移動する手段として定期的に運行している大型の馬車と多少値は張るが行き先を指定して乗せて貰う小型の馬車がある。
大型馬車には最低2人の魔法使いが乗っておりモンスターや盗賊等の対策がなされている。
小型馬車にはそれが無いがルートを選択する事が可能。
翌日。小型馬車でミリアが拠点としているトネシンと言う街に向けて出発した。
道中は良い機会だったのでミリアに魔法少女の生態について色々と聞く事が出来た。
その中で驚いたのが魔法少女の多さ。スターギルドに登録している人数だけで100人以上存在する。
野良を含めると何人いるか分からないとの事だった。
そして一番驚いたのがギルドに登録をしていない野良(又は、はぐれ)魔法少女の存在だった。
野良魔法少女の中には盗賊まがいの事をしている者も少なくないと言う。
そんな話をしながら数日早くトネシンに到着した。
定期的に運行している大型馬車は安全なルートを通るため時間がかかる。
それに対して小型のタクシー的な馬車はルート指定が可能な為、近道を走行したのである。
当然何度かモンスターに遭遇したがミリアとトウコなら全く問題は無かった。
ミリアの屋敷に到着。
「屋敷!? えっ、誰かと住んでるの?」
トウコは一軒家的な家を想像していたので驚いている。
「私とメイド5人だけで御座います。お姉様」
(ミリアって何者? Sクラスってこんな贅沢出来るアレなのか? まあ、根掘り葉掘り聞くのは…今は止めておくか)
トウコは部屋に案内されミリアと共に寛いだ。
次の日。
トウコは朝から生前の日課である鍛練を行っていた。
転生してからと言うものロクに鍛練が出来ずに落ち着かなかったのだ。
トウコとミリアは同じ部屋の同じベッドで寝ている。
それはミリアが熱望したからである。
トウコが鍛練をしている最中にミリアが目覚めた。
「お姉様、おはようございます」
「ああ、おはよう」
「お姉様は何をなさっているので御座いますか?」
「日課の鍛錬だ。山を出てから暫く怠っていたからな」
「鍛練…で御座いますか…?」
いまいちミリアはピンときていない様子。
トウコは鍛練と武術について軽くミリアに説明をした。
「なるほど…それで私の攻撃を不思議な動きで防いでおられたのですね…それは魔法なのでしょうか?」
「いや、これは魔法じゃ無い。努力次第で誰でも身に付ける事が出来るが、まあ、数年はかかるかな」
武術に興味を持ったミリアは目を輝かせながら色々とトウコに質問をした。
「そうだな。ミリアは動きに無駄があるから武術の基礎を学べば攻防も今よりスムーズに行えるだろう」
「動きに無駄…で御座いますか…」
いまいち納得していない様子のミリアに今から庭で軽く手合わせをする事にした。
「じゃあまず、本気で俺に打ち込んで来て」
「わかりました。では…」
ミリアは本気で打ち込む気満々で身体強化魔法を発動した。
「ちょっ! ストップ! ストーップ!!」
トウコはミリアが身体強化魔法を使ったのを知り慌てて止めた。
「どうかなさいましたか?」
「いやいや、殺す気かっ! 本気ってのは魔法を使わず現状での本気でって事だ! 怖いわっ」
「申し訳ありませんお姉様。では、改めて参ります」
ミリアは凄い速度で殴りかかってきた。
それをトウコは左手で拳を受け流しミリアの懐に入り右肘を腹部に寸止めし、流れる様に右拳を顔面に寸止めした。
「はい、ストップ! このまま動かないようにね」
トウコは現状の形を維持する様にミリアに動かぬように言った。
そしてミリアの攻撃のダメ出しとトウコは何を行ったのかと言う説明をした。
ミリアは武術の奥深さを知りトウコに教えを乞う事にしたのだった。
数か月後。
長続きはしないだろうと思っていたトウコの考えとは裏腹にミリアはずっと鍛練を続けている。
トウコは毎日、朝の鍛錬とミリアの稽古の合間にモンスター討伐を行いお金稼ぎをする生活をしていた。
毎日お世話になっているミリアにプレゼントをしようと思っていたのだ。
「ミリア、今日は街で昼食を食べてから買い物とかしてみないか?」
「喜んで! お姉様からデートに誘って下さるなんて嬉しいです!」
ミリアは相当喜んでいる。ここ数カ月は一緒に街へ出かけた事が無いからである。
「で、デート!?」
(ま、まあ、女子同士とは言え、一緒に食事やショッピングとかデートと言えなくも無いか…)
そんな訳で2人は外出着に着替えて街へ向かった。
食事中、周りから何やら声が聞こえて来る。
どうやらトウコとミリアは注目されているようだ。
(この展開、以前何処かであったような…)
注目されているのはミリアだ。
ミリアは有名な魔法少女、普段はこの街で外食はしないので、珍しがられている。
「ミリア様がおられるなんて…一緒に居るのは誰かしら?」
「ミリア様と同じテーブルで食事が出来るなんて羨ましい…」
「ミリア様の新しい妹かしら? 何故あんな可愛いだけの小娘なんか…」
「どうせすぐに捨てられるわ、あんな小娘なんか」
外野達はこちらをチラチラ見ながら何やら話をしている。
(せめて、こっちに聞こえない様に言えよ…)
「チッ、五月蠅いメス豚共だぜ。ミリア気にする事なんて…」
「め、めめめ、メス豚ぁーっ!!!」
ミリアはいきなり立ち上がり大声で叫んだ。
(ちょっ、いきなり立ち上がって何大声で変な事言っちゃってるの、この娘はっ!)
「いや、いきなり大声で何言ってんの!」
「お、おおおお、お姉様! わ、私と言うメス豚がおりながら、あ、あの様な者達までメス豚などと、ど、どどど、どういう事で御座いますかっ!」
ミリアは取り乱しながら更におかしな事を言い出した。
(えええええっ! 自分でメス豚とか言っちゃったよっ! いつからメス豚になったの! 妹じゃなかったのかよ!)
(ツッコミが追い付かねえー! と、とりあえず、まずは座らせねば。周りの視線も痛々しいし…)
「と、とにかく落ち着いて、まずは座って」