04
最強と言われている魔法少女ミリア。
身体強化魔法を得意とし、攻撃魔法を使わない肉弾戦闘系魔法少女。
その戦闘スタイルから闘神のミリアと呼ばれている。
そんなミリアとトウコが戦う事になったが何とかミリアを気絶させ足早にその場を立ち去ったのだった。
翌朝、トウコが休んでいた宿屋にミリアが現れた。
「なっ、なにいいぃーっ!!!」
朝っぱらからこの場を特定された事にトウコは驚いている。
「私が初めて負けた相手…逃すはずはありません!」
(こんなとこでおっぱじめる気か、無茶苦茶だなこいつ)
「せ、せめて場所を変えよう」
流石に宿屋の一室で戦うと周りに迷惑がかかるのでトウコは場所を変える事をミリアに進言した。
「この場で結構で御座います!」
ミリアはそれを拒否。
(やっぱりダメかーっ!、窓から逃げるか?)
トウコが逃げる算段をしている最中にミリアが変な事を言い出した。
「貴方達…今日で貴方達とはお別れです」
ミリアは後ろに居た御供の2人にお別れを宣言した。
「お、お姉様…そんな…」
御供の2人はミリアをお姉様と呼び、憧れずっと付き従っていた者達だ。
ミリアは行動を共にする事を許してはいたが特に仲間とは思ってはいなかった。
実はミリアにはある願望があったからである。
「私はたった今、このお方の妹になりました。ですので貴方達はもう私の妹ではありません。早々に立ち去りなさい!」
ミリアはとてつもなくおかしな事を言い出した。
「お、お姉様ーっ!」
御供の2人は泣きながらこの場を立ち去った。
「私は貴方に負けました…ですので私は妹として傍に置いて頂きたく思います。そして今後お姉様と呼ばせて頂きます」
ミリアはトウコの事をお姉様と言い出した。
「おっ、おねっ!?」
トウコはミリアの変貌に戸惑っている。
「私は常々お姉様と呼べる人物を求めておりました…ですが、ようやくその夢が叶いました…」
ミリアの願望は自分より強い相手をお姉様と呼び慕う事だった。
トウコは昨日の事を考えると全く信用出来ないと考え全力でこれを拒否。
しかし、あまりにもミリアが食い下がって来るのでポン太に相談した所、以外にも受け入れるべきと言う返答だった。
しばしの問答の末、ミリアが目をうるうるとさせながら言う姿にトウコはキュンとしてしまい受け入れる事にしたのだった。
「お姉様、今後とも宜しくお願い致します」
「あ、ああ…」
トウコは戸惑っている。
何故ならば、トウコは魔法少女ではない上に中身が男だからだ。
このままミリアと一緒に行動を共にしてボロが出ないか心配なのである。
とりあえず、ミリアとの一件に関しては解決したと言う事にして食事に出かける事にした。
因みに、豪快に破壊された部屋の弁償金はミリアに支払わせたのは言うまでもない。
何処かの食堂的な店に到着。
着席するや否やミリアからある質問をされた。
「と、所で失礼な事をお伺い致しますが…お姉様のお歳はおいくつでいらっしゃいますでしょうか…」
唐突にトウコはミリアに年齢を尋ねられた。
トウコは何も考えずに前世の年齢をそのまま答えた。
「28だけど?」
「ああありえませんっ!」
ミリアは立ち上がり大声で叫んだ。
この世界の魔法少女は一部の例外を除き、20歳前後で加護の力が弱まっていき、いずれ無くなる。
加護の力が完全に無くなって神獣が消滅したら、エリート(元魔法少女)と言われるようになる。
だからミリアが『ありえない』と言ったのは当然なのである。
「ええええええーっ!」
トウコはミリアの反応に驚いたが、同時に重要な事を思い出した。
(しまった…28って前世の歳だ、今は転生してこの姿になったんだから28は不自然過ぎる、ならば年齢は…)
「えーっと、ごめん。じゅ、10歳くらいかも?」
とりあえず、トウコは容姿に近い年齢を言ってみた。
「ああありえませんっ!」
ミリアは再び立ち上がり大声で叫んだ。
魔法少女はこの世界の神が魔力の高い少女を選び10歳になると神獣が現れ魔法少女となる。
なので、魔法少女に成りたての新人がミリアに戦闘で勝つ事はありえないのだ。
「ええええええーっ!」
(ど、どうしたらいいんだよ…しゃーない、奴(ポン太)に聞いてみるか…)
「おい、トウコって何歳よ?」
「ワシが知るかっ! 貴様が作ったキャラじゃろっ!」
「お前、『5年も行動を共にした仲間じゃないか』って、痛い事をほざいたくせに、そんな事も知らんのかっ!」
「知るかっ!」
適当な年齢を答えてもボロが出そうなので、トウコの妥当年齢を考えるのでは無く、どう答えればミリアが納得するかと言う方向でポン太に意見を求めた。
すると、一応ミリアを納得させる返答を提供されたが、それはこの場を凌ぐだけのもの、とも言われた。
今はとにかくミリアを納得させたいので、ポン太が言った内容をミリアに伝えた。
内容とは…年齢はそのまま28歳として加護によって魔法少女期間の延長を行っている。と言うものだった。
「加護…だからお姉様は私よりお強いのですね。納得致しました」
(マジで納得したーっ! 訳の分からん能力でも加護と言っとけば納得するもんなのか…)
「そ、それじゃ、飯も食ったし、ま、また今度ね」
トウコはミリアに別れを告げ、そそくさと店を出た。
暫く街を歩いていたが足を止め振り返った。
「ミ、ミリアさん?」
「はい。お姉様」
「どうして付いてくるのかな?」
「はい。一生お姉様のお傍に居ると申しました」
「いっ、一生っ!!!」
(うーん…まあ、性格はともかく見た目はド直球魔法少女だし、この世界の事を色々聞けるし、いいか…)
そんな訳でトウコはミリアと行動を共にする事になった。
とは言え、特にする事も無く、ここ数日はもっぱら資金稼ぎの為にモンスター討伐を行っていた。
そんなある日、ミリアは疑問に思っていた事をトウコに尋ねてみた。
それはトウコが毎日行っている資金稼ぎの事だった。
魔法少女はスターギルド(魔法少女ギルド)から毎月お金が支給される。
お金の受け取りは拠点指定している街のギルドで受け取りが可能。
支給額は魔法少女ランクによって異なるが、最低のCランクでも生活する分くらいは貰える。
その他にギルドに行けば魔法少女専用依頼を受ける事も出来る。
ギルドから仕事内容に適性が高い魔法少女に依頼する事もある。
「なっ、なんだってーっ!!」
当然トウコは毎月お金が支給される事など知らなかった。
それ以前にスターギルドに登録されていないのでトウコにはお金を支給される権利すら無い。
トウコはタダでお金が貰えるならギルドに登録したいと思ったがトウコは魔法少女では無い。
魔法が使えない見た目だけが魔法少女っぽい魔法少女もどき、なのである。
トウコは考えた。毎月の固定収入は魅力だがギルドに行けば確実に魔法少女じゃないとバレてしまう。
更にトウコは考えた。魔法少女じゃないとバレたら何かデメリットがあるのか、と。
普通の美少女として、この世界で生活する分には何も不都合が無いのではないかと。
1人で考えても答えは出ないのでポン太にその辺りの事を聞いてみる事にした。
「俺が魔法少女じゃないってバレても何も不都合無いよな?このまま普通の美少女として生活しても問題なくね?」
討伐したモンスターの換金は魔法が使えない一般人でも可能。
ただ一般人ではモンスター討伐が困難なので魔法使いが討伐を行っている。
トウコはモンスターを討伐する術があるので、普通に生活する分には魔法少女と言う肩書は無くても問題はない。
「貴様はこの世界では魔法少女として認識されとる。魔法が使えないなんちゃって魔法少女じゃ」
「いや、いちいち魔法が使えないとか言わなくていいから。んで、何で魔法少女認定されてんのよ?」
「この世界で魔法少女か否かは神獣の有無のみで判断されるのじゃ」
この世界では神獣の有無で魔法少女か否かが判断される。
神獣は人によって形は様々で基本、本人の周りを浮遊している。
神獣か否かの判断は人間には出来ないので、浮遊物体の有無で魔法少女の判断を行っている。
「まさかとは思うけど、お前が神獣?神獣じゃないくせに?なんちゃって神獣?何それ…なんちゃってコンビかよっ!」
なんちゃってではあるが魔法少女と認識されているならギルドに登録しない手は無い。
ミリアにギルド登録を行っていない旨を告げるとミリアは相当驚いていた。
トウコは山奥で生まれ育ち、この歳まで鍛練に明け暮れていたので情勢に疎いとミリアに苦しい説明した。
何はともあれ、ミリアと共にスターギルドへ向かった。
ギルドに到着し早速登録の手続きを行った。
多少不思議がられたものの特に問題も無く登録はスムーズに行えた。
次は魔法少女ランクの測定。
「では、魔力を測定しますので、この水晶に手を当てて下さい」
ギルドの受付嬢から水晶に手を当てる事を指示された。
魔法少女のランクはSランク、Aランク、Bランク、Cランクの4段階がある。
魔力が高い者がSランク、低い物がCランクとなっている。
魔力が高いからと言って必ずしも戦闘において強いとは限らないのだが…
トウコは今、魔力の計測をさせられようとしているのだった。
「なっ、なんだってーっ!」