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武者修行の旅をしていたキャスリとトウコが手合わせをしようとした矢先、ミリアとツバキがしゃしゃり出てきたのだった。
「あの…こちらのお二人は…」
キャスリは突然口を挟んできた二人の事が気になっていた。
「ああ、この二人は闘神のミリアと雷神のツバキだ。名前くらいは聞いた事あるか? 一応この国では名が知れてると思うが」
「ええええーっ!! あっ、あの人、雷神さんだったんですかっ!!」
トウコの話を聞き、ヌエットは洗脳されていた魔法少女が雷神のツバキと知り、相当驚いている。
それは闘神と雷神はライバル同士で仲が悪いと思っていた事と、最強の魔法少女と言われている二人がトウコの妹になっている事にだった。
そんなヌエットの思いとは裏腹に、喜んでいる者も居た。
「勿論存じております! お二人とお手合わせ出来るのは光栄です! 是非お願いします!」
キャスリはミリアとツバキの申し出にワクワクが止まらない様子だ。
(何だこいつ…まあ良いだろう。確かにこの二人に負けるようなら俺が相手する必要も無いしな)
「あ、あのぅ…わ、私達はいつまでこの状態なのでしょうか…」
ヌエットと受付嬢はまだ正座をしている。そろそろ足も限界になってきたので、ヌエットは思い切ってトウコに確認をした。
トウコは二人を正座させていた事をすっかり忘れていた。
「先ずは私がお相手を致しましょう」
先にミリアが名乗りを上げた。
「よろしくお願いします!」
キャスリが挨拶をすると、ミリアとキャスリは手合わせをする為ギルドから出た。
それを見た皆も二人の戦いを見るため外に出ると、既に戦いは始まっていた。
(いやいや、何故ギルド前の往来でおっぱじめるかな…裏の人が居ない所でやればいいだろ…)
トウコの疑問はもっともだが、当人同士は人が居ようがおかまいなしらしい。
二人の戦いを見てトウコは、思ったより動けているキャスリに多少関心している。
キャスリは実戦で鍛えた我流の戦い方で武術の心得は無い。
その為、無駄な動作も多く毎日の様にトウコと鍛錬を行っているミリアの敵では無かった。
「こ、これって、手合わせ…ですよね?」
ヌエットは二人の戦いを見て疑問に思い、受付嬢に確認をした。
ミリアは基本、手を抜かない。例え手合わせだろうと、トウコの教え通り相手が倒れてもとどめを刺す事を実行する。
「そ、そのはずだけど…」
「も、もう勝敗は決していたのだから、最後の攻撃はいらないんじゃ…」
ヌエットと受付嬢はミリアの容赦のない攻撃に驚いている。
しかし、ミリアによって再起不能にされたキャスリはツバキの回復魔法によって復活したのだった。
「では…次は私の番ですね」
ツバキは次に自分がキャスリと手合わせをする為に治療を行ったのだ。
それは当然、相手が万全な状態でなければ意味が無いからである。
そしてツバキが名乗りを上げたらキャスリは喜んでそれを受けた。
そして、ツバキとキャスリの手合わせが始まった。
ツバキはキャスリが求めているような肉弾戦型の魔法少女では無く魔法を駆使する魔法型の魔法少女である。
キャスリは雷神の名を知っていても、その戦闘スタイルまでは知らなかった。
ツバキは何時もの様に相手と距離をとって使用魔法の分析を行おうとした。
それを見たキャスリは一瞬で間を詰めてツバキに連打を浴びせた。
しかし、ツバキの加護はフィジカルシールド。殆どの物理攻撃を無効化するのでツバキはほぼノーダメージ。
分析を完了したツバキは普通に得意の雷魔法を発動してキャスリは戦闘不能になったのだった。
ツバキは黒焦げになって意識を失っているキャスリに回復魔法をかけた。
魔法は傷や体力を回復しても意識はそのままなので、気を失った状態のままである。
ミリアとツバキは真剣な表情をしてトウコの目の前に来た。
トウコは2人の表情を見て何か重大な話を聞かされると思っていた。
「お姉様、我々にご褒美を下さい」
ミリアはまた突拍子もない事を言い出した。そして、ツバキは首を縦に振っている。
「えっ? ご、ご褒美?」
思っていた事と全く違う事を言われ、トウコは困惑している。
それと同時に何のご褒美なのかを考えていた。
「以前頂いたご褒美の刺激が忘れられず機会を伺っていました」
「えっ…い、以前のご褒美って…ひょっとして…」
「はい! 勿論、土下座頭踏みで御座いますっ!」
ミリアは嬉しそうに言い放った。
(変なのに目覚めちゃったな…おい。しかも、勝手にしゃしゃり出て、ご褒美を要求するとか…)
「と、取り合えず別のご褒美にしてくんない? た、例えば…そう、プレゼントとか!」
トウコは公衆の面前で女子の頭を踏むのを躊躇いご褒美の変更を提案した。しかし…
「お姉様に頭を踏まれる事こそ、最高のプレゼントに御座いますっ!!」
ミリアは引かなかった。そしてツバキも頷いている。
「じゃ、じゃあせめて人の居ない場所にしない? ここじゃ人も多いし、お前達も頭を踏まれてる姿なんて見られたく無いだろ?」
「それでは意味がありませんっ!!」
「何でだよっ!!!」
二人は他人に見られながら頭を踏まれるプレイが好きだった。
「では、私達の不甲斐なさを叱ると言う名目では如何でしょうか!」
「どっちみちやる事は一緒かよっ!!!」
(つーか、どんだけ食い下がれば気が済むんだよ…しゃーない、人目が気になるけどやるか…)
トウコは仕方なく承諾すると二人は目をキラキラさせながら喜びの笑みを浮かべていた。
「はぁ…じゃあ、土下座して…これ絶対、周りからの印象悪いよな、俺…」
ミリアとツバキはワクワクしながら土下座の体勢を取った。
トウコは早く終わらせる為、軽く飛び上がり同時に両足で二人の頭を踏みつけた。
丁度その時、目を覚ましたキャスリはその光景を目の当たりにしていた。
「な、何故、お二人は公衆の面前で、あの様な仕打ちを…」
キャスリは近くに居たヌエットと受付嬢に状況を確認した。
「い、いや、何か…不甲斐ないとか聞こえたので、キャスリさんとの戦闘内容に不満があった…とか?」
ヌエットは、かすかに聞こえたワードと過去に見たトウコの行動を元に憶測で説明したのだった。
「ええっ! わ、私は何も出来ずに負けたので、お二人が辱めを受ける理由が無いのでは…」




