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トウコとミリアは盗賊討伐の為、待ち合わせ時間の30分前にギルドに来ていた。
そして、ヌエットは10分前にギルドに来たのだった。
「30分前行動が社会人の常識だろがっ!」
前世では格闘技に夢中になっていたトウコ(トオル)だが、普通の会社員でもあった。
そんな彼でも、一応は社会人としての常識を身に付けていた。
「ごごごごごめんなさいー」
トウコの言ってる意味が全く理解できないヌエットだが、怒りを買わない様に素直に謝った。
それは、前日にトウコは闘神の姉で殺神の二つ名を持つ現役最強の魔法少女とギルドの受付嬢に言われたからである。
受付嬢もエリーザに渡されたポスターをうのみにしていたのだった。
「で、でもでも、しゃ、社会人とか言われても分からないです…」
「社会人が分からない…だと…」
トウコは今更ながら社会人と言う言葉が通じない事にショックを受けた。
「それはそうじゃろ、貴様の前世の常識など、ここでは通用せん。何を今更ほざいておるのじゃ」
(ぐぬぬ…恐るべし異世界…)
トウコは何事も無かったかの様に馬車の運転をヌエットに任せ、ミリアと共に馬車へ乗り込み盗賊アジトへ向けて出発をした。
街を出てから数分後、馬車は停止した。
「あっ、ああああああ、あの…」
ヌエットの異変に気付き、馬車を降りたトウコとミリアが見たものは、魔法少女達に囲まれている光景だった。
「な、何か、囲まれてます…」
囲んでいる魔法少女の1人が突然ヌエット目掛けて炎魔法を放った。
それを見たトウコは瞬時にヌエットを掴み馬車から離れた。
炎は馬車を直撃し馬車は炎に包まれたのだった。
トウコは更に馬車と馬を繋ぐ金具を破壊すると、馬は鳴き声を発しながら何処かへ去って行った。
「お前、戦闘に特化してるって言う癖に、助けてなかったら魔法直撃してたぞ」
「そ、そんな事言ってないですよーっ! そ、それに魔法を使って無かったので、は、反応が…」
「アホかーっ! 囲まれてる段階で警戒して魔法を使っとけっ!!」
トウコはヌエットの危機管理能力の低さに驚きを通り越して呆れていた。
ヌエットは戦闘系の魔法を所持しているものの、基本引きこもりなので危機管理能力は皆無に等しい。
「お前が殺神のトウコだって事は分かってんだよっ!」
囲んでいる謎の魔法少女集団は例の盗賊団。
トウコ達がアジトに向かう事を知り先回りして亡き者しようと企んでいた。
「なん…だと…こ、こいつら…勝手に付けられた二つ名と名前を正確に言いやがったぜ…よしっ! 気に入った! 俺が直々に相手をしてやる」
「ミリア! 俺が…」
「はっ!」
例によってトウコが言い終わる前にミリアは戦闘を開始した。
「あ、あの…さ、ト、トウコさんが相手をするんじゃ…」
ヌエットは恐る恐るトウコに確認を行った。
「ま、まあ、いつもの事だ…気にしなくていい」
(いつもなんだ…殺神さんの強さが分かると思ったのに残念…闘神さんは噂通り滅茶苦茶強い…)
ヌエットは事前にトウコとミリアが実際どの程度強いのかギルド受付嬢に確認して欲しいと言われていた。
「終わりました。お姉様」
「う、うん。ご苦労さん。馬車も無くなったしギルドに戻るか…」
(闘神さんは魔法も効かないし格闘戦も滅茶苦茶強い。この人に勝てる魔法少女は想像できない…でも殺神さんを姉と言ってる…それが本当なら相当な化け物…)
2人の戦力分析に夢中になっていたヌエットにはトウコの声が耳に届いてはいなかった。
トウコの何度目かの呼びかけで我に返り慌てて返事をした。
「ごっ、ごごごごごご、ごめんなさい!」
「とっとと行くぞ」
「はっ、はいっ! あ、あの…この人達は…」
ヌエットはミリアに倒され気を失っている盗賊達をどうするのか気になっていた。
「放置だ。さっさとギルドに行くぞ」
トウコは盗賊達をギルドまで運ぶのが面倒だったので放置する事にした。
ギルドに報告し、騎士団が盗賊達を回収する前に盗賊達が目を覚まし逃げ出したとしても、問題無しと判断していた。
ギルドに到着。
「わ、わたしが説明してきますので、その辺で休んでて下さい」
ヌエットはトウコとミリアの戦力報告もする為、2人を受付から遠ざけた。
先ずは気を失っている盗賊の回収と経緯を受付嬢に説明すると、受付嬢は相当驚いていた。
「それで、ヌエットちゃんは見たのよね? あの2人が戦っている所を」
「いや、それが…見た事は見たのですが…戦ったのは闘神さんだけで、殺神さんは何もしてなかったです。でも! 闘神さん、噂通り滅茶苦茶強かったです!」
「そう…実際、ヌエットちゃんから見てトウコ様は強そうかしら?」
「うーん…戦闘スタイルも謎だし…でも、あの体型は格闘向きじゃないから、魔法が凄いんじゃないですかね…何でそんな事が気になるんですか?」
この街のギルドに所属する魔法少女は、今回の盗賊団の一件で主力が居なくなってしまった。
そうなると街の守りも緩くなり盗賊等に目を付けられてしまう。
しかし、トウコの強さが本物ならばトウコのポスターをあちこちに貼っておけば、多少なりとも盗賊避け効果があるのではと受付嬢は考えていた。
そして、再度盗賊のアジトへ向けて出発した。
数時間後、何事も無く盗賊アジト近辺に到着した。
トウコはまた馬車を破壊される事を警戒し、馬車を降り、ここから歩いて行く事にした。
すると、待ってましたとばかりに突然盗賊魔法少女達が姿を現した。
トウコ達により尽く返り討ちにあったので、全戦力で迎え撃つつもりだ。
盗賊魔法少女達は一斉に攻撃魔法を馬車に乗っているヌエット目掛けて放った。
それを見たトウコは瞬時にヌエットを掴み馬車から離れた。
トウコはヌエットの頭を殴った。
「いたーっ! 何をするんですかー」
「お前、ミリアの時は即座に魔法を使ったくせに、何で盗賊には使わないんだよ!」
「いや…戦闘に参加しなくていいと…」
「戦闘に参加しなくていいが、自分の身は自分で守れ」
トウコに睨まれたヌエットは渋々返事をした。
気が付くと不意に現れた盗賊魔法少女達はミリアによって全員倒されていた。
アジトに向かう為先に進むと、そこには20人前後の魔法少女達が待ち構えていた。
「あわわわわ…か、数が多すぎますよ…」
敵の数の多さにヌエットは恐怖した。




