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以前に露店のおばあちゃんから購入した首飾。
煮沸消毒する為、鍋に放り込んだら首飾が悲鳴を上げたのだった。
「お前、立場が分かって無いみたいだな。外部からの攻撃が通用しないなら、内部ならどうよ?」
トウコは首飾を強く握りしめながら鬼の様な形相で言った。
「た、只の人間にそんな事…」
首飾が言い終わる前にトウコは人差し指でチョコんと触れて軽く発勁を放った。
「ぎゃあああああああっ!!!」
首飾は熱湯に入れられた時にはまだ余裕が窺えたが、今は全く余裕が無い様子だった。
「はぁはぁ……そ、それは魔の者の力…ま、まさか、下級魔族だったとは…」
「こんな可愛い魔族が居てたまるかっ!」
「自分で自分を可愛いと言う…やはり下級魔族…ぐぎゃあああああああっ!!!」
トウコは再度、首飾に勁を放った。
「はぁはぁ……そ、それ、ほんと止めて下さい、僕、死んじゃいます…」
「どの道、お前の様な変態糞豚野郎は処刑だ!」
「お姉様、ご提案が御座います。この卑劣な首飾を沸騰した毒液に息絶えるまで閉じ込めておくのは如何で御座いましょう」
「うん。相変わらず発想が怖いけど、それ採用!」
「この、鬼! 悪魔! 魔法少女! ほぎゃあああああああっ!!!」
全く懲りてない首飾に対しトウコは更に勁を投入。
「はぁはぁ……お、お願いですから、ど、どうか僕の話を聞いて下さい」
このままでは話が先に進みそうも無いので、取り合えず話だけは聞く事にした。
首飾曰く、名前はアシュリー。風の精霊シルフィードで四大精霊の1人。
一人称は僕だが自分は女の子だと言い張っている。
その昔、街中でたまたま見つけた首飾に入ったら住み心地が良く、そのまま住み着いていたら出られなくなった、との事だった。
「んで、その話とお前がミリアの純潔を奪ったのと何の関係があるのよ? むしろ性別や種族の詐称した罪が増えただけだろ」
「だからっ! 僕は精霊の女の子で人間には何の感情も無いんです! どうして信じてくれないのですかっ!」
首飾は必死に訴えているが、トウコとミリアとメイドには全く信用されてはいなかった。
「おい、この糞首飾がほざいてる事って本当なのか?」
トウコはダメ元でポン太に相談してみた。
「ふむ…性別は分からんが、こやつから精霊の情報を聞き出す事が出来れば、精霊かどうかの判断が付くかもしれんな」
トウコは、なるほどと納得し、首飾に精霊に関する事を問いただす事にした。
「よし、性犯罪者首飾よ、お前、精霊ってほざくなら精霊についての情報を洗いざらい吐けっ!」
「さっきから豚とか変態とか呪われてるとかセクハラとか鬼畜とか卑劣とか、終いには性犯罪者扱いとか散々じゃないですか!」
「いいからさっさと吐け」
トウコはまた勁を放つぞと言わんばかりに首飾を睨みつけた。
「はいっ!」
アシュリー(首飾)はこれ以上痛いおもいはしたく無いので素直に自分(風)以外の四大精霊、水、火、土について話をした。
トウコはアシュリー(首飾)の話をポン太に確認した。
ポン太はこの世界の情報をある程度、神に与えられている。
しかし精霊に関しては情報が少なく、精霊が存在する事と四大精霊の種族くらいしか知らない。
結局、アシュリーが精霊と断定するには至らなかった。
「んじゃ、お前、精霊なら何か出来るだろ。やってみろ」
「今は何も出来ませんが…僕を身に付けると、何と! 身に付けた者の身体能力が5%アップするのです! これはすごい!」
アシュリーは自慢げに話している。
「ショボ、たった5%かよ! つーか、あの婆が言ってた身体強化魔法付与か」
「ななななっ、何を言っているのですか! 身に着けているだけで身体能力が5%もアップするなんて破格じゃないですかっ!
それに、身体強化じゃないですし、魔法でもないですし、僕の風の力で身体能力アップですよ! こんなに貴重なアイテムは他に無いですからねっ!」
アシュリーは必死に自分は凄いアピールをしている。
「んじゃ俺が着けて確認してやる。おかしな事をしたら即、勁で消滅させてやる」
ミリアに着けると変な事をするかもしれないので、まずはトウコが効果を試すことにした。
「いえ、あなたはちょっと…」
「何か問題あるか?」
「その…魔族には効果が無い上に谷間的にもちょっと…ひぎゃあああああああっ!!!」
アシュリーが谷間と言い出したのでトウコは勁を投入した。
「この野郎! やっぱ谷間目的じゃねーかっ!! ミリアに着けなくて良かったわ」
「はぁはぁ……ち、違うんです、話を聞いて下さい! 僕は女の子なので決して疚しい気持ちは無いんです!
ただ、谷間の美しさよって何故か能力値の上昇率が異なるのです! 本当です!
因みに、魔法少女の方は最大値の5%アップで、魔族のあなたは谷間だけなら2%アップとなりますが魔族なので実際はアップはしません!」
トウコは決してツルペタでは無い。
アシュリーが2%アップと言う様に巨乳ではないものの、そこそこの谷間を獲得している。
しかし、論点はそこでは無かった。トウコは力強く首飾を握り締めながら自分の顔に近づけた。
「おい、この豚野郎。今度俺を魔族つったら消滅させるぞ。あと俺の事はトウコ様と呼べ。そして魔法少女の体で話せ、いいな?」
トウコはミリアに聞こえない様、小声ではあるが迫力のある口調でアシュリーに命令した。
「ひぃぃぃ、わわわ、分かりました…」
アシュリーはトウコを恐れ素直に従う事にしたのだった。
首飾の件は一旦保留として調理場から解散する事にした。
トウコは首飾を持って自室へ入り首飾をどうするかポン太と会議を行った。
「こやつは何も出来んのじゃから、ミリアに身に付けさせて問題は無いじゃろ」
「でもこいつ変態だぞ」
「何も出来んから良いじゃろ。それよりも長年生きとるこやつの知識を活用すべきじゃ」
「そこの変な魔獣の言う通りですっ! 僕は数百年生きてるので、きっとお役に立てると思います!」
「誰が変な魔獣じゃっ!」
トウコは悩んだ。
アシュリーの言う事が真実ならば全く害は無い。それどころか、ポン太の知らない情報を得る事が出来る。
トウコは悩んだ挙句、アシュリーに最終確認を行った。
「お前、本当に女子で疚しく無くて変態じゃなくて呪われて無くて卑劣じゃなくて鬼畜じゃ無くて性犯罪者じゃ無いんないんだろうな?」




