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トウコはミリアの屋敷がある街、トネシンへの帰り方が分からず途方に暮れていた。
そんな矢先、ポン太がテレポを使えばいいと提案したのだった。
「貴様は何か勘違いしてるようじゃな。ワシが使えるのはテレポートでは無くテレポじゃ」
テレポートとはツバキが使える移動魔法で、範囲内の人や物を以前に行った事のある街に移動する魔法。
それに対しテレポはテレポーターと言う魔法の劣化版で自分だけを以前に行った事のある街に移動する魔法。
元々ポン太にはテレポーターと言うイメージした場所に移動する魔法がセットされていた。
しかし元はゲームだったので複数人での移動概念は無く対象は1人。
更に魔法の説明文にはイメージした場所と書いてあったが、結局ゲームなので過去に行った街しか選択する事が出来なかった。
この世界にはテレポは存在してもテレポーターは存在しない。そんな訳でポン太のテレポーターはテレポに変更されていたのだった。
「自分だけか…だとしたら確かに使う場面は無かったかも知れんな、んじゃ今回は許してやるから、さっさとトネシンに移動しろ」
「貴様! どんだけ上からなんじゃ!!」
ポン太は文句を言いつつもテレポを発動した。
すると一瞬光に包まれたかと思ったら、トウコはトネシンの入り口に立っていた。
「おおー! マジで街の入り口に来たっ! これマジすげーわ。今度から1人で出かけた時はこれ使えるな」
「むやみに使って、いざと言う時困ってもワシは知らんぞ」
「えっ? ちょっと待て。これインターバルなんぼよ?」
「86400秒じゃ」
「分かるかーっ!!! 時間で言えっ!」
サポートキャラの魔法には全てインターバルが存在する。
テレポのインターバルは24時間。
トウコは普段使いは控えようと思いつつ、足早にミリアの屋敷へ向かった。
屋敷へ到着すると外に居たメイドと目が合った。
「キャーッ!!! と、トウコ様の…ミ、ミリア様! と、トウコ様の…」
メイドは叫びながら屋敷の中に消えていった。
トウコは不思議に思いながらも屋敷に入ったらミリアが立っていた。
「お、お姉様の…幽霊…」
ミリアはまた、とんでもない事を言い出した。
「いやいやいやっ! 幽霊じゃねーよ! 本物だよ!」
「ですが、お姉様はあの時お亡くなりに…」
「なってねーよっ! あそこで鍛えるから1,2年は帰れないって言っただろ! 話聞いてた?」
その後、1時間かけて説明し、やっと本物だと信用してもらえたのだった。
ツバキの事を尋ねると、トウコが居なくなった事で屋敷に居る理由が無くなり旅に出た、との事だった。
「うーん…何処に居るのか分からんなら探しようもないか…」
「ですがお姉様。ツバキさんでしたらお姉様の命日には一度戻って来るかと思います。去年の命日には来ておりました」
「そ、そっか。じゃ、じゃあ探さなくても、その内戻ってくるか…」
トウコは複雑な気分だった。
それから数日が経過した。
トウコは以前の様にミリアの屋敷に住んでいる。
戻って来てからもトウコは鍛錬を欠かさない。
ミリアも毎日武術の鍛錬を続けていた事を知り稽古をつける様になった。
そんなある日の事、トウコはしょーもない事を思い出した。
「あっ! そういや以前に露店で買った首飾、まだある?」
「勿論で御座います! 大事に保管してあります」
以前に道端で装飾品を売っていたおばあちゃんからミリアのプレゼント用に首飾を購入した。
首飾には身体強化の魔法が付与されているので、おばあちゃんはミリアに勧めたのだった。
しかし、むき出し状態で置いてあった現品なのでトウコはいつか煮沸消毒しようと思っていた。
「よし! ならば首飾を持って調理場に来てくれ!」
トウコは先に調理場に行き、メイドに頼んで鍋に水を入れ火にかけてもらった。
ミリアが首飾を持ってきたので、トウコは沸騰してる鍋に首飾を放り込んだ。
すると…
「ギャーッ!!! あ、熱い熱い!」
何処からか、熱い熱いと騒ぐ声が聞こえた。
「ん? 何処からか豚の鳴き声が聞こえるな」
トウコは冷静に声の発生源を探した結果、首飾から発生していると判断した。
「はっ、早く出してっ! 熱いって! バカ、アホ、早く出せーっ!」
首飾は罵倒しながら必死に叫んでいる。
「豚の分際で生意気な奴だ。更に蓋をするか」
「熱い、ご、ごめんなさい、熱い、は、早く、熱い、助けて…」
「しゃーないな。命の恩人に感謝しろよ」
トウコは熱さを感じる間もない速度で首飾を鍋から出した。
「なっ、何でこんな酷い事をするのですかっ! 僕が何をしたと言うのですか!」
首飾はいきなり熱湯に入れられた事に激怒している。
「僕か…こいつは処刑コース確定だ」
首飾の一人称が僕と知ってトウコの怒り度数が跳ね上がった。
「どうしてですかっ! 僕は何もしてないじゃないですかっ!」
「この変態豚野郎が! お前の罪状はミリアの胸の谷間を舐めまわすように堪能した事だっ!!!」
ミリアは首飾を購入したその日に一度首飾を身に付けていた。
「なっ! ミリア様! セクハラ首飾に汚された部分を一刻も早くお風呂で綺麗に…」
メイドは首飾に汚されたミリアを早急に綺麗にしたいと思っている。
しかし首飾を購入したのは1年以上前の事。
「お姉様…呪われた首飾に汚されてしまった私をまだ傍に置いて頂けるでしょうか…」
ミリアは俯きながら非常に落胆している。
「お姉様、申し訳ありません。この鬼畜首飾を破壊する許可を頂きたく…」
「うむ、許す」
「ひゃー。お助けをー」
首飾はどことなくわざとらしい悲鳴を上げた。
ミリアは魔力を乗せ力の限り首飾を殴った。
しかし、首飾はビクともしていなかった。
「残念でしたー。僕には外部からの魔法や物理攻撃は一切通用しませーん。
何故ならば! 四大精霊の1人、風の精霊シルフィードとは僕の事だからさ!
本来人間如きが話をする事さえ叶わない高貴な…って、怖い怖い! 顔が…お、お顔が怖いです…」
首飾は自分の立場を忘れ、相手を煽る様な言動で長々と話をしていたが、トウコの顔を見て恐怖にかられた。
「遺言はそれで終わりか?」




