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その魔法少女は物理系  作者: 須美音
第一部
15/50

15

トウコはルミラの指導の下、鍛錬を行う事となった。

トウコは自分が扱える(けい)に関してルミラに聞かれたので正直に答えた。


「なにっ!? それでは相手の肉体を破壊するだけではないか!」


「だから対人ではむやみに使えず困っていたんだ」


「中途半端に体得しおって…まあよい。まずは発勁の基礎を徹底的に叩き込むぞ!」


それから半年間、ルミラの厳しい指導の下、発勁の基礎となる力のコントロールを身に付けた。

基礎を身に付けた事によって以前よりは確実に戦闘力がアップした。


「元々発勁自体は使えていたとは言え、半年足らずで基礎を習得したか。ならば次は内勁(ないけい)だな」


発勁は(けい)を対象に作用させる事に対し、内勁(ないけい)は体内で(けい)を自在に操るもの。

これにより発勁を防いだり受け流す事が可能である。


「なるほど、師匠はこれで俺の発勁を防いでいたのか…所でこの世界には勁を使える人間ってどれ位いるの?」


「我は知らんな」


「えっ!? 知らんて…居ないの? 居ないなら内勁じゃなく対魔法用の勁がいいんだけど」


「同じ事よ。内勁は魔法に対しても有効だ」


鍛錬を行う前にルミラから少し魔法少女について話があった。

勁は元々神に近しい存在が持っている力で長い年月を経て魔族や上位種の魔物に伝わったとされている。

更に魔力持ちの魔物まで出現するようになり、魔法が使える人間でも太刀打ちが出来ない状況になっていた。

それを見かねたこの世界の神が強力な魔物に対抗すべく魔法少女を生み出した…と、されている。


「要するにだ、勁や魔力持ちに対抗する為に生み出されたのが魔法少女って事らしいぞ?」


「疑問形かよ。しかし、その割には糞弱い奴ばっかだったけど? 全く勁に対応出来て無かったし」


「我が100年程前に戦った魔法少女は恐ろしく強かったぞ」


「えっ!? 師匠が強いって言うからには相当だな…まあでも100年前なら、もう居ないか」


「そんな事よりさっさと鍛錬せぬかっ!!!」


(自分から変な話を振ってきたくせに…)



それから更に半年程の月日が流れた。



この半年間、トウコは寝ている時以外は常に内勁を意識しながら生活をするようになった。

武術の鍛錬中も、技を繰り出す部位に勁を集中させるなど勁の操作に余念が無かった。

トウコがいつもの様に日課の鍛錬を行っていたらルミラがやってきた。


「うむ。半年足らずで随分と上達したものだ。だが、寝てる時でも勁を巡らせるようになれ!」


それはトウコにとって、まだまだ鍛練不足を実感させる言葉だった。

それと同時にトウコには気になる事があった。


「今更だけど、師匠は何で人間である俺に勁を教える気になったの?」


トウコは人間でルミラは魔物。

基本的に敵対関係にある魔物のルミラが人間であるトウコに強くなる指導をするのが不思議だった。

その質問に対しルミラは若干の間の後に口を開いた。


「ふむ…ヌシは人間ではあるが魔法少女では無い。どちらかと言うと勁が使える分こちら側だ」


この世界で勁は人間に伝わってはいない。

しかしそれは、ルミラが知ってる限りの事であって、他の者がルミラの様に人間に教えている可能性もある。

その可能性を考慮して以前ルミラ自身は人間で勁を使える者は知らないと言ったのだった。


「とは言え基本が出来ていないヌシを見て我は鍛えてやろうと思ったのかも知れんな…」


「そっか…まあ、良く分からんけど、良しとしとくわ」


「ヌシは教えを乞う身でありながら、どんだけ上から目線なんだっ!」



そして更に半年程の月日が流れた。



トウコがここに来て鍛錬を開始してから実に1年半が経過していた。

トウコはルミラにダメ出しをされてから半年間、主に内勁の鍛錬に重点を置いてた。

寝てる時でも自然と勁を巡らせる…と、までは行かないまでも、即座に勁の制御は出来る様になっていた。

いつもの様にトウコが鍛錬を行っているとルミラがやってきた。


「うむ。内勁の基礎は出来る様になったようだな。ならば実戦で鍛錬の成果を見るとしよう」


トウコとルミラは実戦さながらの戦いを始めた。

戦いの最中ルミラは容赦無く勁を放ったがトウコはそれらを全て防いでいた。

しかし、ルミラがスピードを上げると、徐々に対応出来なくなり結果トウコの敗北に終わった。


「勁への対応はまあまあだったが、速度はここに来た時と殆ど変わっておらんな」


トウコは1年半前、負荷をかける腕輪を外してルミラと戦い惨敗していた。

ここで鍛錬を開始してからは常に腕輪を装着していたのだった。


「じゃあもっかい試してくれ。今度はちょっとマシになってるはずだ」


トウコは腕輪を外し軽く運動を始めた。


「ヌシは人間で言う所の超ドエムと言う奴か」


「だから違げーって!」


トウコとルミラは再度戦いを始めた。


そして、再びトウコは負けた。


「やっぱダメだったか…」


「ヌシのドエム気質は見事だ。我が本気を出したのは100年前の魔法少女以来だな」


トウコは負けはしたが、後1年もここで鍛錬を積めばルミラに追いつけると思っていた。


「よし! こうなったら師匠に追いつくまで鍛えて貰うぜ!」


「ヌシはもう帰れ」


「ええええーっ!!! な、何故…」


「発勁と内勁の基礎は教えた。後は自身で鍛錬を積め。それにヌシばかりに構ってはおれん」


トウコはまだまだ鍛えて貰う気満々だったが、ルミラに断られ今後の事を考えていたら、そこで重要な事を思い出した。

それは、自分を慕っていたミリアとツバキの事だった。


「あっ、師匠! 俺、帰るわ!」


「うむ。さっさと帰るがよい」


トウコはルミラにお礼を言い、一刻も早く帰る為走り出した。

しかし、途中で重大な事に気づき足を止めた。


「そう言えばここって確か…馬車で3カ月かかる場所だったような…それに帰る方角が分からん…」


「テレポを使えば良いじゃろ」


ポン太が突然助言をした。


「お前テレポートが使えたのかっ!!! 使えるならもっと先に言えっ!!!」


「貴様が聞かないからじゃ。それに今までテレポを使う場面は無かったじゃろ」


「山ほどあったわっ!!!」


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