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一話 勇者召喚

 楠柊人。彼には弥生坂蓮という恋人がいる。そんな柊人をからかう大河、蓮の友達の日走帆乃香の四人は周囲から仲良し四人組の印象を持たれていた。

 休日、蓮は柊人にあることを教えようと柊人の暮らしているマンションを訪ねた。


「おはよう、柊人」

「おはよう。今日もありがとう、お弁当作ってきてくれて」


 一人暮らしをしている柊人だが、親の猛反対を押し切ったため、家事全般が出来ないという難点を抱えていた。彼女が出来たことにより、そんな点も克服出来たら嬉しかったのだが。


「毎日大変なんだよー、お弁当作るの」


 蓮の言う通り、自分の分と柊人の分のお弁当なので実質二人分を作っている。大変のなのも納得がいく。

 だが、いつまでも甘えてられない。蓮に教わりながら柊人は料理を学ぶことになった……のだが。


「手際悪いねー」

「ごめん」


 容量も悪い。蓮が呆れるのも当然だ。だが、蓮は文句を言うことなく柊人をじっと見つめる。


(頑張れ柊人。私も頑張るから)


 心の中で応援する。マンツーマンの料理指導は昼まで続いた。



「お前本当にいいよなー」

「なにが?」


 月曜日。席についた柊人は先に来ていた大河にそう言われた。


「うらやましいんだよ。彼女」


 確かに。学校の公認カップルは俺達だけだ。まあ、いい性格しているのに彼女が出来ない方がおかしいとは言い難いが。


「俺はまあ……。自分でもかっこいいって思うから」


 恥ずかしいセリフだ。自覚があるなら言うなよ! と、言われそうだった。

 話している内にどんどん人が入って来た。大河は自分の席へ戻り、友達と話し始める。柊人もスマホのニュースをチェックしていると、妙な見出しが目に入った。


『まるで神隠し? 謎の失踪事件多発』


 神隠し。オカルトに興味はわかないが、何か引っかかるものがあった柊人。その見出しを押して本文を読む。


「昨年から起こる失踪事件。犯人は不明だが、警察の調べによって徐々に明らかになっていくだろう」


 専門家の意見やらなんやら書いてあったが特に興味無い。柊人はゲームを起動させた。

 この時から、柊人達に魔の手が忍び寄っていた。



「蓮ー。忘れ物ー」

「ありがとう帆乃香ちゃん」


 放課後。蓮は生徒会室で資料の整理をしていた。そこに帆乃香が訪ねて来て、水筒を届けてくれた。


「帆乃香ちゃん。資料の整理手伝って」

「はーい」


 帆乃香は文句を言う頻度は多いものの、手伝いはしてくれる。そんな性格を知っている蓮にとって帆乃香は絶好のカモ。


「毎日ありがとう」

「いや知ってるからね。あたしをカモ扱いしてるの」

「そんなことないよ。カモだなんて思ってないよ……半分は」


 こらぁ! と怒られる蓮。首をすくめて謝った感を出す。

 そんなとこもわかっている帆乃香は蓮に文句を言う。


「だいたい、蓮は私をどう思ってるの。カモとか言ってさー。友達の自覚はあるんでしょ?」

「あるにはあるよ。……計算しておいて」


 不満そうな顔をした帆乃香。しぶしぶ受け取ってスマホで計算する。


「…………」


 こういう作業の時は真面目になるんだから。微笑み見守る蓮。

 帆乃香はその視線に気づいたのか、蓮に手伝えという視線を送る。蓮はそっぽを向いて拒否した。


「暗くなってきたね」

「出来たよ。合ってるから」


 差し出された紙を受け取る。さすが帆乃香ちゃん。


「帰ろっか」

「はーい」



 柊人は蓮を待っていた。気づいた柊人が蓮に手を振った。蓮も振り返して小走りで柊人に駆け寄る。


「ごめんね遅くなって」

「いや、そんなに待ってない」


 イチャイチャしている二人を見つめ、帆乃香と大河が呆れた様子で話す。


「何か嫌だ」

「俺も」


 恋人繋ぎで校門を出ていく二人を追いかける。ちょうど合流したその時――

 目の前が白くなった。



「……ここ、どこだ?」


 柊人は戸惑い周りを見渡す。蓮も同じく戸惑っていた。帰ろうとしたら急に真っ白い場所にいるのだから、当然というべきだが。


「柊人!」

「どうなってんだ……」


 柊人達の後ろから声が聞こえる。帆乃香と大河も巻き込まれていた。四人が立ち尽くす中、声が響いた。


「お前達が選ばれし勇者か」


 上空から聞こえた声に四人が上を向く。天使の少女が降りてきた。


「天使……」

「あたし達、死んだの?」

「何を言う。死んでなどいない……選ばれたのだ。お前達四人は」


 蓮と帆乃香の問いに答えた天使は先程と同じことを言うと、柊人を指差す。


「楠柊人で間違いないか?」

「そうですけど……」


 柊人が答えると他の三人にも同じことを聞いた。天使は名前を確認して本人かどうかを確かめると背伸びをした。


「ん~じゃ、お仕事モードおーしまいっ!」


 は? 四人の心の声が同じような反応をした。


「ごめんね~。威圧的な声を出せばいいかなって思って。本人で良かったよー。あ、私はシアン。こう見えてちゃんとした女神なんだ。よろしく~」


 シアンは一方的な握手を交わす。状況がよくわからない四人の足元に魔法陣が広がった。


「行け、勇者よ。この世界を救うのだ」


 シアンの言葉が合図となり柊人達は消え去る。ここから、柊人達の冒険が幕を開けるのだった――

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