第1章 梅子の場合〜異世界で保育園始めました〜 2
「はー。ヒマ。」
私は、じゃがりこを食べながら、優雅に午後のお茶をしていた。召喚時、背負っていたリュックの中に、じゃがりこが入っていた。実験として、土に埋めたら、翌朝、じゃがりこの木が出来たのだ。
枝の先から、じゃがりこの箱が大量にぶら下がっていた。もぎとって開封すると、中身は本当にじゃがりこだった。今では、これをこの国の看板商品として、隣国との取引も軌道に乗ってきた。
私の衣食住は大幅に改善され、めちゃくちゃ待遇もいい。よく分からないが、聖女パワーで雨も降るようになって、ノスタルジアは現在、ノリにノッている。国民の生活基盤が安定してきたんだから、そろそろ、帰りたい。
しかし、十二人の賢者たちは、『召喚』は出来ても、私を帰らせる魔法がないと言ってきた。
「はあ?どーゆーことよォォォ!」
私は、またジジイどもをボコボコにした。
「本当なんですじゃ〜!」
しかも、私を召喚する際に、十二人の力も尽きたらしい。泣き叫ぶジジイたち。…はっ!泣き叫ぶ?!そうだ!!
「じゃあ、私、保育園やる!」
「ほ、ホイクエン…ですとっ?!」
驚く賢者たちに次々と指示を出し、私はあっという間に、『ウメノコ保育園』を設立した。
『ウメノコ保育園』の園児たちは、『ウメノコ』と呼ばれ、近隣住民から親しまれている。もともと、ノスタルジアには充分な教育整備がなされていなかった。親は泣きじゃくる子どもの面倒を見ながら働くしかなかった。
私は、私がいま住まわせてもらっている『賢者の塔』の隣のボロい平屋をドワーフたちに改築させた。徒歩一分の職場である。妖精たちの力を借りて、雑草を駆除し、園庭も作った。たくさんの人たちが助けてくれ、様々な遊具も設置できた。
十二人の賢者たちには、絵本作成、紙芝居作成、給食係、旗を持って交通見守り、連絡帳記入などなど、仕事を振りまくった。毎日、生き生きと働いている。
だが、問題が起きていた。保育園の上の教育機関が無いのだ。つまり、小学校や中学校。ここで学んだことを次に繋げたい。あー。竹子がいればいいのに…。私には、姉が二人いるのだ。竹子は、私のすぐ上の姉で、高校の教員をしている。確か、竹子は、小学校やら中学校の教員免許も持っていたはずだ。
(こんな感じだったよな〜。竹子は…。)
私は、折り紙で器用に人形を作り、胴体部分に鉛筆で、『竹子』と書いてみた。と、その時、人型が光り出した。
パアアアアッ…
「こ、この光は…!」
「なんと!召喚の魔法じゃと…?!」
ジジイどもが、やんややんやと集まってきた。え、私、召喚魔法使えるの?ステータスを開いてみてみると、聖女スキルの『製作』という文字が光っている。
いやいやいや。待って?製作って、あれだよ?切り絵とか、色紙作るのとかだよ?折り紙が竹子になったら、おかしいでしょーが。しかし、竹子人形はだんだん大きくなり、人間の形になってきた…。
パアアアアッ……!!
「ま、まさか、聖女様がもう一人…?!」
いやいや、無いって。いや、あるかもしれん…。なんか、ホントに竹子っぽいのが見えてきた…。
ポンッ!!!
「た、竹子ーーー!!!」
「二人目の聖女様じゃーーー!!!」
なんと、ピザポテトを手に持った竹子が、召喚されてしまった…。