モテに本屋に伊達メガネ
二人「どうもこんにちは~」
ボケ(以下『ボ』)「いや〜メガネ男子ってモテますね〜」
ツッコミ(以下『ツ』)「急に話し始めたね。」
ボ「僕が中学生のころね、クラスにメガネかけたイケメン男子がいましてね」
ツ「あぁ、授業中に女子の視線を集めるタイプのね」
ボ「いや、授業中はメガネかけてなかったんだけど」
ツ「なんで? 」
ボ「休み時間だけメガネかけてね、本読むときはメガネ外してました」
ツ「それただの伊達メガネでは? そんな頻繁に外してたらメガネでお洒落する意味なくない? イケメンだけでよくない? 」
ボ「そう、だからその伊達君に対抗して」
ツ「名前が伊達なのかアダ名が伊達なのか分からないんだけど」
ボ「本屋に行きましょう! ちょうど国語辞典が欲しいんで」
ツ「ちょー・・・っと・・・うん、話題がトびましたね。僕は何処に居れば良いのかな。迷子になりそう」
ボ「話題!? 迷子! 僕の可愛い話題ちゃんを、誰が迷子にしたんですか! 」
ツ「君だよ! 」
ボ「すいません店員さん、あのー、国語辞典がほしいんですけど」
ツ「急にコント漫才始めないでよ。前置きしてほしいよ」
ボ「取り置きしといてもらえませんかね」
ツ「(もぅしゃあないな、と呟いて)わざわざ来てるならその場で買ってください」
ボ「じゃぁ売り場まで案内すりゃいいじゃん」
ツ「急に上からですね」
(二人、2,3歩足踏み)
ボ「いっぱいありますねー。甲子園はどれですか」
(ツッコミ、ボケの方を見て、しばし間)
ツ「・・・広辞苑はこちらです」
ボ「あぁ、あったあった。やっとみつけた〜。これ、最初アマゾンで探したんですけど、3時間以上探しても見当たらなくって」
ツ「国語辞典の殿堂が、そんなことあるんですか」
ボ「そうなんですよ。探してるうちに帰りの飛行機の時間が来ちゃって」
ツ「これ、本当にアマゾンへ分け入っちゃってるやつですか? やめてくださいよ、そんなベタな、ベッタベタのボケ。場がシラケるでしょ」
ボ「なにをブツブツ言ってるんですか? あなたの仕事は僕と漫才をすることではなく、本を売ることですよね」
ツ「違う! いや、今は強引にそうなんだけど! 」
ボ「ちゃんと仕事してください」
ツ「君、態度がちょいちょい腹立つね」
ボ「しっかりしてくださいよ。僕は ちゃかわりゅうのすけ の作品も探してるんですから」
ツ「ちゃかわりゅうのすけ? そんな人いましたっけ」
ボ「そうです。書店員なのに知らないんですか? 作家の登竜門、ちゃかわ賞の ちゃかわりゅうのすけですよ」
ツ「それ、もしかしなくても、『あくたがわ』ですよね。またベタなボケを」
ボ「え? 」
ツ「・・・・・本気で『ちゃかわりゅうのすけ』だと思ってたんですか」
ボ「え、いいや、っそそそそそそそそそそそんなわけないでしょ」
ツ「全身全霊の肯定をありがとうございます」
ボ「いや、だって・・・ほら、『茶』って書いてあるじゃないですか」
ツ「よく見てください。ほらここ」
(二人、本を覗き込むように顔を寄せる)
ツ「『芥』です」
ボ「・・・」
ボ「あ、ちょっき三十五も読んでみたいなと思ってるんですけど」
ツ「その、ゴルゴ13みたいな固有名詞はタイトルですか作家名ですか」
ボ「作家名に決まってるでしょ、ちゃ・・あくたがわ賞と並ぶ文学賞にもなってるでしょ? 」
ツ「まさか直木三十五じゃないでしょうね」
ボ「え? 」
ツ「マジか。『直木』を『チョッキ』って読む人初めて見たよ。全国の直木さんに謝ったほうがいいですよ。それから芥川先生と直木先生にも」
ボ「というわけで国語辞典を手に入れたんですが」
ツ「また前置きもなく話しトばすなよ! 急に終わらないでよ! 記憶も飛んじゃった?! 」
ボ「文学に関する記憶が飛んでるのは確かですね。中学〜高校の国語で何を学んできたのか自分でも不思議に思います。走れメロスは何度も音読していたのですが、メロスの心情の変化と疾走感の描写が何とも印象的で」
ツ「なんか頭良さそうな感じになってるよ。広辞苑のおかげか? すごいな広辞苑」
ボ「よし、これで僕も伊達君なみのモテ男子に」
ツ「その前に伊達メガネを買いなさい。眼鏡屋のシュミレーションはやらないからね」
二人「どうも失礼いたしました〜」