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義賊のスピカ  作者: 薬壺さん
1/1

前日譚:少年スピカと少女ナタリーの出会い1

読みずらい所とか沢山あるので後ほど修正していきます。ご了承ください。

 ――ただ懸命に俺は今まで生きてきたはずだった。


 「………いったい俺はどこから道を間違えたんだ?」


 街灯一つ無い、薄汚い夜の路地裏を全速力で駆けながら少年は今までの自身の歩んできた人生を振り返っていた。

 といってもそもそも、人生を語れるほど少年は長い年月を生きてもいない。この最悪な世界に生を受けて14年。まだ少年は御年14歳の尻の青いクソガキなのだ。だがしかし、そんな青二才で年若い彼にでも嫌というほど解ってしまうくらいに、


 「………いったい俺はどこから道を間違えたんだ?」


 ――この世界は彼にとって過酷で残酷であった。




          ---------------------------------------------



 喧騒に包まれる夜の街。本来行商人や冒険者などの人間でごった返すこの街だが、その中でも特に昼夜問わず酔っぱらいや荒くれ者たちで溢れかえる場所がある。それがこの街、ローゼスグラード名物の酒場”勇者の杯(ローゼスのさかずき)”だ。

 街の外れにあるこの酒場だが、ここはかつて魔王討伐のために立ち上がった史上最強の大剣使い、勇者ローゼスとその一味が魔王を倒す誓いを立てた場所として知られる由緒ある聖地なのだ。しかし、今ではそんな神聖な場所であった面影など一切なくて………


 「………あん?、てめぇこの俺様の話が信用なんねぇとでも言いてぇのかぁ?」

 「ああそうだ!お前みたいな一日中ただ浴びるように酒飲んで暇つぶしてるだけのクソジジイの何を信用すればいいんだよ!」

 「まったく、近頃のガキ共は行動力ってもんが足らなくてへなちょこばっかだなぁ!」

 「………なんだ、やんのかクソジジイ!!」


 「おお!あの酔いどれギルとダンがやりあうっぽいぞ!!」

 「俺はダンの野郎に酒瓶一本賭けるぜ!!」


 このように、もう一度言うが今では神聖な場所であった面影など一切なく、昼夜問わず酔っぱらいや荒くれ者たちで溢れかえってしまっている。


 そんな怒号と喧嘩をはやし立てる煩わしい声援で包まれる勇者の杯だが、酒場の中心で殴り合いが始まるのに対し、それを遠目に端っこのカウンター席でチビチビと酒を飲む小汚い少年がそこにはいた。


 ――ボロボロの布切れのような衣服を身にまとい、腰には何かが詰まった小袋と短剣。そして首からは珍しい何かの模様のようなものが刻印された石を下げている。ぼさぼさの銀髪頭に蒼い瞳を持つ少年だ。彼は見物人で集まる酒場の中心地から距離を置き、ただ一人、黙々とこの勇者の杯で一番安い料理と酒を食していた。


 「――おい、ガキ。ここはガキが来るような店じゃないんだが?」


 この酒場の店主である男がカウンター席を布巾で掃除しながら目の前の席に腰掛ける少年に語り掛ける。


 「………見ない顔だが、ガキ。先に言っておくがここはどこにも居場所の無い奴の溜まり場じゃねーからな」

 「…………。」


 この酒場は勇者と由縁が有るからというより、提供される品が安い事で親しまれている店だ。

 当然ながらそんな店に集まって来る奴らは金を湯水のように扱える貴族のような人間ではなく、酒をいかに安く、より飲めるかに重きを置くギルバートのような酔っぱらいや他人の家屋から盗んだ盗品で生計を立てるろくでなしのダンのような盗賊。果てはこのみすぼらしい格好をした少年のようなどこにも居場所のない貧乏人がやって来る。

 店の方針的に考えてその様などうしようもない客が集うのは仕方のない事だが、こうも毎日のように店内を荒らされ、普通の客まで寄り付かなってくるといくらこの酒場の店主とはいえ流石に堪えるものがある。


 「………おっさんも大変そうだな」

 「………あそこで喧嘩を起こして店を荒らす馬鹿共よりもお前みたいにくせーけどチビチビ小金だけ落として帰ってくれる客の方がよっぽどマシかもしれねぇな」


 貧乏人のガキに同情されるなんて。と普段なら腹立たしく思う所だが、如何せん最近の自分は何もかも無気力でやる気というものが欠如している。

 それもそのはず、最近は店も休み無しで営業し隙間時間に睡眠、酒や料理の材料の仕入れ、そして荒らされた店の後処理etc………

 元は沢山いた店の従業員も、今では店主である自分一人であり先の見えないこの状態でずっと働き続けている。ストレスで髪の毛も薄くなり店の経営のせいで嫁と娘には見離される始末。この状態でこれからいったい何を頑張って……


 「………おっさん、可哀想だから俺がなんか手伝ってやろうか?」

 「あぁそうだな、それじゃあ俺の大事な店ということを忘れ今、あそこでやりあっている糞野郎共を店から追い出してくれや。―――二度と来ないように」


 ぽっと口をついて出た店荒し客への恨み節。

 先祖代々受け継がれてきたこの勇者の杯(ローゼスのさかずき)。本当は親父の代で店仕舞いだったところを当時若かった自分が無理をして引き継いだのだ。無理を言って引き継いだからには何としてでもこの店を守り抜きたいという一心で今までがむしゃらに頑張ってきたつもりだったが。

 ―――本当はずっと前から既に自分は限界だったのかもしれない。

 金はちゃんと落としてくれるからと自分に言い聞かせて今日まであの客たちを放置したのは自分の責任だ。マナーは悪くても金はしっかり落としてくれるいい客だと自分に言い聞かせて―――。



 「―――あんたら、いい大人のくせしていつまでそんな他人を困らせるようなことやってんだよ」



 ―――騒がしかった酒場の中が一気に凍り付いたかのように静まり返った。


 「お前らにここの酒を飲む資格なんかねぇよ。…………さっさとこの店から失せろ!!」


 静まり返った酒場に、ただ一人の少年の声が響き渡る。

 先程まで殴り合いを繰り広げていた中年の酔っぱらいオヤジと盗賊の格好をした強面の男。

 喧嘩をはやし立てていた見物人たちに、それを肴に酒を飲んでいたはずの強面盗賊の仲間と思しき盗賊たちもまた声を荒げたみすぼらしい風体の少年に視線を向けた。


 「………あん?なんだクソガキ?もう一回言ってみろ?」

 「………何度でも言ってやるよ。お前らにここの酒を飲む資格なんかねぇよ。…………さっさとこの店から失せろ!!店主のおっさんが困ってんだろ!!」


 再び場の雰囲気が凍り付き勇者の杯内に沈黙が落ちた。

 すると、先程まで殴り合いの喧嘩をしていた強面の盗賊が少年に歩み寄り胸ぐらを掴んだ。背の低い細身の少年はたったそれだけの行動で軽々と宙に持ち上げられてしまう。


 「………どこのガキだか知らねーが威勢が良いのだけは褒めてやる。だがなぁここはガキの来るところじゃねーんだよ。殺されたくなかったらとっととこの場から()()()が失せろ!」

 

 軽々と持ち上げた少年のその体を盗賊の男は身をひねり、カウンター席の方へ投げ飛ばす。

 凄まじい勢いで投げ飛ばされた少年は受け身も取れずにそのまま今の事態をただ呆然と眺めていた店主の足元に転がり、倒れ伏した。


 「喧嘩を売る相手を間違えんなクソガキがっ。………畜生、興が冷めちまった。おい、お前ら飲みなおしだぁ!!」


 再び周りの仲間たちに酒を勧める盗賊の男。だが、その光景を目の当たりにしていた他の見物人達は盗賊には目もくれず。ただ、茫然自失と言わんばかりに一点を。



 ――――盗賊の男の前に立つ、投げ飛ばされたはずの少年を眺めていた。




 

 ―――店主は先程から自分が一体何を目の当たりにしているのかが全く理解できていなかった。

 否、理解なんてそんなもの、今の光景を目の当たりにしてできるものなのか。

 少年は確かに先程まで自分の目の前の席で食事をとっていたはずなのだ。

 しかし、自分がカウンター席の机を拭きながらぼやいていたその時、


 ―――少年は空間に溶けるように一瞬で消え、酒場の中心で殴り合いをしていた二人組の男の目の前に出現し、怒号を浴びせたのだ。そしてまた…………


 「―――お、おい、どういうことだ。た、確かに俺はてめぇを」


 「早くこの店から出て行けよ。―――雑魚共が!」


 今、大勢の見ている目の前でまた、理解できない超常現象のように少年が自分を投げ飛ばした男の前に―――何もない()から突然出現した。


 「な、何なんだてめぇ気味悪い。ど、何処から今!?」


 「………一回は一回だ。」


 「…………っな!」


 ―――瞬間、少年が消えたかと思うと目の前の盗賊の男も消え、再び目の前に出現したかと思うと、そこには歯が複数本折られ血だらけで気絶した盗賊と―――無傷で拳を赤く染めた少年の姿がそこにはあった。そして、見物人全員の視覚に少年と盗賊の男を認識できたのと同時に、少年が男を殴り飛ばした時の衝撃波のようなものが酒場全体に木霊(こだま)した。


 「………他に俺に殴られてぇ奴はいるか?」


 「に、逃げるぞお前ら!!」

 「す、すまん店主!今まで悪いことしたなあ!ガ……君もごめんな!」

 「誰かダンの事一緒にここから運び出してくれ!!」


 「次にこの店荒らしたら―――歯だけじゃ済まさねえからな」


 「「「ひ!ひゃい!すみませんでしたぁ!!」」」


 ほんの一瞬の出来事。何が起こったのかも理解が追いつかないまま、騒ぎ、酒場内を荒らしていた盗賊団は一斉に本能の危険信号を頼りに殴られた男を連れて脱兎の如く逃げおおせた。


 「―――おい、ガ……少年!君の名前を教えてくれ!!」


 盗賊団が消え、静寂が落ちた夜の酒場で店主は店を荒らす客、………否、悪党の犯罪集団を追い払ってくれた恩人に対し礼を言おうとする。


 「少年。どうか君の名前を教えてほしい」


 ―――本当は自分の店が客から親しまれ勇者の杯ではなく、ただの悪党の溜まり場と化している事なんて前からずっと分かっていた。本当は金だって盗賊団(あいつら)はたまにしか払わないし、自分以外の従業員が辞職していったのも全部最初からしっかりと店内で暴れ、マナーを守らない盗賊団(あいつら)に注意をしなかった自分の責任なのだ。盗賊団に何かされるんじゃないかと怖くてビビっていて、そんな、どうしようもない、盗賊団(あいつら)以上に”ろくでなし”の自分にもう一度挽回するチャンスをくれたこの少年(おんじん)の名前を………。



 「―――俺の名前はスピカ。」

  


 少年は、小さく微笑みながら静かに自分の名前を口にした。


 

 「―――義賊のスピカだ。」




     ――――――歴史が始まる音がした。




 


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