青田の記憶
高校棟と中学棟を結ぶ渡り廊下。
そこにたたずんでいるのは青田ともう一人。
「何故俺の邪魔をするんだ?別に攻撃とかしてるわけじゃなくって、ただ通りたいだけなの!」
青田は少し腹を立てながら言った。
「でもな、青田。お前を邪魔するのは訳があるんだ。お前だけのせいじゃない。」
「俺がこの学校に登校したのは一年ぶりだ..その意味がわかるか?」
それを聞いた青田は息を呑んだ。そいつは話し続ける。
「俺は化学が好きだった。だから科学部にも入ったし、色んな研究をしようと思った。」
「でもお前らは俺を避けた。何も理由を言わず、勝手に決めつけたように批難しやがって..」
「俺が何をしたんだよ?悪い事なんて何もしていない。みんなと仲良くなろうと話しかけただけだ!」
「だからって俺を恨むのは筋違いじゃないのか!」
青田は反論する。最後まで言う前に言い返される。
「ふざけるな!ふざけるな!!」
うあああ。っと叫びながら懐から包丁を出した。
「はっ!?それはやばいだろお前!?人殺すつもりか!?」
「うるさい!うるさい!死ね!死ねぇ!」
走ってくる。もう反応できないぐらいに近づかれてる。
そうか。殺されるのか。でも、何で...
青田は無意識に腰に手を回していた。試験管をつかむ。
気がついた時には、中に入っていた「濃硫酸」を周りにぶちまけていた。
「痛い!痛い!」
何も言えない。ただ、自分で生んだこの惨状を何も言わずに通り過ぎる事しかできなかった。