ターニングポイント 野球部 vs 陸上部
野球部。
キャプテン清原勇知が束ねる、中高計60人で構成された部活。
グラウンドを本拠地としつつ、色々な部活を同時に攻撃する戦術を取る。
8時57分、グラウンドを陸上部と野球部が二分していた。
野球部40人と陸上部50人の戦いの始まりである。
9時5分
「勝ったぞーー-!!!!」
体育館からの大声が上がったのを皮切りに、野球部が攻撃を開始した。
清原の指示を受けて、野球部員が上空へ球を打ち上げる。打った球は放射線を描き、陸上部の上に次々と落下した。不運な事に、陸上部は上に対して何も防御をしていなかったので、一方的に攻撃を受けてしまう。
9時8分
ついに陸上部が動き出した。田上飛翔含む10人を残しその他の部員は縦横無尽にグラウンドを駆け回る。
グラウンド全体は煙で覆われ、互いに何も見えない状態になった。
「そろそろ攻め時か...」田上がつぶやく。
ホイッスルが鳴ると、煙の中から陸上部が現れ、攻撃を仕掛ける。最前線の野球部はリーチのあるバットで戦っているが、突破されるのは時間の問題だ。と、清原は思った。
「北西はいるか。」
「ここにいます。」北西が返事をした。「北西悠人」バットにスタンガンをつける改造をしたのは彼である。野球部のエースで、先発を努める。
「あれを使って反撃をしてこい。」
陸上部は勢いに乗っていた。完璧な油断からの奇襲。相手の野球部も十分な力を発揮できていない。
そう思った時、剛速球が陸上部の一人に命中した。彼の胸からは血が出ていた。
煙の中でかすかに見えたのは、「ピッチングマシーン」しかし、ただのピッチングマシーンではない。
北西が工夫に工夫を凝らし、夜を徹して作った改造マシーン。350km/hのスピードでボールが投げられるようにされている。もちろん、そんなスピードで受ければ、命に関わる。
今まで生徒達が背負っていた「退学」のスリルが、「命」のスリルに変わった。そう気づいた時、既に陸上部は戦意を失っていた。
「うわああああぁぁ!!!!逃げろおおぉぉぉ!!!!」誰かが叫んだ瞬間、
蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。
背中を向けて逃げていく陸上部を、野球部は正確にボールを当てていく。
田上の元には、十人も戻ってこなかった。
「もうダメか..」田上はつぶやいた。前からは、野球部が全速力で追撃をしてきている。
「こうなったら、俺らではもう勝てない..幸い、あいつらよりは足が速いはずだ。とりあえず逃げるぞ!」
全員が逃げようとした時、唯一の退路には、テニス部とサッカー部がいた。
テニス部とサッカー部は陸上部を相手にする訳ではなかったようだ。
テニス部とサッカー部が野球部の方へ突っ込んでいく。追撃してきていた野球部との戦闘になった。
「まだ終わってない..俺たちも行くぞ!」二十人足らずの陸上部も、二つの部活の援護に駆けつける。
野球部の清原には、三つの部活に攻められている事が伝えられた。
清原は、もうこの戦いに勝てない事を悟ったので、全員で将棋部の教室まで撤退する事を決めた。
「ピッチングマシーンはどうします!?」北西が声を張り上げて清原に質問する。
「もう持って行く余裕はない。くれてやれ..バットは持っておくように伝えろ。」
こうして、野球部・陸上部は完全に滅びてはいない物の、大打撃を受け、結果的にサッカー部とテニス部が得をする結果となった。グラウンドはサッカー部、テニス部、陸上部で三分割され、グラウンドの激戦は幕を下ろした。
(私立大近畿学園 二階グラウンド 地図)