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8話


                  8


 実は、聡と莉子が帰った後、残った二人は、何とも気恥ずかしい気持ちでいっぱいになり、黙って正座したまま向き合っていた。


 そんな状態が暫く続き、その現状を菜穂が打ち消す事をほのめかす。


「あの、拓海さん?」

 気まずい雰囲気の後、菜穂の言葉に正気になった拓海。

「なに?」

 返事をする事が出来た。 だが、菜穂が言い辛そうに語り始めた。


「怒らないできいてくださいね」

 そう前置きし、話始めた。


「実は、あの最初に来た明子さんも、この話は知っているの」

「な....」


 コレには拓海が驚いた。


「みんな、私のために応援するって言って、協力してくれていたの。 でね....、それでね.......」

 ここで言い留まってしまった。

 何かさらに言い難い事があるのだろう、それからの菜穂は、言葉が出にくいみたいだった。

 だが、こうなったら、最後まで事の顛末てんまつを聞きたい拓海なので、今度は優しく、促す様に菜穂に言う。


「もう気を悪くしないから、菜穂さ....、菜穂の知ってる事、全部話してくれ」

 いきなりの呼び捨てに、菜穂の面持ちが真っ赤になる。

「さあ言ってくれ、菜穂」


 二度も呼ばれ、黙っていたもう一つの事を、隠さず言うしかなかった。


「実は...、実はわたし....、家政婦じゃないんです」

 開いた口が塞がらない。


「え!?.......」


 間髪入れずに菜穂が。

「実は最初から、私は家政婦では無いんです」

「それって....」

「あなたに振り向いて欲しくって、ついてしまった嘘なんです。 私の事イヤになってしまうでしょうね?」

 次々と言われる、自分に対しての恋心のために仕組まれた事案に、拓海は今度は呆れてきた。 それでも、黙っている事が出来ず、言わなければいいものを、馬鹿正直に話す 菜穂の事が一層愛おしくなってしまう拓海だった。


「ありがとう、菜穂」

 この言葉に、今までの罪悪感が吹き飛ぶ菜穂。


「本当にありがとうな。 それって、オレの為だけにしてくれた事なんだよな。 それを思うと、何か....なにか嬉しいな。 怒るって気持ちなど、もうここまで来ると微塵もないかな。 ただずっと前から好感を抱いていた女の子が、こうしてオレの事に対して、してくれていたんだと思う事が、兎に角オレは嬉しいんだ。ありがとう菜穂、こんなオレを好きになってくれて」

「許してくれるの? 拓海さん。 こんなにあなたを蚊帳の外みたいにしてたのに」

「うーん、ここまで来ると、当然オレの親も一枚関わっているよね。 大丈夫、お怒りはそっちに向けるから」

「怒ってるんじゃないですか」

「怒ってない、菜穂には」

「ぐ....」

 また甘い言葉を掛けられた。

(この人はたぶん、私を甘えさせる事が上手いんだろうな) と、菜穂は思った。


「とにかく、もう隠し事は無いんだよな」

「うん....あ、はい」

「あはは、いいよタメ口で、オレ達同い年なんだからな」

「そうですね」

「また」

「あ、そうだね」

「うん、そんな感じだな」




 こんな感じで、二人の恋人関係が始まった。



             □ □ □



 後日談



 菜穂の会社の先輩OLの橋田 由香里だが、菜穂が退職した後、菜穂に対する高圧的な態度を一年もの間していた事がバレて、周りからの視線、SNSとの中傷で、菜穂が退職したその1か月後に、居たたまれなくなって自己都合退職したという。

 聡が言っていたが、本当は優しい性格だったのが、彼と別れた途端、不機嫌な態度が始まり、自暴自棄になってしまった由香里は、後輩にその腹いせを向けていたという、理不尽な会社業務を送ってしまったと、退社後、周りに謝っていたらしい。

 特に、菜穂には大変悪い事をしたと、菜穂の同期達には謝っていたと言う。


            ◇


 城崎家では、あの後、拓海が母親に対して、怒りをぶつけ、母 花果が、相当謝っていたという。 

 妹の見瑠々は。

「結果的に、菜穂さんとお付き合いが出来て良かったんだから、もうお母さんを許してあげて」

 と、カワイイ妹が言ってくるものだから、仕方なく許した。


          ◇


 それからの拓海だが、次の年、無事に大学を卒業。 しっかりと社会人をしているが、アパートの賃貸規約はそのままにして、会社にはそこから通っている。

 あれから菜穂とはいい関係で、順調に交際は続き、双方の両親にも会って、親公認の付き合いになった。

 

 菜穂はその後、拓海のアパートに移住して、いまでは同棲している。

 いずれは籍を入れる事も考えているが、今はドラッグストアでのアルバイトで、二人での生活の家計を助けている。


 菜穂の母親は、特に拓海の事が気にっており。

「孫の顔が見たい」

 などと、せっかちな言葉を発している。



 ドラッグストアで、偶然久しぶりに出会った 橋田 由香里が、働いている菜穂を見つけ、ひたすら店内で頭を下げ、事の謝罪をしている光景があった。

「もう終わった事ですから」

 と、必死に頭を上げて下さいと、由香里に向け菜穂が周りを見ながら言っていた。

 由香里の現在は、婚約している彼が居て、只今妊娠4ヶ月目だという、出来婚だ。

 しかも、今の住居が拓海と菜穂が済んいるアパートから、車で10分くらいの場所である事から、何故か今後も仲良くしたいと、懇願された。




「ただいま~」

「おかえりなさい、お風呂沸いてるわよ」

「分かった、ありがとう」


 午後8時前、会社から帰ると彼女が夕飯の支度をしながら、待っていてくれる。 拓海はこんな幸せな日々が自分に訪れるなんて、思いもしなかった。

 カワイイ彼女のつくるご飯は、とても美味しく、一緒に食べる幸せを感じている、昨今だ。


 二人は結婚に向け、今は貯蓄の最中だ。


 最近は同棲に慣れてきて、このまま実際に夫婦になると、こんな感じで生活するんだと、二人は。実感している。


 結婚まであと2ヶ月。 家政婦から妻にするために 色々あったが、どうやら今の社会人3年目で、夫婦になる事に、不服などは一切ない。

 むしろ菜穂と一緒になれる事に、さらなる期待がこみ上げてきて、これからの人生が、とても楽しみに思えてならない拓海だった。



          □



 あとがき





 相変わらずの“出たとこ勝負”の内容で、すみません。でも、最後は何となく辻褄を無理やり合わせました。なので 「あれ?」 と思う箇所が多々あるとは思いますが、誤字脱字ともに、お許しください。


 この小説はこれで完結になります。 また次回は以前投稿した“結婚したい”の先輩OLの話を予定しています。


とにかく、最後までお読み下さり、ありがとうございました。



   雅也





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