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6話


                 6


 外に出ていた拓海と聡、近所のコンビニのフードコートで話をしている時に、莉子からの連絡が来た。


『あ。もしもし。 拓海、今近く?』

「あぁ莉子、いま、近くのコンビニに居るが」

『あのね、OKだから、戻って来て、すぐね』

「うん、分かった」


 それだけ言うと、莉子は電話を切った。

「なんでオレ?、聡に連絡来ると思ってたのに」

「ま、お前の事情なんだからな、お前に電話するわな」

「そんなもんか」

「莉子はそんな女だ」

「気遣い出来た、いい女だな。聡、お前幸せもんだ」

「ありがと、褒め言葉として聞いとくわ」

「ホント、良い友達だ、お前らは」

「じゃ行こうぜ、拓海」

「そ...だな」


 コンビニを出て、100mも離れていない拓海のアパートに帰っいく二人だった。



                △



「ただいま」

 自分のアパートに帰って来て、この言葉を言うのは何か可笑しい気がするが、いまはコレでいい。


「おかえり。 早かったね、で、こっちは話付いたから」

「?」

「何ポカンとしてるんだよ」

「そうよ、拓海あなたの事なのに」

「........」

「ま、いいわ、じゃ、これから本題に入るわね」

 莉子はそう言ってから、キッチンに居る菜穂を呼んできた。


 莉子に連れて来られた菜穂は、何か頬がすこし桜色に見える。



「さ~てと。 みんな座って」

 そう言って全員を座らせて、話を始める莉子。


「話はまとまったみらいだな、莉子」

「そうね、やっと気が付いてくれたみたい」


「?」


「なに? 不思議そうな顔色ね」

 この二人は何を言っているんだと思い、つい不思議そうな表情をしてしまったらしい拓海だった。


「結果から言うけど........、あなた達、とりあえず、 付き合ってみたら?」


「「???」」

 拓海と菜穂は、何が始まったかと思う程、不思議な面持ちだった。

「何言ってるんだ? 莉子」


 ヘン! と言いそうな顔つきで、言い返して来た莉子だった。

「何て言うか....、温度差が丁度いい二人だなって思ったの。 だから、二人で居る時だって、菜穂さんは拓海に対して、何も違和感なく、色んな話が出来たんだと思うの。 拓海だって、一緒だと思うわ」

「そうなのか? オレ達って」

「う~~ん、実際には若干違う経緯だと思うけど、傷を嘗め合うには、丁度いい湯加減だと思ってたの」

「意図がさっぱり分からんが....」





 拓海は大学1年の時に、一度だけ恋人がいた時期があった。

 だが、付き合っていたにもかかわらず、拓海が趣味を優先にしてしまったため、半年もたたないうちに、フラれると言う、自業自得な恋愛事情があった。


 一方菜穂は、OL時代の先輩のパワハラに合い、その溜まりに溜まった怒りの矛先を、当時付き合っていた彼氏に向けてしまい、これまたフラれるという、今になっては思い出になっているが、当時の菜穂にしては、結構な精神的なダメージがあった恋愛事情を持っている。



「う~~ん....、まあ、取りあえず、友達からってのはどうだ?」

 一瞬で拓海が呆れ顔をした。


「中学生か? 友達から始めようなんて」

「良いじゃないか、学生に戻ったみたいで」

「でも見て見ろよ、菜穂さん、呆気にとられた表情だぞ」

 

 そうなのだ、菜穂を置いてけぼりにして、会話が進んでいたので、聞いていた菜穂が、呆れ顔になっていた。


「で、肝心の菜穂さん、どう思う?」

 莉子が顔色を見て、伺う様に菜穂に聞いてみた。


「今までも、早く家事が終わったら、残った時間は拓海さんとお話ししていたので、友達からってのは、もうすでにそうじゃないかと....」

(あれ?、菜穂さん。 オレの事を友人だと思っていてくれてたんだ)と、拓海は何だか嬉しい気分になった。


「じゃあさ、菜穂さん、拓海と、連絡先交換してあげて」

「「あ!」」

 拓海と菜穂が、同時に “あ” が出た。

「うん? 、どうしたの?、なんか不味い事でもあるの?」

「い、いや....」

 拓海は躊躇した。....、が、それを莉子が見逃さなかった。

「なぁに? 拓海、 もしかしてあなた達、もうすでに、交換してるとか?」

「........」

 無言の拓海と菜穂。 それを見て、確信した莉子が。


「はっはーん。 そう言う事か」

 訳の分からないと言った顔つきの聡に向かって、莉子は。

「この二人、すでに連絡先は交換していると言う事みたいよ、聡」


「「!!」」


 驚愕の表情をする、拓海と菜穂。

「おい、どう言う事だ拓海」


「ムムム....」

 さらに、菜穂にも聞いてみる聡。

「菜穂さん、どう言う事か説明してくれる?」

 すると以外にも、すんなりと答えた。


「だって、連絡先って知らないと困りますから」

「?」

「えーっと....、拓海さんが在宅でない場合、部屋の住人の許可を得てからでないと、入れないですから」

「それも契約になってるの?」

「私が居るところは、そうしているんです」

「なるほど....、で、拓海の連絡先を知っている訳だ」

「そうです」


 言われたら当り前だ。 契約者との番号交換はしておかないと、都合が悪い事がある、が....。


「ですが、この携帯は業務用なので、個人のスマホでは無いんです」

「あ」

「それはそうよね。 女の子の電話番号って、そう簡単には教えられないから」

「はい」


 ちょっとガッカリする拓海。 それを見逃さなかった莉子が、さらに掘り下げてきた。

「この際、菜穂さんの個人の連絡先も教えてもらったら? 拓海........、良いでしょ? 菜穂さん」

「え?....そ....」

 コレには菜穂がビックリした。

「拓海の事、信じられない?」

「そんな事は無いのですが...」

 歯切れが悪い菜穂。

「じゃあ、いいじゃない?」

「でも....」


 全く話に進展がない。


 だがそこで、拓海が菜穂に聞いてみた。


「オレ、もしかして、菜穂さんの事に好意を持っているかも」


 拓海からの、突然の爆弾発言だ。

「拓海さん....」

「聞いて、菜穂さん」

 菜穂の言葉を止め、拓海が決意をした様に話し始めた。



             △



 実は、拓海と菜穂は、この家政婦での出会いが初めてでは無かったのだ。


 拓海は小さい頃に通っていた柔道場へは、妹の見瑠々と一緒に通っていた。 その時に、同じ年くらいで、歯切れのよい良い練習をしていたのが、同じ道場の門下生の菜穂だったのだ。

 ほぼ同時期に習い出し、一緒に妹と共に練習をしていたので。菜穂もこの兄妹と一緒に練習と言う事が多かった。

拓海は中学2年まで通っていたが、中学3年になると、受験で忙しくなり、道場を辞めた。

 引き続き妹の見瑠々は通っていたが、その事で、その後の道場の内容を知ることが出来た。


 拓海が道場を去った後も菜穂は通い続けたが、この頃から、練習に覇気が薄れていたようだと、見瑠々が拓海に言っていた。


 その後、拓海は、第一志望の高校・大学と進んだのだが、この大学の在学中、ココでも菜穂とは会っていたのだった。

 学部は違うが、時々にキャンパス・学食などですれ違っていたのだが、菜穂は。

『あ!、あの人は、確か、柔道場に通っていた男の子だ』

 と、認識はしていた。


 一方の拓海は、大学2年から、彼女が出来ていて、順調だった交際も、1年半後に、彼女の浮気で別れた。

 その姿を、顔見知りと言う意識で、学内で遠目に見ていた菜穂は、やはり道場に居た <男の子> と言う事で、何処か別な意識の感じ方をしていて、その後、彼女と別れた、と言う事が、見るからに分かる程に落ち込んで、友人に慰められている姿も見ていた。


 一方の菜穂は、高校2年生の時に、彼氏が出来、交際期間は卒業までだった。 

 お互いが、遠い大学に進学したために、双方の事を考えて、4年間遠距離になるなら、ココで円満に分れる事をお互いに、了承したのだった。



                 △



「菜穂さんって、オレが間違って無かったら、小学校の時から柔道場に通って無かった?」

 この拓海から菜穂に対する質問に、驚いた。

(拓海さんも知っていたんだ) そう思った。

 拓海は続ける。


「菜穂さんって、ほぼ俺と一緒の時期に、小学校から青木柔道場に通っていたよね、オレと一緒の 月・水・金 で」

「........はい」

 菜穂が渋い返事をし、それを見て、(あぁ、分かってたんだ) と拓海は認識した。








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