2話
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夕食時に、城崎家の夫婦は拓海の私生活の事を話し合っていた。
「先日もやっぱり部屋が片付いていなくって、約一時間と言う手間を取られたわ」
この意見に、父の雄二が夕方の様な事を言う。
「花果。 やはりコレは君の友人の弓子に頼るしかないかな....」
「そうね....」
コレには、拓海もさすがに意見具申をする。
「おばさんトコの人を入れるの?....、な、何か恥ずかしいよ、それ」
花果の友人で、森永 弓子は現在 家政婦紹介所を
立ち上げていて、5人の女性にお願いして、日中、色んな所に派遣して、家庭の忙しい主婦などの代わりに、家事一切の援助をしている。
「仕方ないだろ、2週間放っておけば....、って、考えたくないな」
「本当よ。もう! なんで拓海って片付け下手なんでしょうね?、それにね、来月からは、私の父親の病院通いが始まるから、今までの様に、拓海の部屋へ出向く事が出来難くなるの、だから、弓子に頼もうって、お父さんも、賛成してくれているの、だからあなたに決定権はないのよ、分かる?」
一気に言われ、何も言えない拓海。
母親の意見を聞いて、見瑠々も言い出す。
「コレはやっぱり、弓子おばさんにひと肌脱いでもらうしかないよね、お母さん」
「そうね、今から弓子に連絡してみるわ」
そう言い、花果はスマホを手にし、リビングの端に行き、連絡し始めた。
「お兄ちゃん、今年から4回生でしょ。 今年からは、バイトしていても、もう殆ど時間が余ってくるんだから、その時間で、もう少し部屋奇麗にしたら?、どうせ来年からも、そこの部屋から会社に行くんでしょ?」
拓海は就職内定が決まっている。
「そのつもりだ」
「だったら、今からでも自分なりに、部屋の片づけをしていった方が、自分が気持ちよく暮らせると思うから」
「そうだな。 いくら何でも、午後7時くらいには、部屋に帰れるとは、会社の先輩が言ってたから、少しは以前よりもきれいになるかな?」
「なに? その言い方。 他人事みたいじゃない、コレは多分ダメだな~....、今までと変わらないわね、きっと....」
「はは........」
それっきり、拓海は言葉が出なくなった。
なんだか、先日から、自分のアパートで部屋の事で、言われ放題だと思いながら、少しは反省する拓海だった。
それから、電話をかけ終わった母親の花果は、決めつける様に言ってきた。
「毎週金曜日に、2時間くらい来てくれる人が見つかったわ。拓海、いいわね、初日のその時には私と部屋に居る事にしておいたから、時間は午前9時から2時間が、その家政婦さんの空き時間だから、いいわね」
こりゃ大変だ。 いくら片づけをしてくれる家政婦さんでも、いきなりあの部屋を見たら大変だと思い、さすがの拓海もその日は早めに起きて、多少なりとも、家政婦が来るまで、多少でも片付けようと思った。
◇
当日、拓海は早めに起き、少しでも片づけをしておき、母親が9時前には来ると言っていたので、準備をしていた。
ドアのチャイムが鳴り、予定通りに9時前と言うよりも、8時半過ぎに母親の花果が来た。 家政婦の初日なので、親としての挨拶をしておこうと、少し早めに来て、部屋の具合を見た。
「あら、結構奇麗じゃないの」
「ま、まあね....」
少し悟った花果が。
「はっは~ん。 さては昨日か今朝早くに、片付けたのかな?、た、く、み、くん」
タジッとした、拓海の態度に。
「やっぱね、図星だったかな?」
な~んて言ってるうちに、ピ~ンポ~ン....と、チャイムが鳴った。
「「来た!」」
ふたりが同時に言うと、花果が玄関に出た。
すると、50歳くらいの背の高い(見た目 165cmくらい)スレンダーな女性が、花果と一緒に親し気に喋りながら入って来た。 どうやら、母親と面識があるようだ。
「おはようございます。 今日からココの部屋を担当させていただきます、家政婦の 中 明子です。よろしくお願いいたします」
と、拓海に向かって言われたので、拓海も。
「あ、はい、これからよろしくお願いします」
すると、が花果が。
「拓海、取りあえず手続きは済んいるから、いきなり手伝ってもらえるからね」
そう言うと、早速、手荷物の中から、掃除のグッズが出てきた。
「では、始めてまいりますから、分別したいものがあったら、言ってくださいね」
そう言って、始め出し、見事にテキパキと、動きに無駄が無く進行して行く姿に、 さすがプロフェッショナルと、花果と拓海は 感心した。
△
小一時間もすると、今までとは見違えるほどの部屋に変わっていた。
「へ~.....、プロがやると、こうなるんだ~」
拓海が感心した。
「明子さん、さすがに弓子のトコで、NO.1 だけの事はあるわ~。短時間で見違えたわ~」
「ありがとうございます」
明子がお礼を言い、続けて。
「食事の支度はどうされます?」
そう言えば、契約は一回2時間と言う事なので、残りの1時間を、食事のための作り置きをしてもらう事にした。
「では、冷蔵庫を見させていただきますね」
「はいどうぞ」
拓海が言うと、明子が冷蔵庫の扉を開けて、中身を一度見渡す。 すると。
「コレは一度、食材の買い出しに行かないと、まずいです」
弓子がそう言うと、好き嫌いはあるか? と聞かれたので、ぶ厚い肉がダメだけと言うと、分かったと言い、母の花果から、何やら茶封筒を渡されて、徒歩3分のスーパーに向かった。
△
11時近くになり、作り置きの食事を、タッパーに幾つか入れておいてくれた明子が、そろそろ時間と言うので、帰り支度をした。
「時間になりましたので、私はこれで失礼しますね、次回も一緒でいいですか?」
と尋ねられたので、母親が。
「はい、次回からよろしくお願いします」
と言い、明子は丁寧に挨拶を二人に言い、次の訪問先に向かった。
「ねえ、さすがプロね。 無駄がないわ、しかも、手早いし、奇麗だわ」
2時間と言う短い時間なのに、これまでの拓海の部屋とは打って変わって、見違えるほどの部屋になった。
「すごいな~....」
ただ、一言しか出なかった拓海だった。
「じゃあ私もこれで行くわね、拓海。 来週から同じパターンで、明子さんには来てもらうから、あなたが応対して頂戴ね。 それと、3回目からは、合鍵も渡していいと思うわ、家政婦って、信用がないと出来ない職業だから、大丈夫よ」
「ま、そうだよな。 オレが大学に行く時と時間が重なったら、部屋に入れないもんな。家政婦って、信用と、口が堅く無けりゃ、続けられないよな、納得したよ」
玄関先で花果が。
「じゃあ、そう言う事で、私 午後から父の予約の診察に一緒に行かないといけないから、来週から頼むわよ、じゃあね」
そう言って、花果は拓海のアパートを後にした。
こうして、これから毎週一回、家政婦にお世話になる、拓海だった。
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この小説をお読み下さっている方々、ありがとうございます。
相変わらず、乏しい語彙力と表現力にお付き合いして頂き重ねて、感謝しています。
まだ始まったばかりのこの小説ですが、全8話ですので、気楽に読み捨ててください。
出来れば最終話までお付き合いして頂くと嬉しいです。
雅也