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1_05話

誰が予想しただろう。この展開。

side:ライニー・フォン・シュベルトヒルト



リデオーラ王立学園を卒業したために寮すら戻ることができない私はロンさんが帰ってくるのをギルド内で待っていた。学園は優秀なほどいい部屋が貰うことができ、私の弟が学年で勉学トップという、姉の鼻が高くなるほど優秀であるためにまとめて部屋ごと押し付けた。1人住まいにしてはかなり広い部屋なのでありがたいだろう、と聞いたところ、ありがた迷惑だと言われたために、実力行使で押し付けたのだけれど、きっと日が経てば私に感謝するに違いない。去り際に『ノウキンッ!』なんて言われたけれど、学園へ納めるお金は十二分に納めているから問題ない。もしろ、弟の分も私が払っておいたからまったくもって問題ない。感謝してくれないのはなんでだろう?


ちなみに、服とか私物とか、冒険に全く必要ないものは実家に送ってある。私が貴族とは言え郷爵という下から2番目の立場とはいえ、資金に困っていることはないと思うけれど、せっかくなので、領地を発展させるためのお金にでも当てて欲しい、という旨を含めていくつもの魂澱種からの採取品を含めてお金になるものを一緒に送った。家には私より下の女性がいないから、服とかは邪魔かもしれないから配慮して送ったのだ。なぜだか『はた迷惑だ!』とか夢で言われたけれど、夢だから違うと思う。どのみち、冒険に出る前には実家に帰るつもりだからそのときでも感謝の言葉は聞くとしよう。


なんてことも思いつつ、ジュース片手にロンさんが帰ってくるのを待っていると、夜の9時頃にギルドにやって来た。日はどっぷり沈んではいるけれど、冒険者としては9時は早いほう・・・とも言えないか。暗闇での移動は危険が伴うから、ベテラン冒険者でもよっぽどのことがない限り行わない。


「ロンさんお帰りー」

「おう、ただいま。待ってたのか?」

「そりゃあ、相棒ですから♪」


今日中に冒険者になれたこと言いたかった、というのが本音だけれど。


とはいえ、半年前に受けた冒険者試験で合格をもらっているのはロンさんも知っており、いまさら、喜ぶことでもないからわざわざ言う必要はないかもしれない。むしろ、冒険者になれたことを報告して一人舞い上がっていたら、それはそれで恥ずかしくなかろうか?


・・・考えなしだな私!?


「ちょっと待っててくれ。依頼の報告してくるから」


そう言ってロンさんは剣以外の荷物を私の目の前の机に置いて受付へ。私は2人で対面できる円形のテーブルでそのまま待ちつつ、ビールを頼んでおく。このギルド特有で冒険者専用酒場と化しており、商業ギルドなの稼ぎ所となっており、商業ギルド員がウェイターを行っている。冒険者は体調管理も自己責任であるために、年齢に関してはとやかく言われることはないけれど、本来であっても、アルコールは15歳以上であれば飲めるから問題ない。飲み過ぎなければいいのだ。


「おっ?ビール頼んでくれたのか?」

「いつも依頼終わりに飲んでるの知ってるしね。後、私の冒険者記念」

「自分で言うのな。まぁ、おめでとさん」

「ありがとさん♪」


カーン、とジョッキを合わせて一口飲む。


「で、最初はソロの状態で動くのか?ソロっつっても、俺も付き合うけどな」

「それもいいかもしれないけど、私としては最初からクラン作りたいかな?私とロンさん以外に後2人は欲しいかなぁ?私たち前衛だし。将来を見据えて動いてこうよ」

「そうだな。司令塔的存在も欲しいよな。俺もライニーもどっちかっつーと、その場のノリでやってくタイプだしな。特にライニー」

「あっはっはっ!否定できないのは確かだけなんとなく馬鹿にされている気がするのは気のせい?」

「考えなしに動くことは認めてるんだな」

「さっき否定できないって言ったよね!?」


というか、闘いに関してはノリでやった方が上手くいくのだからいいと思う。勝てるとは限らないけれど、頭で考えるよりもすんなり動けるのだから・・・うん。これからもそれでいいと思う。


「遺跡に潜るならなおのこと、頭脳担当の奴はいるからな?お前が言ってるのは単なる攻撃的意味合いの後衛だろ?」

「回復役の意味合いも込めてるよ?」

「とりあえず闘いから離れろ戦闘狂。とりあえず、頭脳系をクランに入れるのは確定な?さらに言えば、こんなことになると思って既に声はかけてある。明日そいつのところに行く約束もしてあるから、明日予定空けとけよ?」


おお!さすが先輩冒険者!ロンさんの先読みと行動力が凄すぎる!


「元々何も予定なんてないよ。さらに言えば今晩から泊まるところすらない」

「・・・どうせ俺のとこに泊まる気だったんだろ?それも読めてるよ」


ロンさんがため息混じりにそう言った。それに内心ガッツポーズを取るのは2重の意味。寝床の確保とロンさんとまた(・・)一緒に寝れるからだ。


6歳で初めてあってから、魄気や幻素の使い方をいろいろと教えてもらい、さらには、自分との向き合い方まで学ばせてもらった。ロンさんは『お互い様』だと言うけれど、私としてはアドバイスをしたわけでもなく、ロンさんと喋っているうちに思ったことを口にしただけでなのだ。


『何を考えたところで行動しなければ意味がない。なら、打算的に動くのではなく、自分が納得できるまで動き続ければいい。失敗すればそれを反省としてやり直せばいい。将来に対する恐怖よりも今を全力に生きよう』


体内に目一杯まで溜まる幻素と()のことなど気にせず産み出される魄気。それによって起こる人体爆発に怯えて寝れなかった日々は、魄気や幻素の発散に毎回体が壊れる思いをしていた日々は、ロンさんと出会い、語り合い、生き方を定められたから乗り越えられたと言っても過言でもない。


どんな先生に習っても魄気や幻素よ制御方法が身に付かなかったのに、ロンさんに教えてもらって身に付いたのも何かの縁があったということだろう。まるで、ロンさんに(・・・・・)出会わなければ(・・・・・・・)死んで(・・・)しまった(・・・・)方が(・・)マシな(・・・)人生になる(・・・・・)、なんて世界に決められているかのようだ。まっ、ロンさん好きな今の私には一切関係ないけどね。


ちなみに、ロンさんと話しているうちに、厳密には魄気や幻素の制御方法を学び、失った左目の代わりに高性能な義眼をプレゼントしてもらった辺りから、意識し始め、自分が意識していると気づいた瞬間にロンさんが好きなのだわかった私は、その日からロンさんと一緒に寝れるときはベッドに潜り込んでいた。もちろん、家が離れているから私かロンさんがどちらかの家に行ったときだけだし、寝るのもイヤらしい意味でもなく純粋にロンさんの側で寝たら落ち着けたからというのもある。義眼のお陰で寝てる間に爆発現象起こすこともなくなったし。


そんな生活を学園に入学するまで続け、それから6年間もお預けを食らっていたのだ。再び一緒に寝れる機会を逃す私ではない。


「まったく。お互いにいい年なんだから、もう少し考えてだな」


むぅ。ロンさんのその『お子様だなぁ』って態度にイラッとくる。もういっそうのこと告ってみようかな?冒険者になった、という区切りがいい機会ではあるし。


・・・言ってしまおう。なんとなく、一部の者共が、厳密には先週にも見たような顔の奴等が同じようにニヤケているけれど、そんな外野は道端の枯れ葉だとでも思っておくとして、






「そこは私の気持ちに気づいてくれてると思うけど?ずっと前からロンさんのことを愛しているからの行動だよ?」






あ~、顔が熱いなあ!


「「「言ったああああ!」」」


うるさいっ!


そんな喧しい連中をロンさんさんは少し顔を赤くしながら無視しつつ、






「先に言うなよ。俺は部屋で誰も聞いてないところで言おうとしたってのに」





そう返事が返ってきた。その返事に私の顔はさらに熱くなるし、嬉しすぎて涙が浮かぶけれど、そんなのも無視して椅子から立ち上がって、机を飛び越える。


「「「両想いだあああああ」」」




「「これからもよろしく!」」


喧しい祝福を受けながら唇を合わせたのは言うまでもない。


ってことで、ライニーとロイマンは恋人同士です。


冒険始まってねぇのになっ!

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