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1-04話

ようやくスタートライン。


side:ライニー・フォン・シュベルトヒルト



ギルドに顔を出して一週間後。ルクオン支部の擁護もあってリデオーラ王立学園を卒業できた私は冒険者登録のためにルクオン支部総合ギルドを訪れていた。卒業認定証を貰うのに時間がかかっために来る時間が予予定より遅れてしまい、ほとんどの人が出掛けているというお昼真っ只中の時間に、現在私は総合ギルドを訪れている。ギルド内は閑散としており知り合いの冒険者はいなかった。というか、見ない顔しかなかった。


「ヘミーさん、こんにちは」

「こんにちは、ライニーちゃん。ロイマンなら朝に日帰りの依頼を受けてたわよ?」

「知ってます。昨日聞いてたので。今日は冒険者登録に来ました」


冒険ギルドの受付にいる顔馴染み、ヘミー・モーヴィスさんと挨拶を交わし、さらに、ここに来た目的を伝える。怪我が治ったら登録しにくる旨は伝えていたためか、ヘミーさんは「でしょうね」と言いながら、手元の引き出しから一枚の紙を私に差し出してくる。


「ライニーちゃんは半年前に試験には受かってるし、ギルドにもその記録が残っているからこの紙に必要事項を記入してくれるだけでいいわ」

「はーい」


そう言われ紙に記入していく。冒険者という職業自体、一人前の大人として扱われるため、16歳という子供の身でも保護者に関して記入欄はない。よく貴族が「僕の親がうんたらかんたら」いうことがあるけれど、ギルドに対してはほとんどその意味を成さない。権力に負けるギルド長がいない、なんて奇麗事が言えないのが世の中の悲しいところだけれど、ほとんどのギルドは「あ、そう。それで?」で終わりである。良くも悪くも全てのギルドは実力社会なのだ。


故に、冒険ギルドの受付で既に合格をもらって書類に記入している者がいて、それにいちゃもんをつけて喧嘩を売るようなやからがいたら、それは世間知らずの馬鹿であり、冒険者試験をもう一度受け直すように言われてもおかしくない阿呆なのだ。


もっとも、ルクオン支部、リデオーラ王国内における最大ギルドでそのような些細なことなど起こるはずもなく、私は至って普通に記入を終えた。まぁ、後ろでは『あれがこの支部名物の』だとか『戦闘狂美少女かぁ』とか『噂以上に美人なだけに残念だっ!』とか『つまりは狂ってるのも噂以上かっ!』とかとかとかっ!聞こえてくるけど一旦無視する。知らない顔だしねっ!


登録が終わったら挨拶して噂の真相を聞くのは確定だけど(怒)


「はい、オーケー。これでライニーちゃんも晴れて冒険者になったわけだけど、冒険者の仕事について聞いとく?いろいろ聞いてるとは思うけど?」

「聞きますよ。知らないことがあるかもしれないじゃないですか」

「うんうん、優秀な子は大好きだよ。冒険者のイロハも知らずに突っ走る人がいるからねぇ。んじゃ、Aの小部屋に行っててくれない?渡すもの準備してからら行くから。キルリーア!窓口変わってー!」


ヘミーさんが受付奥の部屋に向かって声をあげているのを視界の端に捕らえつつ、私は言われた部屋に向かう。受付から離れて2階に昇る階段へ。階段を上った廊下の右すぐにAの小部屋がある。ドアが空いていたのでそのまま入る。8人分の椅子がある、その部屋は、私が半年前に試験の後、面接を受けた部屋だ。面接というか説教か?試験は『自分より強い敵に対しいかに対応するか』という模擬戦だったのだけれど、私は嬉々として、アゼルド先生との試験のように持てる全力、全身全霊にぶつかった。あまりに相手が強すぎて思わず笑ったのは不味かったのだろう。自分を鼓舞する意味も込めて笑ったのだけれど、戦いの最中だというのに、相手が引いていたのに気づいていたし、試験後の面接(説教)でも『ああいう風に笑うのはどうか』などと言われた。


反省はしなかったけどねっ!


そんな思い出を思い出しつつ、ついでにあの時の試験相手といい、アゼルド先生といい、闘いがいのある人たちがいっぱいだなぁとニヤケつつ待っていると、ヘミーさんがやって来た。


「ライニーちゃん、お待・・・恐いからその笑みヤメテ。お姉さん、食べられちゃう」


恐いとは失礼な、と思いつつ回想をやめる。


「食べませんよー。ヘミーさんも変なことを言いますね」

「私の反応が普通なの。変なのはライニーちゃんの頭ね。まっ、それは置いておいて、まずはこれね」


私の頭の問題を失礼なことに挙げておきながら、ヘミーさんは私の前に来て、青色をした小型の懐中時計のようなものを渡してくる。大きさ的には手で握れるぐらい。開いてみると、中には私の名前と“登録:リデオーラ王国ルクオン支部”、“クラン:未定”、“Eランク”の文字。


「それが冒険者の証と同時に冒険ギルドに所属してることの証明にもなるからなくさないでね。あと、クランに入ったり、作ったらそれも書き込む必要があるからまた言ってね。ちなみに、前の試験の後に血をもらったでしょ?あれでその証明機の個人登録も先にしちゃったから。確認のために、その文字盤の上に血を垂らしてみて」


ヘミーさんに言われた通り、親指を少し歯で切って血を出し、文字盤の上につけてみる。すると、証、証明機全体が白く輝いた。その光の綺麗さに見とれつつ、親指は魄気を流して自己治癒力を無理やり上げて塞いでしまう。


「白く光ったら本人であることを示して、黒く光ったら本人じゃないことを示すのよ。光らなかったら故障してるから、その時は最寄りのギルドに修理してもらってね。世界共通だから。壊れたからって自分で弄ったら違法だから忘れないでね」

「自分で直せるほどの技術なんてないですけどね。ちなみに、これって頑丈なんですか?」

「そりゃあ、普段から持ち歩く物だからね。証明機自体が頑丈だし、強化の刻印も見えないところに刻んでるからよっぽどのことがない限り壊れないわよ」


・・・なるほど。後でオモイッキリ試し斬りしてもいいかな?


「・・・わざと壊したら多額の修理費を払わせるわよ?」

「ヤダナー。ナニモシナイデスヨー」

「本当かしら?」


試し斬りは他の人のでやろう。


「で、次は冒険者の仕事のついてね。ライニーちゃんならロイマンたちから聞いてるとは思うけど、大きく分けて仕事は3種類。1つは掲示板の依頼書から受けること。護衛やら採取、討伐とか様々ね。基本的にはどのランクのも受けれるけど、そこは受ける人の自己責任。難易度の高いのを受けた方がランクは上がりやすいけど、その分の危険度は高いから。難易度もギルドが管理してる情報とか経験者から判断してるものだから、絶対じゃないことは理解してちょうだいね」

「まぁ、ランクなんて人が決めたものですもんね。もしろ、自分で調べてこそ冒険者って、気はしてますけど」

「みんながそうであればこっちも楽なんだけどねぇ。ほら、冒険者ってあれじゃない」

「これから冒険者になる人に訪ねることじゃあないですよね!?」


なんとも常識外れの受付である。でも、私はそんな彼女の対応が好きだから笑いながらツッコムだけに留まる。ええ。例え、ロンさんを狙うライバルだとしても私は笑って済ます。なぜって?正々堂々真っ正面からぶつかってロンさんに好きだと言わせてこそ、私は満足できるのだから。もちろん、前に密かに話していたのを気にならなくもない。嫉妬ぐらいはさせて欲しい。


「2つ目は冒険者に直接依頼があった場合。ギルド経由でクラン、または冒険者に指名があった場合は、ある程度落ち着く形には持っていくけど、ギルドを介さず直接あった場合にはギルドは面倒の一切を見ないから。まぁ、ギルドの手数料を渋る人はいるから気を付けてね」

「はいはい。ロンさんの知り合いがそれで苦労したのは聞いていますよ」

「最近だったら《鉄甲拳軍》かな?報酬額が違うって揉めてたと思うけど、一応は決着ついたんだっけ?まぁ、とにかく気をつけてってこと」


誓約書とか書かないと結構揉めるらしい。件の《鉄甲拳軍》はその誓約書をなくしたからややこしいことになったらしく、つまり、非がクランにあったようだった。報酬を貰うどころか賠償金を求められた、とかで赤字らしい。


「3つ目は、依頼とか関係なく魂澱種を狩ってきた場合。これに関しては、証拠を持ってきたら、討伐報酬という形でいくらか渡せるわ。あと、魂澱種から採取した物の買い取りもするけれど、それは商業ギルドの窓口にお願いね。討伐報酬に関しては決まった部位を提示してもらって、こっちが確証を得ればそれで問題ないから」


私がお世話になるのはこっちのパターンが多いかもしれない。そこはロンさんやクランを組む人たちとの相談にはなるけれど、私の一番の目的は未知を求めた冒険であり、神秘への探求だ。だからこそ、依頼を受けずに遭遇した魂澱種を狩って資金にする、という手になるとは思う。まっ、先立つものが今はないから考えものだけど。


「以上が冒険者もしての基本的な仕事かな?遺跡に関してはギルドも国との兼ね合いがあるから大きくは言えないけど、遺跡内の物品は物理的にも社会的にも危険なものがあるから気をつけること。これぐらいかな?後は、ロイマンとか先輩冒険者に聞くこと。暴走しないこと。わかった?」

「最後以外わかりました!」

「最後こそわかってほしいんだけど!?」


とりあえず、こうして私は晴れて冒険者になれたのであった。


ロンさんが帰ってきたら早速クランの話をしようっと。



ギルドランク。

上から順に、X、S、A、B、C、D、E。

失格者はFとなる。

さらに悪くなると登録抹消。2度とギルドを利用できません。

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