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0_04話

ライニー・フォン・シュベルトヒルト

  VS

アゼルド・レック

3話目

side:アゼルド・レック



(楽しそうだね、アゼ君)


ああ、楽しいね。こんな機会は二度とないと思っていたからな!


俺の身体に宿った昔馴染みの守護霊、“蒼天の百獣王”レグスターが嬉しそうに言ってきたから、俺は正直なままに言葉を返す。


10年前まで、俺は冒険者とし世界各地を放浪していた。世界中に点在する冒険者ギルドにも所属していて、クランの名は《ディープレッド》。世界に10もないSランククランの特攻隊長として名を馳せていた。レグスターを身体に宿す【降霊魄式】を使って戦えば敵無しだったのだ。


その俺が冒険者をやめることになったのは仲間の裏切りだった。そいつ曰く、俺は目の上のたんこぶだったらしい。どんなに鍛えても強くなっても、先の先にいる俺に追い付けない。俺とそいつは《ディープレッド》立ち上げ時の初期メンバーで、だからこそもどかしかったのだろう。そこで、そいつは思ったのだろう。


追い付けないなら、引き摺り落とせばよい、と。


そいつの策略は成就し、俺は戦闘員としては致命的な“呪い”を受けた。戦闘時間が長くなるほど弱体化する呪いだった。 さらに、それは本気になればなるほど、全力を出せば出すほどに加速度的に弱体化してしまう呪いだったのだ。一撃で終わらせてしまえば問題ないかもしれないし、戦闘後に時間を置けば弱体化前まで戻るのだが、冒険者のように戦い続ける可能性がある職業ではそんな余裕があるとは限らず、冒険者として続けるのは無理だった。俺はクランを去り、冒険時代の伝を頼って、リデオーラ王立学園で冒険者の知識を教える立場になった。学生相手ならば本気を出すことはないし、付近の魂澱種は冒険者によって駆逐されているために結構安全だ。つまり、呪いの影響はほとんどなかった。


その代償として失ったのは冒険者時代の満足感。全力を出す場面が与えられず、ただ教えるだけ。腐っていく自分の技量に虚無感を覚えていた。


そんな長い時間の中、生徒らしかぬ実力者がやって来たのだ。俺の守護霊であるレグスターが使う幻法による影の腕で簡単に降参してくる生徒ではなく、こちらを出し抜いてこようと自身の限界をかけるほどの生徒が。しかも、その生徒は影の腕に対し、真っ向から対峙してきたのだ。


詠唱省略。

即興詠唱。

術名破棄。


一流の冒険者並みの魄式の技量を見せられれば、それに見会うだけの戦闘ができれば、それはもう生徒などとは思えない。


「元冒険者として楽しませてもらうぞ!」

「こんにゃろ!」


降り下ろした三本の刀をギリギリで避けたライニー6回生に告げながら、さらに腕を振るい続ける。振るう速さは現役を退いていても一学生には反応できないそれだが、ライニー6回生は離れることなく、片手の剣だけで捌いて対応してきた。つまり、まだこの速度では緩い(・・)ということか。ああ、益々面白い!


レグスター、ギアを上げようか!


(後先考えなしだね、アゼ君。後でしんどいって言ってもしらないからね?)


後のことは後で考える。今はこの一瞬を楽しむのみ!


「はははっ!」


レグスターとの接続率が高まり、より獣らしい気配を纏う。それと同時に、刀は魄気を纏ってより鋭く、身体は百獣王の強化が増していく。


「さらにっ!?」


ライニー6回生は俺が速度をさらに上げたことに驚き、しかし、魄式の追加をする様子はなかった。全身からは激しい帯電が零れており、既に限界まで強化していることは分かっていた。


だから、俺は彼女の真価を試させてもらおうと思った。それ以上、速度をあげられないなら、いや、上げられたとしても同じように俺も速度を上げることができる。つまり、速度以外の要因を持ってこないといけない。


(それができるか。それともアゼ君の弱体化の方が早いか)


レグスターが呪いを懸念しているのはもっともだ。しかし、こんなに楽しいのは久々なのだから、呪い程度で終わらせるつもりはない。決着は納得の形でつけたいじゃないか。


ライニー6回生がこちらの斬撃を捌けなくなってくる。次第に身体の傷は増していき、致命傷になるのも時間の問題だろう。さて、どうする?




  †  †  †  †




side:ライニー・フォン・シュベルトヒルト


敗けは確定。

合格は諦めるべき。

ならば、ここで止めてもいいと、私の中の弱気の部分が言っている。




だけれども!

最後まで足掻くと決めたのだ!




  †  †  †  †



side:アゼルド・レック


ライニー6回生の目は諦めていなかった。そして、何かを決意したのも読み取った。何を仕掛けてくるかなんて考えない。仕掛けたそれを真っ正面から叩き潰す。それが百獣王の生き方だ。


「>獅子は全力を持って狩りをする

>【Verbindung Stark】」


ライニー6回生が何かを行う前にさらに自身を強化する。レグスターを媒介とした身体機能向上の魄式だ。呪いによる弱体化が加速するが、数十秒間は魄式を使った意味が出る。俺はその数十秒でライニー6回生を戦闘不能に追い込む。力の差は歴然だが、こんな劣勢の状況でも諦めないの冒険者としては長生きできない。ならば、やはり、ここで折っておくに限るだろう。


久しぶりに快く楽しませてくれた生徒だ。次の生き方を決めるまで、俺が責任もって面倒を見よう。


そう思って笑んだ瞬間、ライニー6回生のコメカミに血管が浮いた。


「その目ムカツキますね!私の生き様を嘲笑う目だっ!」

「ならばどうする?」


身体機能を向上した体は止まらない。さらに、六爪の斬撃の勢いは増していく。


「【Klinge】【Echt】」


ライニー6回生はただそう告げて俺の爪を(・・・・)両腕で(・・・)受け止めた(・・・・・)


鈍く黒く輝く。そんな肌の色を変えたライニー6回生は俺に向けて不敵に笑みを浮かべた。


「体は鋼で四肢は刃。剣の真実は斬ることにあり、硬さも必要である。

そんな思いを乗せた魄式の二重起動。めっちゃ死にそうだけど、先生もなんか体調悪そう(・・・・・)だし」

「ほう。わかるのか?」

「女のカンは舐めちゃダメですよ」

(そうそう。女性は怖いんだよ?アゼ君))


お前はどっちの味方だ、レグスター。体内にいる守護霊に文句を言いつつ、この情景に内心驚く。


なぜかって?こちとら、弱体化しているとはいえ、鍛えた成人男性の力に加え、【降霊魄式】を使って強化を行っている。それに対し、ライニー6回生は少女。先ほどまで強化していたのは加速系。さらに、今使っているだろう魄式の内容から言っても、筋力強化の類は考えられない。つまり、純粋な力の強さで言えば俺が押し切っていいはずなのだ。


ピンチな状況での拮抗。なるほど・・・・・・


「火事場の馬鹿力か」


お、コメカミの血管が増えた。


「最後まで踊って頂きましょうかああああああああああああ!」


ライニー6回生がキレた。しかし、荒々しくも雑さのない蹴りや手刀を繰り出してくる。俺も爪を振るうが、先ほどよりも拮抗しているように思う。やはり、俺の弱体化だけの問題ではないだろう。この試験の間に強くなったということか。


(この子、化けるね)


それは同意。きっと全盛期の俺より強くなる。ならば、冒険者以外の道を閉ざすのは惜しいか。


元冒険者として、この瞬間も教えるのは悪くないかもしれない。ただ単に冒険者の道を折るのは止めようか。この学園で働きながら、ライニー6回生の活躍を聞くのも悪くない。


とりあえず、この一戦。合格(・・)は与えるが勝ちまで与えない。


レグスター。王の威厳を見せつけろ


(りょーかい)







その数分後、決着がつき、俺たち2人が医務室に運ばれて保険医に怒られるのは別の話だ。




学園試験しゅーりょー。

中途半端な終わりにしたのはわざとです。

伏線でもないですがっ。

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