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1-11話

1章ラスト

side:ライニー・フォン・シュベルトヒルト




私たちが向かう方向から来た馬車とそれを追うチェイサーウルフの魂澱種。それを氷付けにしたあげく、【魂源魄式】の初歩【Zeiger(骨格を) Knochen(示せ)】で作った複数本の“影身”で針山にした私は、追い付いてきたロンさんたちと合流した。


「いいか?どんな魂澱種でも武器や装備の素材になるし、売り物にもなるんだ。それは冒険者として当たり前に理解していることだぞ?わかってるのか?馬車を救ったのはお手柄でも、せっかくの獲物を、しかも、大して苦戦もしてなくて、素材を綺麗に残す手段があるにも関わらず、こんな見るも無惨なことにしたら駄目だろ?バカなのか?」


合流した途端に説教を受けていた。地面の上に正座をさせられた上で。


「はぁ。まぁ、技術の向上目的で、しかも、チェイサーウルフの魂澱種ならどこにでもでるだろうから大した金にもならなかっただろうだからいいけどよ」

「・・・そうそう!それをわかってやったんだよ!」

「嘘だろバカ」

「イタッ!」


ロンさんは言うと同時にデコピンをしてきた。たぶん本気じゃないんだろうけど、少し痛かった。アイアンクローじゃないだけマシかもしれないけれど。


「・・・ごめんなさい」

「・・・まっ、次からは回収する素材のことも考えるんだな。と言っても、自分の身を第一に考えるのも忘れずにな」

「はーい」

「あと氷溶かしとけ。魂澱種も燃やせるか?」


幻法により道を塞ぐ形で氷が咲き乱れている。やったのは私だけど。


「それ溶かしたら許してくれる?」

「溶かさなくても許してるぞ。新人(ライニー)だから仕方ないってのはわかるしな。ただ、お前が溶かさんと進めないのもわかってくれ」


ロンさんが親指で指す方を見れば、点検するからという理由で取り上げられた義眼を分析している研究馬鹿2人がいた。その話に参加させられている身内2人(・・・・)と馭者は話を完全に聞き流しているようだ。


「まさか、ケイニー兄様が乗っていたとは・・・」

「事情は聞くにしてもお前もいた方がいいと思って何も聞いてない。だから、さっさと溶かしてこい」

「はーい」


ケイニー・フォン・シュベルトヒルト。シュベルトヒルト家の次男で家族愛に溢れ過ぎた人だ。得に弟妹へのスキンシップは相当で、ハグは当たり前、額や頬にキスの雨を降らせるブラコンにしてシスコン。そして既婚者。結婚できたのは兄弟姉妹の中でも謎だったりする。


なんでケイニー兄様がこっちに向かう馬車に乗ってたかを聞くためにも、まずは自分で作った氷を魂澱種ごと燃やし尽くすとする。


「≫イー、フィーレ、フィエーセ、フラッメ」


“私は苛烈な炎を放つ”と【文化語式】で幻法を使う。魄気は使いきったけれども、幻素ならまだ体内に残っている。それを全てつぎ込むように幻法を使ったのだけれど、掲げた右手から炎の塊は、氷に触れるや否や、氷を覆い隠すように燃え上がってしまった。それなりに離れてるはずなのに熱いなぁ、と思って十数秒後。氷は水となって蒸発して地面はカラカラに。魂澱種は炭すら残らず燃え尽きた。


・・・予想以上の威力だった。普段は【単列語式】しか使わないからビックリした。戦闘中じゃないからと【文化語式】を使ったのは不味かったのか?いや、ロンさんに言われたことをやったから問題ないはず。つまり!


「やり遂げた!」

「やり過ぎだ!」


バシンッと、後頭部を叩かれてしまう。叩いたのはもちろんロンさん。


「言われたことをやったよ?」

「やり過ぎなんだよ!なんで【文化語式】使った!?今まで【単列語式】しか使ってこなかったろ!?」

「私は日々進化するんだよ!」

「だったら頭も進化しろバカ!」


言われたことをやっただけなのに酷い言われようだった。いや、私もやり過ぎたとは思うけれど、それを認めるのもなんか嫌だし。結果的には障害物の除去はできたのだから、いいと思う。


「あ、こいつ反省してねぇな!?ちょっとケイニーさん!あんたの妹どうにかしてくださいよ!?」


ロンさんは私を指差しながら、ケイニー兄様の方を向いて言った。しかし、シリウスさんたちの所にいたはずのケイニー兄様の姿はなく、兄様の上着だけが残っていた。逃がさないように、ルカが掴んでいたはずなんだけど。


なんで(・・・)私の後ろに(・・・・・)いるんだろう(・・・・・・)


「それは妹を愛するが故さ」

「心を読まないでケイニー兄様」

「はっはっはっ!わかってしまうのは仕方ないのだよ!愛しい妹よ!」


ギュッ、と背後から抱き締めてくるケイニー兄様にため息をつく。ケイニー兄様の方が身長が高いから上から被さってきている感じだけれど、脇下から片腕を回されているから逃げることもできない。


「で、兄様はなんでこんな所にいるわけ?」

「それは勿論妹に会うために!・・・と言いたいところだけどね。せっかく会えたのにのんびりするわけにも行かない理由があるのさ」


いつもはもっとベタベタとくっついてくるケイニー兄様が珍しく私を離した。頭をポンポンと叩かれ、そして、


「人型の魂澱種が我が領の近くで確認されたのだよ」


危機が伝えられた。




 ↓ ↓ ↓ ↓



ソレ(・・)は集まるモノ(・・)たちを見て満足げに笑う。


『集え集え。この世界を滅ぼさんがため』


上半身は裸で下半身は布を巻いているだけという軽装備。にもかかわらず、それは集まってくるモノ(・・)たちに襲われる様子はなく、むしろ、従っていた。


『この地は我らの支配たる地。それこそ祝福だと知らしめろ』


ソレ(・・)の声は幾つもの声が重なるように乱れていて聞こえづらく、聞いた者を不安にさせるような声であった。


『全ては幻想。真実よ、塵と化せ』



ソレ(・・)の膚は青黒く、不吉な模様が全身に刻まれている。遠くから見れば肌以外は人そのものだが、近くに来れば人でないことは明らかであった。


額には2つ目の口があり、両目も口と化していた。周囲には十数もの球体が浮いてソレ(・・)を中心に回っているが、その球体がは目と口がついていた。


『集え集え。澱に沈みし者どもよ。幻想の下に回帰した今、すべきことを果たそうぞ』


人の魂澱種。


どんな生物も物も魂澱種になりえるが、その中でも質の悪い魂澱種の1つが人である。

陰険さ。

貪欲さ。

何より同種であれ他者を憎み、騙し、貶める種族は動物の中にはそうおらず、物に至っては意志が芽生えて上位存在にならない限りはできない話だ。人は言葉巧みに他者を誘導できるのだから。


故に、魂澱種となった人は早々に討伐される。討伐しなければならないのだ。現状ソレ(・・)が行っていることがその証拠。ソレ(・・)は周囲の魂澱種を集め、さらには、ありとあらゆるモノを魂澱種へと堕落させている。




第1級討伐要請

霊人『カズ・カグチ』の魂澱種、名称“カグチ・ナラク”の討伐要請が王国とギルドの両方から発せられたのは、ライニーたちがケイニーと出会った翌日のことだった。



 ↑ ↑ ↑ ↑

私の作品は転生者は悪人です。

そして、転生させた存在も・・・


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