1-06話
本日で投稿開始1ヶ月。
今後ともよろしくお願い致します。
side:ライニー・フォン・シュベルトヒルト
告白した翌日・・・の昼。
昨日は祝福してくれる親しい人たちと一緒に朝まで騒ぎ、ついでに、昨日とこの前ニヤツいて奴等に吐くまでアルコール度数の高い酒を奢ってあげるという優しい(嘘)復讐を行い、ロンさんの借宿に来たのが朝日が昇り始める直前。そこから、久しぶりのロンさんの温もりに熟睡し、6時間ほど寝て気持ちの良い目覚めを迎えた。ロンさんも一緒に起きて一緒に昼食を食べ、一緒に街を歩いているのが今の状況である。
ちなみに、起きたときに『お前の抱き心地変わらねぇなぁ』と柔らかい笑みと共に言われて恥ずかしくなり、ロンさんの悲鳴を無視して悶えて暴れてしまったのはご愛敬♪
で、とにもかくにも、冒険を始める準備をするのが今日の目標である。主にメンバー集め、というか、対面。
「ロンさんが声をかけた人ってどんな人なの?」
「研究ギルドに所属してる奴でな。お前の義眼の作成者でもある」
「へぇ。これ作った人なんだ」
8歳の誕生日にロンさんがくれた義眼。その頃には魄式も幻法の制御も上達していたけれど、寝ている間の魄気や幻素が溜まる問題の解決はできていなかった。睡眠2時間ぐらい取っては起きて、適当に術を使って発散。そして、また寝る。というのを繰り返していた。けれど、ロンさんがくれた義眼のおかげで睡眠時間を1時間ほど伸ばすことができるようになったのだ。たった1時間とは言え、安心して寝られる時間が増えたお陰で、体調も良くなった。
義眼の役割は、視界の確保と魄気の蓄積。義眼には【刻印魄式】を埋め込んでいるようで、魄気に反応して目の機能を発揮するようになっているらしい。どんな【刻印魄式】を使っているかは知らないけれど、左目を失う前と同じように見えるのは日常生活でも大助かりだ。そして、もう1つの魄気の蓄積はそのままの意味合いである。“溜め込む”ということにも魄気を使う必要があるようで、魄気生成速度が遅ければ意味のなさないものらしいけれど、私の生成速度は一般レベルを軽く越えているために問題なく、むしろ発散が目的なのでちょうど良かった。
「数年前まで使った感想を俺経由で伝えていてな。最近、その感想を元に最新版ができたらしいから、それを試して欲しい、というあったの要望もある」
「へぇ。これでも十分凄いと思うんだけど・・・」
感想と言っても『魄気の溜まり具合で色彩が変わる』ぐらいなものだ。普段は鮮やかに、いたって普通に見えるけれど、たまに、色彩が落ちて、場合によってはモノクロになるぐらい。物の形は見えているし、色彩も右目で把握できているから、気持ち悪いなぁ、ぐらいのものである。見えなくなったからこそ、再び見えるようになった有り難みを強く感じるのだ。
「まぁ、作った本人が納得してなかったからな。ライニーも良くなる分には一向に構わないだろ?」
「まぁ、そうだけど」
そんな会話を重ねつつ、向かうのはその人が個人的に借りている家らしい。研究ギルド内にも研究スペースがあると聞いたことはあるけれど、ロンさん曰く、専攻が違う人たちが集まるために自分のやりたいとこがあまりできないらしい。リデオーラ王国の首都圏で家を借りるほどお金がある、ということもないらしく、ルクオンの隅の方に住んでいて、かつ、問題物件らしく、かなり格安だとか。
「なんで首都圏に来てまで研究やってるんだろ?その人?」
「そりゃあ、流通が盛んだからだろ?欲しいものを手に入れるには国内だとここが最適だしな」
「それもそうか」
そして、ロンさんの宿から歩いて1時間。ようやく目的に到着した。
ボロ屋だった。
「なんというか・・・個性的な人なんだね!」
「素直に言っていいぞー。基本的には地下で研究しているらしいから、地上はどうでもいいらしい」
「寝食は?」
「地下なんだろ?まぁ、はいりゃあわかるさ」
不安しかないんだけど、と思いながら、ロンさんの服の端を握る。ロンさんはノックすらなく、ドアを開けて『シリウスー来たぞー』
と言いながら入っていく。もちろん、私もついていく。
今日はいい天気で家の中もそこそこ明るかった。そこそこというのは窓が開いているから、とかではなく、屋根や壁に空いた穴から光が差しているからだ。窓もあるけれど見事に割れている。
「誰もい「いらっしゃい」
>にょわきゃああ!?」
ボンッ!
ビックリした!ビックリして下手に魄式使いそうだった!浮かんだ構成が意味のなさないものだったから、かざした右手が浅く爆ぜた。声のした方に、ロンさんの前に手を出したために、皮膚を破った爆発はそのまま声の主とロンさんに私の血を浴びせたのだった。
† † † †
「変な悲鳴は良いとして、制御をとちるなよ」
「だってぇ~。だってぇぇぇ」
「こちらも悪かったですね。まぁ、あの声のかけ方でだめなら、どのように声をかけていいのかもわからないですが」
少し時間が経って、ボロ屋の地下。地上と違って高級宿屋のように綺麗な空間の一室で、私は女性に包帯を巻いて貰っていた。ちなみに、地上での声の主は男性。
「見た目ほど大したことはなさそうです。この包帯は治癒促進の効果を付与していますから、数時間も経てば跡形もなく治っていると思いますよ?」
「・・・ありがとう」
「ふふっ。どういたしまして」
目の前の女性は、なんとも女性らしい女性だった。私には無いものをいろいろと持っている女性だった。
ふわっと柔らかそうな綺麗な橙色の長髪にエメラルドのような輝く翡翠色の瞳。包帯を巻いていた手は傷の跡は見当たらず、見える肌は全て艶やかさを感じる。何より、引き締まった体、に関しては私も同じだけれど、胸が、そう、胸がね。
「これが・・・大人っ」
「何を言いたいかはわかるが諦めた方がいいぞ?お前の家系そこまでじゃないだろ」
「くそぅ。母様が大きければ望みがあったのにっ」
「えーとー?」
「ニフィルが困ってますから、胸に関してはそれぐらいにしてください」
眼鏡をかけた男性が私たちに言うけれど、男性に私の気持ちがわかってたまるかっ!同い年の女の子の成長を間近で見る悲しみが貴方にわかるかっ!
「まぁ、こいつは放っておいてくれ、シリウス、ニフィル」
「えっとー。血涙を流しそうなほど悔しがっていますよ?」
「変り者なんだ」
ふふふ。まぁいいさ。絶壁というわけでもないし、それに大きければ動くのに邪魔なだけ。そう!接近戦を主にする私の方が勝ち組だあ!別に負け惜しみじゃないもんっ!
「あ、普通に泣き始めちゃいました」
「ニフィル、慰めてはいけませんよ?ところで、ロイマン。胸の小さい女性は好きですか?」
「好きも何も、ありのままのライニーが好きなだけだぞ?」
「さて、自己紹介しないとねっ!」
ロンさんが胸を意識しないとわかれば気にしても仕方ない。ありのままを受け入れようじゃないか!・・・でも、後であの大きい胸、触らせてくれないかな?
「ふむ。立ち直りが早いですね。まぁ、あのままウジウジされるよりかは断然マシですが」
「私としては、彼女からの視線が胸にきているのが怖いのですが・・・」
おっと。
「これは失礼しました。で、さっきも言いましたけれど、自己紹介しませんか?私はシリウスさん?と、ニフィルさん?のこと、まったく分かりませんし、お二方も私のことを知らないと思いますし」
「お前に関してはこいつらだいたい知ってるぞ?義眼を作る際にいろいろと説明してるしな」
「そうなの?」
うん?でも、それだけで私のことだいたい知ってるっておかしくない?説明するにしても目のことだけじゃないの?
「まっ、そこはおいおい話すことにしましょう。時間はたっぷりあります。僕はシリウス・メガ・プラネタル。プラネタル仁爵の次男坊です」
「私は鷹系獣人、ニフィル・カド・バーン・メディルカルトと言います」
仁爵位はロンさんがいるから驚かないけど、メディルカルトというと隣国、カドバーン王国では有名な家系じゃなかっただろうか?というか、名前にカド・バーンって入ってる時点で確実にそうだとは思う。けれども、私は冷や汗が流れ始めたのを気にしつつ、訪ねてみる。
「あのぅ、ニフィル様って、カドバーン国王の身内です・・・よね?」
「はい。獣人国家カドバーン王国の国王、ヴェルデン・カド・バーン・メディルカルトの12番目の娘です」
私は気を失った。
冒険仲間を増やしましょ♪




