妖ーあやかしーノモノ 上
暑い暑い夏の日、
ごく一部の者しか知らない、山に閉ざされた
小さな村。
日本と言う小さな島国の中にある小さな村。
その中に住んでいる。11歳の少年と大家族の悲しい悲しい物語。
「おはようございます!」
「おはよう、サクラ」
僕は、サクラ
小学5年生のこの村でただ1人の…ただ1人の…
子供…である…
「今日も元気だな!先生と一緒に虫とりでもするか!それとも海で泳ぐか?」
「それよりも授業をしたいです!」
「そうか!じゃあ今日も頑張るか!」
“悲しい…悲しいよ…なんで?…なんで?…なんで僕1人だけなの?寂しい…誰か…誰か…”
サクラの笑顔の裏は、悲しみで満ちていた。
暗く、先の無い、絶望に彷徨っていた。
授業が終わり、サクラは小さな分校を出た。
「こんにちは!」
「お!サクラ!相変わらず笑顔が絶えないね〜!そうだ!おじさんからのプレゼントだよ!」
「ありがとうございます!」
「あ!サクラちゃん!相変わらず元気ねぇ」
「おばさんこんにちは!」
サクラの笑顔は、花だった。
見たものは必ずつられて笑顔になってしまう
でも、こんな日々がサクラには、
“苦痛だった”
『仲間が欲しい』
日々そんなことしか考えない…
人に会うたび、笑顔になるのが癖で気づいたら
“独り”だった”
自分の事を気にしてくれる人なんて、ここにいない。ここの村じゃなくて、都会に行けば友達が増えるのかな?
この村は、山に囲まれているせいで物資がなかなか届かず、届いた物はほとんど何年か前に流行した物だったりするのがほとんどであった。
それに電機が通っていないから、エアコンって言う機械や、テレビって言う機械も無いのだ。
あるのは、家と畑と家具と…
そんなど田舎なところだ。
もちろん全ての建物は、昭和に建てられたので、ポストは、円柱型の赤ポストそれに電柱も木だ。
そんな事を考えながら家に向かう。
「サクラおかえりなさい」
「おかえり」
「あら?帰ってきたの?おかえり」
「あら〜待っていたわよサクラおかえり」
家では、父のおばあちゃん、おじいちゃんと母のおじいちゃん、おばあちゃんが出迎えてくれた。
他にも、ひいおばあちゃんとおじいちゃんが、8人がいて、全員90歳を越えて長寿だ。
築、230年と言う古い木造住宅に僕の大家族は住んでいる。
家族の大半は、高齢者なので、一戸建てで物凄く大きい。
僕は、この家で生まれた。
この薄黄色の髪の毛と女顔だったため、最初は女の子と勘違いされた…
サクラは、楽しかった。心の底から嬉しかった。
だが昨年、僕を一番に考えてくれて、一番優しかった。ひいひいおばあちゃんが、
亡くなった。
僕は…サクラは…心の底から泣いた。初めて悲しみの感情を知った。瞬間だった。
そして、お風呂に入って、ご飯を食べて、家族とお話をして、寝る…
そして明日が始まりだす。
朝起きて、見渡せば、母が朝食を作り、父は新聞を読んで、おばあちゃんたちは、椅子に座って本を読んでいた。
「サクラおはよう」
そして、1日は、挨拶から始まった。
母から始まり、おはようと言う挨拶の大合唱であった
今日は、日曜日だったので、学校は無い。
“暇だ…悲しい…仲間が欲しい…助けて…苦しい…”
“だったらこっちに来てよ。僕達の仲間になって”
そして、身体に何かが触れる感覚がした。
「え?」
優多は、抱えていた頭を起こし周りを見渡したが
誰も居なかった。
真っ暗闇に映し出される誰かの声。女の子の姿…
「なんだったんだ…」
サクラは昼食後、山に行くことにした。
スケッチブックと鉛筆を持った。スケッチをするのだ。
頭には、麦わら帽子をかぶり、家を出た。
山道を歩く。
嫌でも考えてしまう。
“独り…独り…独り…独り…独り…独り…”
サクラの真っ暗闇に文字が映し出された。
縮こまるサクラの周りを漂う“悲、独、怖、苦…”
“やめてくれ…やめろ…独りは嫌だ…嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!”
「嫌だ…やめろ…考えるな…」
優多の目は、悲しそうだった。苦しそうだった。
『大丈夫?』
ふとそんな声がした
『立てる?』
見上げると、ニコッと笑い、手をこちらに差し伸べている女の子がそこに立っていた。
薄茶のロングの髪型に麦わら帽子をかぶって白いワンピースを着ていた。
『大丈夫?さっきからそんな顔してどうしたの?』
「えっと…」
『私の名前は、ユリ。よろしくねあなたの名前は?』
「僕の名前は、サクラです」
『そっか、サクラくんね。今日、この村に住むことになったからよろしくね』
「あ、はい…って、え?」
サクラは、このとき嬉しかった。
理由は、分かっている。
仲間ができたからだ。
だが、この出会いを期に、サクラの身に異変が起こったのであった。
それが分かったのは、ユリに出会ったその日の午後、入浴中の出来事である。
体に湯をかけた途端、異常な熱をと痛さを受けた。
気づいたら身体は、毛が生えていた。
白銀色の毛が身体全身に生えており、頭にはなんと耳が生えていた。
元の耳の場所が髪の毛で隠れていたいたので、その毛をかき分けて、耳を探すもそこに耳は無く、
頭に生えている耳をつねるも痛いし、本物だという事を知った。
そして、驚くべき点がもう1つあり、尻尾が生えているのだ…
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」サクラは、絶叫してしまった。
あまりにも声がでかかったため、
親が何があったのかと、こちらにきてしまったが、
今の状況で、この姿を見せては色々とやばいので、ここは誤魔化して上手くまいたが、
この状態をどうすれば良いのか…
とんがった頭上の耳に、ふわっと大きな尻尾。
これはどう見ても狐だ。
どうすればいいのか…
体育座りをして考えた。
“どうすればいいんだこの状況…
どうすれば戻るんだ?…
とにかく、今戻らないと、大変な状況だ。
戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ”
フシュー
そんな音を立て長らく、身体の毛が燃えて、普通の人間の身体に戻った。
毛は燃えたものの熱さなどを感じなかったので、やけどなどしなかった。
無事、耳や尻尾など目立つものが全て無くなったので、あえて突っ込まなかった。
だがなぜこんなことになったのだろうか