偉大なる星
第一章 ドクター10
この世界は、石油資源が枯渇した地球。
今、地球では、石油燃料に代わる新しい発電装置として、魔光力発電という発電システムが開発されていた。
魔光力発電とは、アメリカ人の五四歳の、デル・バッケン博士が発明した新しい発電方法です。
ダイアモンドや、水晶などの、光り輝く宝石を魔宝石と呼びます。
その魔宝石を、極限まで濃縮して、光を一箇所に集めて、核分裂させて発生した光エネルギーを熱エネルギーに変える。そしてその時にも発生する水蒸気も使って、発電タービンという原動機を回すことで、発電する仕組みだ。
魔宝石の、原子核の核分裂の連鎖反応を制御しながら行う発電方法を、魔光力発電という。
その時には、膨大なエネルギーが発生するが、それをロケットなどの発射時の動力にも使われている技術だ。
現代では、その発電装置を小型化する研究と、ひとつの燃料での稼働時間の長時間化の研究がなされている。
あなたの町の発電所も、もうこの魔光力発電に切り替わっているかもしれません。
しかし魔宝石を核分裂させるときに放射される、魔光と呼ばれる魔導放射線が出ることが社会問題化している。
今、人類は岐路に立たされていた。
人類が積み上げてきた、科学という法則は、大きな未来に向かっていた。
そういえば最近、月の月面に人が住めて宿泊することができる、ルナ・ステーションが完成したらしい。
そのルナ・ステーションは、遥かなる宇宙に向けて、月面で活動する拠点だ。
それはジパングに基地がある、国際宇宙開発連邦という組織が、独自に進めてきた計画だ。
国際宇宙開発連邦は、英語では、インターナショナル・スペース・エクスプロイット・コンフェデレーションと表記される。
そのスペルの頭文字をとって、ISECとか、国際連邦と呼ばれている。
その最先端の科学技術で作られたルナ・ステーションは、ニュージーランド人の三八歳の、ラルク・サンソニー博士が作り出した。
この世界では、科学技術の発展によって、化石生物を復元して再生することができるようになった。
それは、化石生物復元再生技術と呼ばれた。
その技術を確立させたのが、フランス人の四七歳の、フローレンス博士という女性科学者だ。
フローレンス博士は、その技術で太古の昔に繁栄した恐竜たちを復元して、命を吹き込むことに成功した。
そのショッキングな科学で、世界中の人々を驚かせた。
今、その命を吹き込まれて蘇った恐竜たちは、専用の地区や島などに作った恐竜エリアで育てられている。
しかしその最新の科学技術でも、復元した恐竜たちを繁殖するまでに至っていない。
今の技術では、復元されても一代限りである。
それらの水竜や、翼竜を除く、復元された恐竜のことを、現代人は人間に似ているということで、ドラゴリアン(恐竜人)と呼んでいる。
それにフローレンス博士は、今まで想像上の生物と思われていた幻のモンスターを、目覚めさせた。
古文書を解読して、場所を特定して、化石生物を復元して再生する技術で、遺骨から遺伝子を取り出して、その遺伝子を培養して、細胞核を取り出して、種が近い動物のメスの卵子に移植して、授精させて、この時代に目覚めさせたのだ。
それらは、神々の敵として描かれたり、英雄に倒される運命になっていた怪物だから、世界中が混乱した。
今はその怪物と呼ばれるモンスターたちも、逃げ出さないように専用のゲージに収まっているから、秩序が保たれている。
しかし怪物たちの力は破壊的なので、いつ人間が作ったカゴを飛び越えてしまうかわからない。
それらのモンスターは、恐竜と同じように特定のエリアに収納されている。
ブレンドモンスター技術。
例えば、竜と、ライオンの遺伝子を組み合わせた、モンスターが見たい。
現代科学では、その生物を作り出すことに成功した。
メスの動物の卵子に、種が異なるオスの精子を授精させるというやり方を完成させた。
種が違う二体の動物を掛け合わせて、ブレンド交配して、合成獣と呼ばれる、ブレンドモンスターを誕生させることに成功しました。
もはや今では、種が違う三体の動物を交配して、ブレンドモンスターを誕生させようとしている。
そして噂では、人と、モンスターとを掛け合わせているという情報もある。それで生まれたモンスターが、ドラゴリアンという噂も……。
それが本当ならば、半人半獣が誕生している。
しかしこの技術も、化石生物復元再生技術と同じように、一世一代で、二世を誕生することはできない。
ブレンドモンスター技術は、ドイツ人の六一歳の、マクベルグ博士が発明した技術だ。
この世界では、それらのモンスターや、復元された恐竜や、発見された新種の動物などを、マスコット・キャラクター(マスキャラ)と呼ぶ。
そしてこの世界では、それらのマスキャラを、A地点から、B地点に転送する装置が完成した。
物理的に物質があるものを、A地点から、B地点にと、テレポーテーションで転送する実験に成功したのだ。
タマガットに、物質を圧縮して入れて、中身をA地点から、B地点に、瞬間で移動させる装置だ。
その夢のような科学技術を、物質圧縮転送技術システムと呼んだ。
その技術を開発したのが、ブラジル人の四九歳の、マクサー博士だ。
この技術システムに関連して、マスキャラを圧縮して、携帯することができる玉子型の装置をタマガットと呼ぶ。
そして野生のマスキャラや、モンスターなどを捕らえる網のことを、圧縮キャッチャーと呼ぶ。
自由に伸縮したり、広がったりする圧縮キャッチャーで捕らえたモンスターを、玉子型のタマガットに入れておくこともできます。
それに幻獣・霊獣を、魔法のカード(マジカルタ)の中に宿して、そのカードから霊獣が飛び出るように、現実化して召喚することができる技術も開発した。
人類が作り出した知恵は、ついにあの世と呼ばれる霊界までをも、科学で究明することに成功した。
霊体・霊界具現化発生装置。
無の空間から、有を生み出すのは難しい。
しかしそこに霊体が存在するのであれば、現代科学はその存在を具現化して映し出せる。
現代では、その人間の奥底に潜む霊の世界を、その装置で霊界探検することが流行している。
それを開発したのが、ジパング人の五九歳の、設楽博士である。
その設楽博士は、具現化する技術に長けていて、オリジンが放つ自然エネルギーを増大させる装置も開発した。
小さな精霊の自然元素であるオリジンを、みなさんも子供の頃に、捕まえて遊んだ経験がおありでしょう。
そのオリジンが放つ自然現象を、専用の装置で増大させて、大量の自然エネルギーを発射する機械を開発した。
設楽博士はスタートラベラーズという、旅行会社も設立している。
はやりの宇宙旅行を満喫することができる、旅行代理店だ。
ジパング人の六三歳の、赤羽博士が、ついに夢を完成させました。
そう、二足歩行型の、自立式巨大ロボットである。
そのロボットの名前は、ゲヴェッグ。
生みの親である、赤羽博士が名付けた。
パイロット室には一人しか入れないが、完全自立式を完成した。
ロボットの全長は一〇〇メートルで、動きは遅いが、着実にそのスピードを上げている。
ゲヴェッグの足にはダルマの原理が使われていて、倒れても起き上がるようにできている。
ゲヴェッグには、核融合発電装置が搭載されている。
ゲヴェッグの背中に担がれている燃料を入れているタンクには、海水が入っている。
その海水をタンクの中で電気分解して、重水素と、三重水素を取り出す。
その取り出した重水素と、三重水素を、機械内にある核融合炉に運ぶ。
その核融合炉で、重水素と、三重水素を融合するために、レーザー光線を照射して超高温化状態にする。
そして核融合反応を完全に制御して、連続して発生させて、破壊的なエネルギーを生む。そのエネルギーで、発電タービンを回して動力を得るという方法だ。
この核融合発電は、今までの原子力発電とは違って、ヘリウムを出すだけで核廃棄物をあまり出さないし、核分裂反応の暴走を制御することができない状態になることはない。
それに重水素と、三重水素のリチウムという燃料は、海水に豊富に存在するのだ。燃料が枯渇することはない。
月に行ったら、重水素と融合させるヘリウム3が月面に豊富にある。
この夢の動力源で、赤羽博士は巨大二足歩行型、自立式ロボットを誕生させた。
ロボットといえば、イタリア人の四九歳の、クランキ博士が開発した機械もすごい。
クランキ博士は、永久稼動発電エンジンという、半永久機関を誕生させた。
超酸化チタンという、光触媒の電極を水の中に沈めて、水から水素を取り出すことに成功した。
その取り出した水素を、燃料電池の仕組みで、酸素と電気化学反応させた。
すると電気化学反応をしたときに電気が発生する。
その電気を発電に使う方法を作った。
排出されるのは水だけだ。
その余った水も、また水素を取り出すために使って、サイクル化する。
燃料に使う水は、地球の水の循環によって、半永久的に確保することができる。
こうやって機械内で水を循環させて、半永久機関システムを完成させた。
そのシステムを、アンドロイドロボットに搭載した。
その半永久機関が搭載された、一mほどの人型商品ロボットの名前は、レガイオンだ。
一番最初の試作品だったために、レガイオン・Aと呼ばれた。
そしてクランキ博士は、そのエースにAI(人工知能)を組み込んだ。
このAIは、人間の脳を超えたと知能を持っていた。人間の脳よりも計算処理能力が高く、頭が良い。
すると問題が起こった。
人工知能という知恵を搭載したエースは、知恵の実を食べて目覚めた最初の人間であるアダムと、イブのように、自我に目覚めたのだ。
この人工知能によって自我に目覚めた試作品は、クランキ博士の下から姿を消した。
これが、生み出した博士の下から姿を消す決断をした、レガイオン・エースのお話です。
この時代では、細胞復元再生医療技術の、スーパーiPS細胞という技術で、人類の寿命が大幅に伸びた。
人の細胞から育てて、人のどんな細胞の部位にも移植応用することができる万能細胞。
万能細胞を患者に移植しても、拒絶反応しないように培養した細胞再生技術だ。
そのスーパーiPS細胞を作ったのが、ギリシャ人のアイザック博士です。
アイザック博士は、その技術を自分の体で実践した。
それで本人はピンピンの体なのだが、実際の年齢は一〇四歳らしい。
しかしなぜか本人は、自分の本当の年齢を言おうとはしない。
万能ワクチンが完成した。
エジプト人の五〇歳の、アミル・ザラン博士が開発したのが、今地球にいるどんな細菌や、ウイルスにも効くとされる、万能ワクチンだ。
二〇〇〇年代に、豚が保持していたウイルスが変異して人間に感染することになった。
世界的に、大流行した。
それが、狂豚病と呼ばれた。
しかし豚を神の使いとして崇めているイスラム教徒は、豚を食べないので、イスラム教徒には被害が少なかった。
万能ワクチンは、その狂豚病の対策に作られた。
万能ワクチンは、ほぼすべての細菌や、ウイルスに効くことから、世界中から受注がある。
しかしイスラム教徒のアミル・ザラン博士の会社は、この時代でも立場が低いイスラム教徒に優遇して供給しているという噂がある。
今まで紹介した発明が、この世界の一〇大博士による、一〇大発明と呼ばれている。
第二章 ナイトロード
ここは空中庭園という、神々が住んでいる雲の上の場所。
ここは地球の絶対神である、雷を操る神々の長であるゼウスが住んでいる。
雲の上に存在する天空の空中庭園は、星の神々が住むことができて、天国と同一視される最上層階級。
神々の王であるゼウスは、天空も支配して、この地球自体も支配している。
星の支配者であるゼウスは、地上のささいな出来事にも敏感に感じ取ることができる。
いかにも威厳を感じさせるような、あご髭を生やした、目玉が大きい、3メートルの身長を持っているのがゼウスだ。
ゼウス。
「しかし我々神々に似せて、我々が作った人間たちの横暴には目をつむれぬ。石油資源の枯渇。環境破壊。貴重な種の絶滅」
「人類は自然を破壊することによって、自然に破壊されることを、なぜ教訓にすることができぬ。我々が起こすとされる天変地異や、異常気象や、地殻変動は、自然の摂理なのだ」
「人類ごときが、自然をコントロールすることは出来ぬ。人類ごときは、永遠に自然に生かされていくだけなのだ」
ゼウス。
「いくら科学技術が発展しようとも、我々神を超えることは出来ぬ。それをバベルの塔を雷で破壊した時に思い知ったはずだ」
「今、人類は、パンドラの箱を開けようとする愚か者が存在している。それが開かれると、我々が封印した不死身のモンスターが、復活してしまう。それに箱の中のファントム(幻)や、ガイスト(魂)が、人間に乗り移ってしまうと、そのファントムガイスト(霊魂)の力によって、人間が覚醒して、進化して、特殊能力に目覚めてしまうのだ。そうなると厄介だ。そしてあの石が、本日になって急に波動を発し始めた。依然、不穏な波動を放っている」
ゼウス。
「そこで、水を司る水星のヘルメスよ。あの石を、下界に降りて回収してはもらえぬか? あの石は人間が管理するものではない。あの石の力は強すぎるため、あの石によって人間は振り回されるだろう。石によって人間界の秩序が乱れてしまう」
ヘルメス。
「はは、私ヘルメスが、人類から石を回収してみせましょう」
ヘルメスは、青いくるくる髪と、オレンジ色した肌をしていて、頭が賢そうな印象を受ける。
ゼウス。
「今一度、人類にお灸を据えなければならぬ。それがアルマゲドンとか、ラグナロクと呼ばれても、アダムの子孫を削減するための戦争を起こさなければ……。世界最終戦争が起こるのも、人間しだいなのだ」
私の名前は、ジャック・フレイム。
年齢は一八才。
髪の色は青色で、中くらいの長さをしている。
肌の色は白くて、緑の瞳が特徴で、身長が一七0センチメートルの、正義感が強いタイプのイケメンの男です。
ジャックはアトランティス島の、王国騎士を輩出しているヴェルベック一門の、門下生だ。
アトランティス島とは、ヨーロッパのポルトガルから海を渡って、西に二〇〇kmほど行ったところにある島国です。
国土は一万平方キロメートルほどの、小国です。
アトランティスは、エッジオ・アトラン国王が治めている。
公用語は、アトランティス語。
一千万人の、アトランティス国民が住んでいます。
ダイアモンドよりも硬いという、オリハルコンが採れることで有名です。
ジャックが参戦する、本日開催されるキングスカップは、王室が開催している大会だ。
今日はクリスマスの日。
街はお祭り騒ぎ。
ジャックは大会に出場するということで、朝から落ち着かない。
ジャック「怖い、もしかしたら殺されるかもしれない。その恐怖心に打ち勝とうと、無理にでも勇気を示そうとしたら、心と体が一致せずに、手先が震える」
しかし意を決して、夜に決闘が行われるアトランティスの闘竜場に足を進めた。
今日の天気は、昨日から降った雨が明けて、晴ればれしい空気になっていた。
すでに時刻は夜を迎えていた。
キラキラなネオンが輝く夜道で、ジャックは、その歩いている途中で珍しい光景を見た。
三匹の動物一緒にいるところと、遭遇していたのだ。
ヘビ。
カエル。
ナメクジ。
その三匹は、絶妙な関係を保っていた。
ヘビは、ナメクジを嫌い。
ナメクジは、カエルを嫌い。
カエルは、ヘビを嫌う。
ジャック。
「へー、三者の力関係が、ほどよいバランス関係を保っている。珍しい現象だな」
ジャックはこの三竦みの、ジャンケンの関係を見て、少し心が和みました。
ジャックは立派な王国騎士になるために、グラディエーター王者を決めるキングスカップの、予選の登竜門という大会に参加している。
登竜門という大会は、アトランティス島の中心に建てられている、闘竜場で行われている。
普段その闘竜場では、決闘士と呼ばれるグラディエーターが、ドラゴンと戦うときに使われている施設だ。
今回のキングスカップの商品は、魔女のホウキと、賞金が一〇万₦(ゼニ)だ。
ゼニは、国際基軸通貨の貨幣の単位で、現在では1₦は、100¥程度の価値で取引されている。
そのキングスカップの予選の、登竜門でのジャックの対戦相手は、同じアトランティスに本拠地を構える、グラディエーターの一門の師範である、ダル・グランディであった。
ジャックが所属しているヴェルベック派閥は、国際左翼という立場を保っている。
脱王国反独裁主義で、国際的な民主主義による、先進的な協調を標榜している団体だ。
それに対してグラディエーターのダル・グランディ派閥は、極右翼の考え方をしている。
アトランティス王国のみの国益を優先して、移民に対して厳しい政策の立場を保つ。
親王国主義で、この時代に共産主義を持続することを考えている。
それゆえヴェルベック一門と、ダル・グランディ一門は、仲が悪い。
近年は、抗争を繰り返している。
その関係もあって、ヴェルベック門下生のジャックと、ダル・グランディ師範との決闘は、試合前から盛り上がりを見せていた。
もうすでに二人は、登竜門が行われるアトランティスの闘竜場の、決闘場に立っていた。
二人の周りには、試合を待ちきれない無数の観客の声援がこだましていた。
下馬評では、王国騎士にまだなれていないジャックよりも、師範のダル・グランディの方が人気が高かった。
グラディエーターの師範のダル・グランディは、四五歳で、日に焼けた小麦色の肌をしていて、髪の毛は赤紫色で、長めの髪型だ。
グラディエーターらしく防具を着ている。
消して目をそらさない、蛇のような大きな瞳が印象的だ。
決闘の主導権争いは、もうすでに始まっています。
二人とも剣士として、自分の剣で間合いを確認しています。
殺伐とした雰囲気の中で、両者があいまみえます。
ダル・グランディ。
「自分たちの利益を守らなくては、先に外国の人間にも利益が回ってしまう時代だ。アトランティスは島国だ。自分たちの国益を守る義務があるのだ。我々は、自分たちのご飯を、もっと確保しなくてはいけないのだ」
ジャック。
「生まれた場所で受けた教育で、同じ人間同士が争うなんておかしいよ。それじゃ、進歩しないよ!!」
ジャックは、朝から手先の震えが止まらない。
しかし自分の信念のために、ヴェルベック一派で選ばれた代表として、戦わなくてはいけなかった。
ジャックは、決意を決める。
そこで、審判の合図で試合が始まりました。
審判。
「よーい、はじめ!!」
ジャックは序盤に、ヴェルベック門で習った剣の振り方で攻めます。
しかしダル・グランディの間合いは変わりません。
ダル・グランディは一定の調子で、何か一撃必殺を狙っているかのように、力をためてチャンスをうかがっています。
チャージ戦法。
力をためて、一気に攻め込む戦法。
ダル・グランディは、序盤は様子見の戦い方でした。
チャンスをうかがい、チャージで一気に相手にダメージを与える。
ジャックは習っていた通りの攻め方で、ダル・グランディの肉体にダメージを与えるような隙を探っています。
しかし。
ジャック。
「うぬぬ、隙がない……」
しかしここで、ジャックは今朝見たジャンケンの関係を思い出しました。
『ナメクジは、カエルを嫌う』
『カエルは、ヘビを嫌う』
『ヘビは、ナメクジを嫌う』
ジャック。
「カウンターには、連打。連打には、チャージ。チャージには、カウンター。ヘビのように力をためているのなら、一瞬のチャンスに賭ける!」
そこでジャックは、力をためるダル・グランディに対して、横に移動しながら、円を描くようにして間合いを保ちます。
その戦法に業を煮やしたダル・グランディは、チャージで溜めていた力で一気にジャックに襲いかかりました。
ダル・グランディ。
「うりゃゃゃゃゃぁぁあ!!」
ジャックは一瞬のチャンスを待って、相手が前に出てくる力を利用して、剣をダル・グランディの防具に突き刺しました。
ジャック。
「相手が前に動く力を利用するのが、カウンターなのですよ!!」
『ガシィィィンンンギギギギギィィィッ!!』
ジャックは剣を使って、カウンターに成功しました。
ダル・グランディの防具は、真っ二つに裂けました。
ダル・グランディ。
「な、なんということじゃ……私の負けだ……」
なんとジャックは、試合前の予想を覆して、師範のダル・グランディを打ち負かしました。
ジャックは初めての試合で、勝利する。
ジャック。
「よっしゃぁぁぁぁあ!!」
自然に死を意識したら、生きなければいけないという防衛本能が働き、指先が動くことがわかった。
そして死合で勝利したときは、脳からアドレナリンが多量に分泌されて、陶酔するような快感を味わった。
ジャックと、ダル・グランディの決闘が終わった直後に、アトランティスにある報道機関が、緊急速報でニュースを伝えました。
アナウンサー。
「こちら、ニュースセンセーションです!! ただいまはお時間ではないのですが、ショッキングなニュースをお伝えします。万能ワクチンを開発したアミル・ザラン博士が、ギリシャ神話に登場する、パンドラの箱をアトランティスの中心街で、開けてしまったというニュースが入ってきました。多くのファントムガイスト(霊魂)や、箱に封印されていた、半永久的に死なない、不死身のモンスターであるエターナル・モンスターや、疫病が、地上を蔓延する恐れがありますので、ご注意してください!!」
このセンセーショナルなニュースに、闘竜場にいた観客もどよめいています。
しばらくすると、闘竜場から空を見上げると、無数の光り輝くファントムや、悪霊や、白い光を放つ霊魂などが、飛び散りました。
人間界では、ファントム(幻)や、ガイスト(魂)と呼ばれる、霊状のものが人間にとり憑くと、その人間は特殊な能力に覚醒すると言われています。
アトランティス島にある中心街は、島の中心に位置して、闘竜場の近くにあります。
闘竜場は、中心街から南の位置に立っています。
そしてしばらくすると、闘竜場から見える場所にある、アトランティスの王が住んでいる城に、強烈なカミナリが落ちました。
王城は、島の南端にあります。
するとさっきの報道機関が、再びニュースを伝えました。
アナウンサー。
「こちらは、ニュースセンセーションです……。パンドラの箱を開けたアミル・ザラン博士の、死亡が確認されました。無数のファントムに乗り移られて、ザラン博士が死亡したという情報が伝わってきました。」
「そしてそのアミル・ザラン博士の、犯行声明が、本社に送られていたことがわかりました。その犯行声明の内容を、紹介したいと思います」
「・・・私はイスラム教徒として、我々の仲間を助けたいと思います。現在のイスラム教徒の、国際的な立場に抗議します。パンドラの箱を開ける決断をしたのは、苦渋の決断でした。最終手段でした。しかしこれをしなくては、ますます我々の立場が危うくなります・・・」
「・・・パンドラの箱を開けることを、私は神比べと呼びます。本日はクリスマスということで、キリスト教徒は町を楽しみながら歩くでしょう。そしてユダヤ教徒も、ハヌカという祝日なので、ユダヤ教徒も町を歩くでしょう。そこでその異教徒に対して、パンドラの箱に封印された疫病を、流行らせたいと思います。・・・」
「・・・平和なアトランティスの中心街で、神比べをすることで、イスラム教徒が信仰している絶対神のほうが、偉大であるということを証明しましょう。このような自爆テロを起すことで、私は聖人になります。神は偉大なり!!・・・」
アナウンサーが代弁した犯行声明が終わりました。
その声明が発表された後に、アトランティスの女王であるサラが、深刻な表情をしながら闘竜場に駆けつけました。
髪は黄緑色のたまねぎ頭で、肌は白くて、シャドーが入っている目をしている。
年齢は三九歳で、青いドレスを着た、品があるおきさき様である。身長が一六〇センチメートルで、体型は痩せている。
かなりカミナリに動揺しています。
サラ。
「カミナリが……、カミナリが……、誰かこのパンドラの箱を管理してくれー!!」
アトランティスの女王であるサラは、パンドラの箱を持っていたのです。
まだ空には、雷雲が立ち込めています。
そこでサラは、王国が開催しているキングスカップの予選である闘竜門で勝利した八名を呼び出して集めました。
グラディエーターのダル・グランディに勝った、アトランティス出身の一八才の男のジャック。
海賊のザキーンに勝った、賞金稼ぎで、ジパング出身で、トレジャーハンターの二四歳の男のサキヤ。
ブラックギャングのワルコに勝った、アルゼンチン出身の、二三歳の女修道士の、シロン。
怪盗ゾットに勝った、ブラジル出身の二五歳の女鍛冶屋のカイラ。
闘竜士のエゲル・ゾレンに勝った、カメルーン出身の、二二歳の猛獣使いの男の、ラングドンク。
忍者のショウに勝った、ロシア出身の、三二歳の男スナイパーのジャスパー。
人造人間のデビロイドに勝った、科学医者で一〇大発明家の一人である、ギリシア出身の、一〇四歳の男のアイザック。
505番隊隊長のザガットに勝った、企業家で、機械の修理工場を経営している、オーストラリア出身の、三〇歳の女社長のジニア・ロヂン。
その、8名が呼ばれた。
サラ。
「登竜門を勝ち抜いて、ベスト8に残った者ならば、このパンドラの箱を預けられる。今、時代は変わった。なんとしてでも人類の代表として、守り抜いてほしい。このパンドラの箱は、ファントムや、ガイストや、悪霊や、モンスターを、再び封じ込める道具です。襲い掛かる人間の敵から、この神の機械を守るのです!」
そしてサラは、以前から世界中で集めていた、マジカルキッズを連れてきて、紹介しました。
サラ。
「この子達は、王国の軍・警察組織である505が選抜した特殊能力保持者です。この土地では、ファントムホルダーと呼ばれています。あなた方も知っているとおり、電話で505を押すと、緊急時に駆けつけてくれるのが、アトランティスの警察組織です。そして戦争の時に実行部隊になるのが、505軍です。505ナンバーブリゲードという組織が、投手任務を遂行する、505番隊だ。SOSという意味も込められています。セキュリティー・オフィス・システムの略だ。その組織が、全世界から探してきた子供たちです。きっとあなたたちの力になるでしょう」
そういって、サラはその四人の子供たちを紹介しました。
料理が得意で、予知夢を見るパードン。スコットランド出身で、小太りな、坊主頭の一四才の男の子です。
宝石の鑑定のみならず、あらゆるものの鑑定をするジュリサ。カナダ出身で、金髪が似合う、十六才のいまどきの女の子です。
星を占う占星術が専門の、テラ・ノヴァ。アイスランド出身で、ボーイッシュな髪形をしている赤毛の、一八才の女の子です。
オシャレ担当の、美容家であるセイン。アトランティス出身で、黄緑色の髪型をした、一五才の、女性的な男の子です。
マジカルキッズの紹介が終わると、サラは大事にしていた一二個の指輪を、ジャックたちに渡しました。
サラ。
「私は国王代理として、あなた方一二人に、ナイトの称号を与えます。そしてこの指輪は、使徒の印として預けます。この指輪は絶対に、他の人に渡してはいけません!! これはあなたがた使徒の印です」
「あなた方には、これから数々の神の試練が待ち受けることでしょう。神は人間の数を、削減しようとしています。人類の数を削減する計画を、進めています。あなたたちは、人類の代表です。神という自然災害から、人類を守るのです!」
その直後。
空の雷雲から、今にもカミナリが落ちるかのような、雷鳴がとどろきました。
そして周りが、『ピカピカピカ』と閃光が走ったと思ったら、次の瞬間に一人の男が、ジャックの前に立っていました。
降り落ちる雨が、滝のようになっています。
『ゴゴゴォォォォォォゴゴ!!』
嵐の状況である闘竜場に、刺客として星の神の一人である男が立ち構えます。
ヘルメス。
「私の名前は、ヘルメス。水を司る、水星の星の神である。早速だが、その石を返してもらおう。」
ヘルメスはオレンジ色の顔をしていて、カールした青色の髪をしている。
知的な感じを受ける、身長が一六五センチメートルほどの男の子です。
手には、神の道具である、アダマス製の伝令の杖を持っている。
伝令の杖は、一本の棒に二体のヘビが、交差しながら巻き付いている杖だ。
それを見たサラは、腰が抜けたかのように崩れ落ちました。
サラ。
「ひぇぇぇぇぇ、刺客が現れたぁぁぁ!?」
そしてヘルメスは言いました。
ヘルメス。
「素直に石を返す気がなかったら、こうしましょう。この闘竜場で、私が、あなた方人間の誰かと決闘して、私が勝ったら返してください。しかし私が負けたら、おとなしく帰りましょう。そうですねー、あなたと対決しましょう。あなたからは特別な波動が、特に感じられますからね。」
そういってヘルメスが指名したのは、ジャックでした。
指名を受けたジャックは、胸中穏やかではない。
こうやって星の神の一人であるヘルメスと、王国騎士になりたてのジャックが対戦することになりました。
冷たい雨が激しく振り落ちる豪雨の中で、ジャックと、星の神であるヘルメスの試合は始まります。
ジャックは、先ほどの死合に勝った脳内のまま、手先を微妙に震わしながら、生か死かの状況で、陶酔している。
お互いの手の内を探る両者。
ジャックは自分の剣で、積極的に仕掛けました。
ジャック。
「とりゃぁぁぁぁぁあ!!」
しかしそのジャックの気合の仕掛けに、ヘルメスは微動だにしません。
ヘルメスは、ダル・グランディと同じように、一瞬の隙を見逃さないように、チャージ戦法で、力をためています。
ジャック。
「くそ・・まったく隙がない……」
そこでジャックは考えました。
ジャック。
「よし、あれを使ってみよう」
ジャックと、ヘルメスの戦いは、ヘビが力をためながらどぐろを巻いて、一瞬の隙を狙っているヘルメスのほうが優勢に試合を進めました。
ヘルメス。
「もうすこし、もうすこし……」
そしてついに、ジャックの集中力が途切れた瞬間に、一瞬の隙が生まれました。
ヘルメス。
「伝令の杖は、その持っている者の気を力にかえて、ビームサーベルのように、オーラを放つ道具なのだよ!!」
ヘルメスは力を込めて、伝令の杖のビームサーベル、でジャックを倒そうとしました。
伝令の杖のビームオーラが、ジャックに向かいます。
しかし。
ジャックの震えが止まりました。
ジャックはなぜか、優勝賞品の魔女のホウキを持って待ち構えていました。
ジャックから、霊気のようなものが発せられています。
ジャックは、ほうきの柄を持って、ホウキの部分を逆さに向けて、カウンターを仕掛けました。
ジャック。
「カ、カウンター発動だァァァ!」
『ビリビリビリビリ!!』
ヘルメスは、カウンターを喰らった衝撃で、伝令の杖を弾き飛ばされました。
ヘルメス。
「何てことだ……。」
この勝負は、ジャックが勝ちました。
ジャック。
「やったぁぁぁぁああ!!」
ジャックの脳内は、快感で陶酔されている。
ジャックは、パンドラの箱に封印されていた、ファントムガイストに憑かれたことで、特殊能力として、狙ったものをひきつける磁石人間になっていたのです。
磁力で、遠くにあるものも引き寄せる能力を授かったのです。
その能力で、遠くにある魔女のホウキを引き寄せた。
ジャックも、ファントムホルダーになっていました。
ヘルメスはルールとして、星の神を破った証として、水星のスターバッジを渡した。
この惑星バッジを九つ全部集めると、地球の代表権が与えられる代物だ。
そしてデュエル(決闘)に負けた敗者として、これもルールで、ヘルメスが使っていた、伝令の杖もジャックたちに譲った。
これで最初の星の神との接触で、見事ヘルメスに打ち勝って、勝利を収めました。
しかし本当の戦いの始まりは、これからです。
ジャックたちは女王のサラから、人類の代表として、使徒として、パンドラの箱を守ることを命じられました。
そして活動資金として、キングスカップの賞金の、10万₦(ゼニ)を受け取りました。
さぁ、ジャックたちの旅が始まります。
もうすでに賽は投げられていたのでした。
第三章 ボン・ボワイヤージュ(良い旅を)
ここは、神々が住む空中庭園。
ゼウス。
「なんたるざまだ……。星の神が人間ごときに負けて、伝令の杖を手放すなどと。」
ヘルメス。
「申し訳ございません……」
ゼウス。
「まぁ良い。過程はどうであれ、結果は見えているのだからな」
「アトランティスという国には、今、国王のエッジオ一二世が失踪していない。それは国王婦人の女王のサラが変貌してしまって、王は距離を置いているかららしい。サラとのあいだには三人の子供が生まれたが、全て女の子だ。アトランティスは男系の子供しか国王にはなれないので、国王も焦っておる。それも仕方あるまい。奴らを潰す良いチャンスだ」
ゼウス。
「しかし太古の昔に、我々神と、怪物たちとで戦った、アストロウォーズ(星戦)のときに、パンドラの箱に封印した不死性を持っている怪物たちが呼び出されてしまった。エターナルモンスターといって、奴らは死なないので、復活してしまったことは厄介だ」
「ヘルメスが敗れたということで、また人間退治をせざるを得なくなった。次は海を司る海王星のポセイドン兄上が、人間退治に行っていくれ。わずらわせて申し訳ないが、石の回収をよろしく頼む。」
「人間であっても、調子に乗らせると面倒だ。パンドラの箱から飛び出た、ファントムガイストが乗り移って、能力が覚醒している可能性が高い。くれぐれも用心することだ」
ポセイドン。
「了解した。この海神であるポセイドンの名にかけて、人間界の秩序を乱すあの石をとってまいろう。」
ポセイドンは、薄紫色の肌をしていて、長髪で、長い髭をした、面長の顔をしている。
ゼウス。
「今は地球の覇者とうぬぼれている人類を、懲らしめなければいけない時代になった。地球の生態系の頂点に立ってられるのも、我々が施したからなのだ。人類はその感謝を忘れているのではないか? 今一度、サルと、人間の違いを噛み締めることだ」
ジャックは、ヘルメスに勝利したあとに、所属しているヴェルベック派閥の師範である、ライマ・ヴェルベックに呼ばれていた。
ライマ・ヴェルベック。
「これといった話だが、ジャックに頼みがある。承知のことだが、今我々は、極右思考が強いダル・グランディ派から狙われている。抗戦中ということで、この子が心配なのだ。いつ息子のライサが狙われるかわからない」
「そこでこの子を預かってはくれぬか? ライサは、正真正銘ヴェルベックの血筋を引き継いだ四代目だ。創始者のライヤの能力を受け継いだ、唯一のひ孫だ。だからお前の実力を見込んで、安全のために、この子を預かってくれ。頼む!!」
この提案を、ジャックは快諾しました。
ジャック。
「分かりました。ライサ坊ちゃんは私が預かります」
ヴェルベック流派を創設したライヤ・ヴェルベックのひ孫に当たるライサ・ヴェルベックは、まだ六才の男の子。
髪の色は茶髪で、坊ちゃん刈りをしている。
素直な目をしていて、元気で明るい、普通のやさしい、あどけない子です。
創始者がライヤで、その後継者の子がライガ。そしてそのライガの子が、ライマです。
ライサ。
「ぼくも、ジャックと遊ぶ」
ライマ。
「よろしく頼む」
しかしジャックたちは、途方にくれていました。
とりあえず、女王のサラが言っていた、人類の敵から、この箱を守ることが使命らしい。
しかしなぜ、星の神が刺客として襲いに掛るのがわかりません。
人類の敵。
それが何を意味するのか?
何も変わらない日常です。
ジャック。
「俺たち使徒騎士団は、これからどうすりゃ良いのだろう?」
ライサ。
「ジャック、遊ぼう!」
ジャック。
「ライサ坊ちゃん、今行きたいところがありますか?」
ライサ。
「ぼくは海に行きたい!!」
ジャックたち使徒は、ライサを連れて海岸線の港に行きました。
そのアトランティス東海岸の港は、無数の船が泊まっているにぎやかな港でした。
今日は透き通った晴れの日で、地平線上にポルトガルの国土が見えます。
空にはカモメがなびいています。
使徒のサキヤは、港に泊まっている巨大な船を見つけました。
サキヤ。
「あれが国際宇宙開発連邦のイセックが作っているアポロニック号だ。アポロニック号は、うわさでは現代版のノアの箱舟として作っているらしいぞ。大災害が起こっても、地球の種を生き抜かせるために作っている最後の砦。大災害時には、この船を移動式の国際連邦の本部にするらしい。」
「この船の設計士は、ブラックバロンという会社で働いている、アトランティス人の天才科学者の、グラッシュ博士だ。グラッシュ博士を中心にして、他の世界一〇大博士も、設計に参加している。使徒にもなっている、アイザックじいさんも担当したはずだ、なぁじいさん?」
アイザック。
「わしも、医療関係で参加しておるじゃ」
そのアポロニック号は、他に泊まっているどの船よりも巨大で、船の中に塔みたいなものが建っています。
そしてサキヤは、この港で珍しいものを見つけました。
サキヤ。
「あっ、あれは島都市だ!? ジャック、あそこをよくみてみろ。あそこの海で、ゆらゆらと遊泳しているのが、ロボットアイランドシティだ。お目にかかるなんてめったにない。ロボットアイランドシティは、昔アトランティスの、ロボットや、ガラクタなどの、ゴミ捨て場だった島だ。しかし一人の科学者が住み着いて、島全体に一つの意志を持たせて独立させた。島自体に人工知能を持たせたのだ。ガラクタを再利用して、一つの意志があるように、島が動き出したのだ。それからこのように、海を遊泳している。それから島はロボットたちの聖地として、ロボットアイ(AI)ランドシティと呼ばれている」
サキヤ。
「改めて自己紹介するよ。俺の名前は近藤サキヤ。トレジャーハンターとして、宝物の発掘や、賞金稼ぎをしている。ジパング人で、髪の色はみどりで、前髪だけオレンジ色に染めている。年齢は二四歳で、身長は一五八センチメートルしかないのだ。登竜門に参加したのは、優勝賞品の、空を飛べる魔女のホウキがほしかったからだ」
その説明が終わると、サキヤは大事なことを切り出しました。
サキヤ。
「なぁー、でも、俺たちの活動に名前をつけないか? かっこいい名前にしようぜ。団長の、リーダーは、あのヘルメスに勝ったジャックにしよう。みんな異議ないな?」
ジャック。
「そ、そんなー、ヘルメスさんに勝ったのも、運が良かっただけですから。それにまだ一八才だし……」
サキヤ。
「そんな謙遜するなよ。俺たち使徒騎士団は、ナイトの称号を受けたので、リーダーのジャックはヴェルベック派だから、ヴェルベック・ナイツというのはどうだ?」
ジャック。
「それはダメです。このライサ坊ちゃんはヴェルベックの血筋を引いているので、命を狙われているから、ヴェルベックの名前ははずしてください」
サキヤ。
「それじゃ、ジャック・ナイツ(ジャックの騎士団)にしよう。みんな異議ないね?」
一同。
「そうしよう!!」
ジャックだけは、照れて、顔が赤くなる。
そんな時に、港の一人の男が、古びた船の中からジャックたちに声をかけました。
ザキーン。
「私の名前は、フック・ザキーン。どうやら見覚えがある顔だと思ったら、やはり登竜門に参加していたあなた方でしたね」
そう言って現われたのは、海賊でノデアール団の団長の、フック・ザキーンです。
登竜門では、サキヤに敗れました。
ザキーン。
「私が登竜門に参加したのは、お宝の魔女のホウキがほしかったからなのであーる。あなた方が持っているその魔女のホウキを、私に譲ってはくれませーんか?」
サキヤ。
「や、や、やつは俺が登竜門で倒した海賊だよ。手の部分がカギ爪になっていて、海賊のトンガリ帽子をかぶっている奴だ。四〇歳くらいのノルウェー人で、髪の毛は長い橙色をして、身長が一八八センチメートルで、背が高い奴だよ。まさに海賊みたいな感じだったけれど、あのころよりも肌が鮮やかになっているような……」
ザキーン。
「私は登竜門でファントムガイストに乗り移られて、特殊な能力を身に着けたのであーる。今の私は、以前の私ではないですよー。私もファントムホルダーなのであーる」
「ずばり私の能力は毒。自分の体の中で、毒を作ることが出来るようになったのであーる。私を攻撃することはできません。なぜなら私は毒を持っているからです。私の毒に感染してしまうのであーる」
「だから私は急所を守ってガードするだけで良い。相手の攻撃をガードすることだけを心がけていれば、試合を優位に進めることができる。あとは私の毒牙に犯されるだけでーす」
「知っていますか? 海の動物の食物連鎖の頂点に立っているのは、あのシャチです。そシャチは、自分よりも巨体な海の動物でも襲う。海の世界の最強動物です。しかしそのシャチでも、毒をもっているフグを襲うことはありません。シャチはフグには弱いのです。つまり毒をもっているフグは、海の世界ではシャチよりも強いのであーる!!」
それを聞いていたサキヤは思いました。
サキヤ。
「海の世界ではシャチよりも強い? フグの毒にも強いもの……、あれがいるじゃないか」
そう言ってサキヤはどこかに出かけました。
ジャック。
「た、確かに、毒を持っているなら、奴を攻撃するだけでこちらに毒が回ってくる可能性がある。だから奴が言うように、急所をガードされたら、こちらが有効な攻撃を繰り出すことができなくなる。ガードをされると、こちらが不利になって、攻めるたびにリスクが高くなる……」
海賊のザーマス団のザキーンは、自分の海賊船の上で雄弁します。
ザキーン。
「さぁ、あなた方が持っているその魔女のホウキを、私に譲ってくれませんか? 何ならこちらから、力ずくでも奪いに行っても良いのであーる」
そう言いながらザキーンは、自分の海賊船から港の陸地に降りようとしていたときに、急に『ザ、ザァァァァァア!!』という音が聞こえてきました。
その音が鳴っているところを見ると、大きな大きなクジラが、口をあけてこの港に現われたではありませんか。
そのクジラの背中には、サキヤが乗っていました。
サキヤ。
「マスキャラの、レンタルショップで借りてきたぞー」
クジラはその勢いで、毒をもっているザキーンを丸呑みしてしまいました。
ザキーン。
「あーーれー」
サキヤ。
「フグの毒は、シャチの大きさの動物には効く。しかしクジラの大きさでは、その毒も致死量には至らない!!」
ザキーンを飲み込んだクジラは、そのあと潮を吹く場所からザキーンを排出しました。
見事ジャックたちは、ファントムホルダーのザキーンを破ったのです。
賑やかな港で行われたサキヤ対、ザキーンの争いで、サキヤが勝ち。その後、しばし港で休憩していたジャック一行。
ライサ。
「なぁ、サキヤ遊ぼう!」
そんな時間をすごしていたら、今度は急にジャックが持っているパンドラの箱が『カタカタ』と動き出したのです。
そして『パカパカ』と、ふたが開いたので、箱の中を見ると、鶏の玉子ほどの大きさの玉子がありました。
ジャック。
「何だこれ!?」
そのパンドラの箱に入っていた玉子は、今にも生まれそうに光っていました。
ライサ。
「わー、これ、何の玉子?」
ラングドンク。
「俺も今まで、いろんな動物の玉子を見てきたけれど、こんな玉子は見たことないな……。」
そんな状況のジャックたちに対して、海岸線から大きな唸り声をとともに、一人の男が大波に乗って突撃してきました。
『ザバー、ザバ、ゴゴゴゴッ』
ジャック。
「何だあれは!? 危ない、伏せろー!」
その場にいた者は、みんな身を伏せました。港にいたジャックたちを、大波が襲いました。
そして再び瞳を開けると、大波に乗ってきた一人の男が立っていました。
ポセイドン。
「私の名前は、ポセイドン。海を司る、海王星の星の神だ」
ポセイドンは、薄紫色の肌をしていて、青い髪をなびかせている。
眉毛が濃くて、顔は面長の、長い下あごひげをたくわえた、身長が二メートルの、長身の漁師の男です。
手には、神の道具であるアダマス製の、三叉のホコを持っている。
ポセイドン。
「私は、あなた方が持っている石を回収しにやってきた。素直に渡したら、乱暴なことはしない。素直に渡すことだ」
ジャック。
「また、石……?」
ポセイドン。
「よし、渡す気がないようなら、君たちの代表と戦って、私が勝ったらその石を渡してもらおう。代表者は君たちで決めるが良い」
そこで名乗りを上げたのは、血気盛んの、サキヤでした。
サキヤ。
「ちょっとあのおっさん怖いけど、さっき勝った勢いで、よし俺が行くわ!!」
ザキーンを倒した勢いで、賞金稼ぎのサキヤが立候補しました。
サキヤ。
「そのヘルメスの、伝令の杖を貸してくれ」
サキヤは自分の気を集中して、伝令の杖に伝えます。
すると伝令の杖から、オーラのようなビームサーベルが放たれます。
サキヤ。
「よっしゃぁぁあ、人類を守るために、やってみるわっ!!」
サキヤ対、ポセイドンの戦いが始まりました。
サキヤはオーラを保ちながら、伝令の杖のサーベルで、ポセイドンを攻撃します。
しかしポセイドンは、槍のような長さの三叉のホコを盾にして守ります。
伝令の杖と、三叉のホコの長さは、三叉のホコのほうが長いです。
そのために、ポセイドンの間合いに入っていけません。
だからサキヤの攻撃では、ポセイドンにダメージを与えられません。
しかしサキヤは、さっきのザキーンとの戦いを思い出しました。
サキヤ。
「ぬぬぬ、(……あっ、ガードを固められて攻撃することができないのならば、間合いを詰めれば良いのだ……)」
サキヤは伝令の杖で応戦するが、徐々にビームサーベルのオーラが弱弱しくなっていました。
その状態を見たポセイドンは、三叉のホコでサキヤを突き始めました。
ポセイドン。
「もうそのオーラの長さでは、届くまい。どんな攻撃でも、ガードを固めたら恐くないのだよ!!」
ポセイドンの突きで、サキヤは吹っ飛びました。
サキヤ。
「うわっ!!」
なんとサキヤは、飛ばされて仰向けに倒れました。
ポセイドン。
「あっはははは、これで私の勝ちだ。無様な人間の顔でも見てやろう」
そういってポセイドンは、サキヤが倒れているところまで行きました。
しかしそこには、サキヤはいませんでした。
ポセイドン。
「ぬ!? いない……」
サキヤ。
「ここだよ!!」
なんとサキヤは、ファントムガイストに取り付かれた能力で、モグラ人間になっていました。
サキヤから、霊気のようなものが発せられています。
サキヤは地面を掘って、ポセイドンがいる場所の下から地上に這い出て、伝令の杖を持って勢いよく飛び出しました。
サキヤ。
「間合いが遠いなら、下からもぐって詰めれば良いのだぁぁよぉ!!」
『ガシィィィィイイイイ!!』
サキヤは伝令の杖で、ポセイドンが持っている三叉のホコを吹き飛ばしました。
この勝負は、サキヤの勝ちです。
サキヤ。
「よっしゃぁぁぁああ!!」
その後にポセイドンは負けを認めて、海王星のスターバッジを渡して、三叉のホコも譲りました。
こうしてすでにジャックたちは、二人目の星の神を倒したのです。
第四章 運命を変える者。
ここは神々が住む空中庭園。
ゼウス。
「まさかヘルメスに続いて、ポセイドンまでもが……」
ポセイドン。
「すまぬ……」
ゼウス。
「これでオリハルコンよりも硬い石で作ったアダマス製の神の道具が、人間の手に渡った」
「いくら対戦相手が、ファントムガイストが乗り移ったファントムホルダーだったとしても、人間に負けるなんて考えられない」
「そもそも人間を作ったのは、我々なのだ。宇宙からこの地球にやってきた、我々を似せて作っただけなのだ」
「古代文明に、現代でも通用する天体観測技術を持っていたのは、我々が教えたからなのだ」
「人間の中には、我々神を崇拝せずに、神が独占していた知恵の実を、食べるようにそそのかした蛇を崇拝している、マルタマ教みたいなものがある。人類に知恵の実を食べさせて覚醒させた蛇をたたえている」
「全世界で二〇〇〇万人ほどの信者がいるマルタマ教の教えは、あながち間違えでもないが、地球が元々大きな玉子だったというのは違う。それは宇宙の初期の姿だ。宇宙のはじまりが、小さな玉子だったというわけだ」
「マルタマ教には法王のファニートがいるが、人間は宗教によってまとまっているように見えて、まとまっていない。実はもろいものじゃ。おかしいと思わないか? 神を信仰するのは平和を求めるためなのに、自分が信仰している宗教とは違うからといって、憎しみ合い、殺し合うなら、神様の存在なんて必要ないだろ」
「人間たちは、自分たちの身勝手によって、戦争という殺し合いを起こしているだけなのだ」
ゼウス。
「わが父のクロノス父上、災のもとになっている石を、再び我々神の戻してやってはくれないか?」
クロノス。
「わかったじょ」
クロノスは、水色の肌をしていて、ゼウスよりも背が高い四メートルある大男だ。
その分、オツムが弱そうな感じがする。
星の神のヘルメスに続いて、ポセイドンも倒したジャック一行は、リーダーのジャックを中心に、車を借りてキャラバン隊になっていました。
ジャック。
「パンドラの箱を守れと言われても、一体いつまで守らなくてはいけないのだ? 活動資金にも限りがあるものだし……」
ジュリサ。
「私は財政担当だけれど、アトランティスの女王のサラさんに、追加支援を頼みますね。」
使徒のマジカルキッズの一人のジュリサは、まだ一六才なのにしっかりしています。
ジャック。
「しかしこの箱を目当てにやってくる星の神が言っている、石って何のことだろう?」
ジュリサ。
「この箱の中に入っている、玉子が何か関係しているのでは?」
シロン。
「玉子……?、あっそうだ! アトランティスの北にそびえ立つガイアン山の頂上付近に存在している、スターポリスという星都に、玉子仙人が住んでいるということを聞いたことがあるわ。その仙人なら、この玉子のことを知っているかも?」
シロン。
「あっ私、改めて自己紹介するね。名前はシルビア・シロン。アルゼンチン出身で、髪がピンク色で、肌が白いの。身長は一六五センチメートルで、年は二三歳。修道士としてマルタマ教を全世界に紹介するために、登竜門に参加したの。ちなみにマルタマ教は、そのアトランティスのスターポリスで発祥した宗教ね」
ジャックたちはシロンの情報を頼りに、玉子仙人に会うために、アトランティスの北部にそびえ立つガイアン山の頂上を目指して進みました。
ジャック一行は、標高三千メートルのガイアン山を、自力で登っていました。
険しい山肌に、天候も悪く、気温が地上よりも低くなって、冷たく感じられる山道を歩いていました。
ライサ。
「わーい。ハイキング、ハイキング!」
ジャスパー。
「ジャック、まだ着かねぇのか?」
ジャック。
「僕に聞かれても知らないですよ……」
しばらくすると、ガイアン山の八合目付近で、少数民族の村が見えてきました。
ジャック。
「良かった、ここで一旦休憩させてもらおう」
ジャックたちは、その村に入村しました。
そこでこの村の住民である女の子に出会ったので、噂の玉子仙人がいる場所を聞きました。
ジャック。
「あの、お嬢さん、このあたりに玉子仙人が住んでいるという話を聞いたのですが、玉子仙人に会いたいので、住んでいる場所を知っているなら教えてください」
すると背が低くて、茶髪の長い髪をした、一三才前後のピンク色の服を着た女の子が、瞳を閉じながら答えました。
ララ・ルキラ。
「私は事故で視力を失いました。ですのでどんな場所かは説明しにくいのですが、玉子仙人ならガイアン山の頂上に立っている、バンデオン神殿でお参りをしているはずです」
ジャック。
「目が見えないのに、どうもありがとう」
ジャックたちはお礼をして、休憩したあとに、早速女の子のララから聞いた、頂上に立つバンデオン神殿を目指して登り始めようとしました。
しかしシロンが、この村で見たことがある人物を見つけたのです。
シロン。
「あっ、あの人、登竜門で私と戦った人だ!!」
シロンが見つけたのは、ブラックギャングのボスであるワルコでした。
シロン。
「あの人は、自分が立ち上げたブラックギャングという宗教を広めるために、登竜門に参加していると言っていた。元は私と同じマルタマ教徒で、ブラックギャングもマルタマ教から派生した宗派なのです」
「髪は長めの青色で、剃りを入れている彼よ。年は二二歳で、目が大きくて、黒の服を着ているイスラエル人なの。しかし決して悪ぶっているのではなくて、人間から嫌われている黒い動物を集めて、黒い動物の種類は一番生命力が強いと言って、同じ命を色で決めずに、黒い動物も保護をしようと訴えていたわ。それがブラックギャングという名前の意味らしい」
ワルコ。
「私はブラックギャングのワルコ団長である。ブラックギャングは、マルタマ教から派生した。蛇だけではなく、他の黒い動物も敬っている宗派です」
「私は巡礼のために、このマルタマ教の発祥の地である星都にやってきた。登竜門には、マルタマ教および、ブラギャン教を広めるために参加した」
「昔この土地は、星使いと呼ばれるギラ族たちの天体観測所であった。しかしガイアン山が三〇年前に噴火して、この周辺の大部分が埋もれてしまった。そして今も奇跡的に残る遺跡が、頂上にそびえ立つバンデオン神殿だ」
「しかしこのスターポリスに脈々と教え継がれている、その星使いのギラ族の密教がある。その密教は、運命の三女神を崇拝している。マルタマ教を忘れ、ラケシス・クロートー・アトロポスという運命の三女神にうつつを抜かしている」
「私は昔、大天使だったが、神に反逆して、地上に落とされた堕天使のルシファー様を崇拝している。人間に知恵の実を食べさせて、人類を覚醒させたからだ」
「しかし星使いたちの考え方は逆で、神を崇拝している。運命の三女神を崇拝しているから、蛇を崇拝しているマルタマ教とは反している。矛盾しているのだ。人は黒いものを忌み嫌う考え方を持っているが、それは人間から見た目線だ。地球から見たら、人間の方がよっぽど悪だ。黒い動物はとても美しく、強いのだ」
ワルコ。
「このマルタマ教の発祥の地に、異教徒の考え方が少しでも存在していることはいけないのだ!! その一番強い力を、この村にも見せてやろう。私のファントムは、操る動物を凶暴にすることが出来る能力だ!」
ワルコはそう言うと、マスキャラを収納しているタマガットという圧縮装置を取り出して、その中から巨大なマンモス象を呼び出しました。
パケットは、一五センチメートルの、玉子型をしたマスキャラを入れておく圧縮キャッチャーです。
そしてそのマンモス象の背中に乗って、ワルコはこの村を破壊するために、マンモスを操ります。
ワルコ。
「体が大きいものが、動物の中で一番強い。これは、自然界の常識なのだよ!!」
それを見たシロンは、たまらず止めに入りました。
シロン。
「私もマルタマ教徒。同じ教徒どうしが争うなんておかしいよ!!」
しかしワルコは、村を破壊することをやめません。
これは、もう戦わなくては、この村が潰されてしまいます。
そこでジャックは決意しました。
ジャック。
「この魔女のホウキで戦ってみるさ!!」
ジャックは参戦しました。
しかしマンモス象の体は巨大で、ジャックが暴走するマンモス象を止めにかかっても、力では太刀打ちできませんでした。
マンモスの巨体から振り下ろされる攻撃が、ジャックたちに脅威を与えています。
シロン。
「さばく攻撃は、振り下ろされる攻撃に弱い。しかし振り下ろされる攻撃は、長いもので突かれる攻撃に弱いはずだ!!」
シロンは、自分が持っているマスキャラが入っているパケットを取り出して、この場で呼び出しました。
そしてそのマスキャラは、マンモスに向かって突撃しました。
ワルコ。
「象はな、体の大きさからトラよりも強いのだよ! 今更何を出されたって、マンモス象には怖くはないのだよ!!」
しかしシロンが呼び出したのは、トゲを攻撃に使うヤマアラシでした。
ワルコのマンモス象は、ヤマアラシに対して、足を振り下ろします。
『チクッ!?』
ヤマアラシのトゲを踏んだマンモスは、ものすごく痛がって、のたうちまわって逃げました。
その反動で、ワルコはマンモス象の背中から振り下ろされます。
ワルコ。
「イテッ……。そんな馬鹿な…!?」
このワルコとの勝負は、シロンが勝ちました。
ワルコとの勝負に勝ったジャックたちは、ガイアン山の頂上に向かう安全なルートを、難を逃れたスターポリスの村人に聞きました。
すると村人は、バンデオン神殿までの道先案内人として、ある少年を紹介しました。
ウルル・ギラ。
「私の名前はウルル・ギラです。星使いのギラ族の末裔です。何か困ったことがあったら、何なりとわたくしめに、なんなりとお申し付けください」
ウルル・ギラは、青色と、黄色が混ざった髪をしていて、鼻が高くて、ギラ族の衣装を着ている。一四五センチメートルの、一三才の男の子です。
優しい感じがするが、芯が強そうで、遠くでも見通せるような目をしている、見習い星使いです。
ジャックたちは、ウルル・ギラに案内されて、明かりを持ってガイアン山の頂上に向かっています。
その途中で、ジャックが星使いについて聞きました。
ジャック。
「ウルルくん、星使いって、何の仕事をしているの?」
ウルル・ギラ。
「人の未来は、ある程度星占いで予測することができます。だから不幸なことが起こることがわかったならば、それを回避して、人生をハッピーにするのです」
「私たちギラ族にとっては、未来を予測することよりも、過去を予測することのほうが難しいのです」
「この辺はもともと、ガイアン山が噴火する前までは、星都と呼ばれる結構栄えていた都市だったのです。マルタマ教が発生して、あのアストロウォーズも、太古の昔にここで行われたというのが、最近の調査で証明されているらしいですよ」
「しかし都市の大部分は、みなさんご存知のガイアン山の大噴火で埋もれてしまった。ほとんどの人は、ここからセントラルシティに移り住んでいった。今では星使いのギラ族と、お金がなくて移住することができない一部が残っているだけです」
ジャック。
「村でララ・ルキラという女の子に会ったのだけど、あの子はウルルくんの彼女なの?」
ウルル・ギラ。
「えっ!? なぜそのことを…!?」
どうやらジャックが冗談で言ったことが、図星でした。
ウルル・ギラ。
「でもララは、数年前に事故で視力を失ったのだ。その事故の時に、お金がなかったから、手術をすることができなくて、失明したままなのだ。それがきっかけで、明るかったララがふさぎこんでいる感じで……。あの時僕が、ララの未来を占っていたらと思うと辛い」
星使いのウルルと話している間に、ジャックたちはガイアン山の頂上に立つ、バンデオン神殿に着きました。
ウルル・ギラ。
「バンデオン神殿に何をしに来たのかはわからないですが、ここがスターポリスの遺跡で、ギラ族が星の動きを観測するために使っていた、天体観測所のバンデオン神殿です」
周りはもう薄暗くなっていて、空には星の輝きも見えます。
ガイアン山の頂上から見る夜景は、星の光の輝きが間近で見れて、セントラルシティのネオンと挟まれて、とても美しかったです。
そして神殿の片隅に、男の老人らしきものがいました。
老人。
「待っておったぞ」
ジャック。
「あなたが、玉子仙人ですか?」
玉子仙人。
「無論。わしゃが玉子仙人じゃ。そのパンドラの箱に入っているエルピスの玉子を、よくみせてくれ」
しかしジャックが、そのいかにも仙人みたいな老人に、パンドラの箱を渡そうとした時に、村で出会った失明した少女が走ってきて言いました。
ララ・ルキラ。
「その人に、その箱を渡したらダメっ!!」
急に目が見えないはずのララがやってきて、ジャックに忠告しました。
ララ・ルキラ。
「私はファントムガイストに乗り移られて、ファントムホルダーになりました。私の能力は、千里眼。目が見えなくても、心の瞳で万物が見えます。その人は、玉子仙人に化けた偽物です!」
謎の老人。
「よくぞ見破った。わしゃの名前はウラノス。天を司る、天王星の星の神の一人じゃ。どうやら人間たちの可能性にも、賭けるべき価値がありそうじゃの」
ウラノスは黄緑色の肌をしていて、頭がハゲた白髪姿で、長い鼻ヒゲをした、一七〇センチメートルの男の老人です。
手には、神の道具であるアダマス製の魔法の杖を持っている。
ウラノス。
「君たちはその玉子が示しているとおり、救世主かもしれぬ。希望の玉子はすでに君たちの手にある。健闘を祈る」
ウラノスはそう言うと、ひょろひょろっと、天高く空に舞い戻っていきました。
ちょうどそこに、本物の玉子仙人がお参りにやってきました。
玉子仙人は、現代的な服を着ていて、仙人らしい格好ではなかった。
玉子仙人。
「君たちは誰じゃろ?」
ジャックは持っているパンドラの箱に入っている玉子を見せました。
玉子仙人。
「何っ!? こ、これは、エルピス(希望)の玉子ではないか……。戦乱の世に誕生するという希望の玉子じゃ。これを持っているということは、お主らが人類の希望ということじゃ」
すると玉子仙人は、手元からお金を取り出して、ジャックに言いました。
玉子仙人。
「ここに一〇万₦(ゼニ)ある。その玉子をコレクションとしてじぃに譲ってはくれぬか? 家に帰ったら、貯金しているお金がある。どうかじぃに売ってくれ!」
しかしさすがに、ジャックは玉子を譲れません。
そんなやり取りをしていると、ガイアン山の頂上の地面が、『ゴゴゴゴゴッ』っという大きな音がしています。
ジャック。
「何だ!? 何だ、噴火か!?」
『バリバリバリッォォォォオオ!!』
その轟音とともに、一人の大男が地面の割れ目から現れました。
そしてジャックたちに向かってきました。
クロノス。
「オイラの名前は、クロノス。土を司る、土星の星の神だ。おめーらが持っている石を取りに来たど」
ジャック。
「石……!?」
クロノスは四メートルの巨体の持ち主で、肌は水色で、筋肉隆々の、赤いモヒカンの髪型をしていて、ゴリラのような顔をしています。
その手には、神の道具であるアダマス製の金剛のオノを持っている。
クロノス。
「ごちゃごちゃ言ってねぇーで、石を渡せ! 渡さねぇーなら、こっちから行くど」
そう言ってクロノスは、戦いを待ちきれないように、ゾウのような巨体でジャックたちを踏みつぶそうとします。
ジャック。
「うォォ、危ない!?」
そしてクロノスは、持っているオノを振り下ろしながら、ジャックたちに向かいます。
そのオノは巨大で、リーチが長い。
だから武器を持って対峙しても、クロノスには届きません。
クロノス。
「オイラ、行くどぉ」
クロノスはその調子で、シロンに向かいました。
シロン。
「きゃ!?」
シロンは間一髪、クロノスのオノの攻撃を避けました。
しかしシロンは思い出します。
突くヤリよりも、さばく剣が強い。
さばく剣よりも、振り下ろすオノが強い。
振り下ろすオノよりも、突くヤリが強い。
シロンは決意を決めました。
シロン。
「ゾウよりも、ヤマアラシの方が強い。わかったわ、あれを使おう!!」
シロンはあえて、クロノスの前に出ました。
シロン。
「こっち、こっち。」
シロンは、クロノスを誘導するように動きます。
クロノス。
「何でぇ…この女」
クロノスはその挑発に乗って、シロンを追いかけます。
そしてシロンを、山の頂上の崖っぷちに追い込みました。
クロノス。
「ひっひっひっひっ。もう終わりだじょ」
クロノスは持っているオノを、奥が崖ということで、少し手前に振り下ろすために、持ち上げました。
クロノス。
「これで、終わりだじょ!」
しかしシロンは、隠し持っていた三叉のホコを取り出して、クロノスに対して突き上げます。
シロン。
「手前に振り上げた分、振り下ろす動作に遅れが出たね。私のファントムは、持っているものを自由自在に伸縮することができる能力。伸びれ、三叉のホコ!!。」
シロンから、霊気のようなものが発せられています。
シロンの力で伸びた三叉のホコは、クロノスが持っているオノの取っ手にぶつかって、弾き飛ばしました。
『ギュイィィィィン!!』
クロノスは持っているオノを飛ばされて、負けを認めました。
クロノス。
「うぬぬぬぬ。オイラの負けだじょ」
この勝負は、シロンの勝ちです。
シロン。
「やったぁぁぁぁぁあ!!」
シロンの能力は、ヒーリングによって、持つものを伸びちじみさせることができる。
ジャックはクロノスから、土星のスターバッジと、金剛のオノを受け取りました。
オノは重いので、引きずりながら持っていきます。
クロノスとの戦いのあとで、ウルル・ギラはジャックたちに語りました。
ウルル・ギラ。
「運命を知ることが出来たならば、運命を変えることが出来るのです。僕もララも、与えられた人生という時間の中で最善を尽くします」
「星使いとしては、今世界中で語られているような、世界最終戦争が起こることはないでしょう。神と、人類が戦って、人類が絶滅することはありません」
「我々ギラ族が崇拝している運命の三女神も、我々人類を導いてくれています。運命の三女神は、人類が進化することに手助けしてくれています。あの最高神のゼウスさえも、運命の三女神は従えられないのですよ」
そしてジャックは、星の神が言っている石について、玉子仙人に聞きました。
玉子仙人。
「石? 神様は、そのスターバッジのことを言っているのではないじゃろか? オリハルコンよりも硬い、アダマスの石でできているし。じぃは、玉子専門なのじゃ」
こうしてジャックたちは、山を降りました。
第五章 セインの告白
ここは神々が住む、空中庭園。
ゼウス。
「何たるざまだ。星の神が人間ごときに負けるとは……。石は、石はまだ戻ってこんのか!」
クロノス。
「す、すまんじょ」
ゼウス。
「私には感じるぞ。我々が進めている人類削減計画を知って、人間の中からそれに対抗しようとする動きが」
「人間なんて、地球に比べたらほんの小さなものじゃ。その人間が集まって山になったところで、運命に流されて、従う生き物でしかない」
「アトランティスの四天王が、今動いている。その四天王は、アトランティスの国王のアトラン・エッジオ一二世。そして世界で二千万人の信者を誇る、マルタマ教の法王のファニート。そしてアトランティスの軍・警察組織のトップである、505司令長官のファビウス大佐。そして世界の経済を動かしていると言われている、企業家で商業王のランドリューク。これが、アトランティスの四天王だ」
「特にいま気をつけなければいけないのが、破壊殺傷兵器を使うことができる、ファビウス大佐だ。人間がたどり着いた化学兵器の核兵器を持っている」
「我々は神とはいえ、核兵器を使われたらひとたまりもない。その他にも人類は、我々神と戦うことになったら、不死身のモンスターも使うだろう」
「人間は、権力者であればあるほど、核シェルターという盾を持っている。その盾を持っていたら安心するからだ。もし戦争が起こったとしても、勝つことはないが、負けることもない」
「しかし人類の科学技術が、なぜか我々の科学技術の水準にまで達っしている。これは不思議は話だ。さては技術を漏洩させたものがいるやもしれぬ。それなら困った話である」
ゼウス。
「さぁ、我が息子のアレスよ。今度はお前が、人間退治に行ってはくれぬか?」
アレス。
「わかりました父上。俺様が、解決してやろう」
アレスは、薄ピンクの肌をしていて、髪が赤く、モミアゲの長さが特徴的な、血気盛んな男の若者です。
クロノスに勝ったジャックたちでしたが、まだ星の神が言っている石のことは解決していません。
そこで使徒の、石に詳しい鍛冶屋をやっているカイラに聞いてみました。
カイラ。
「石? 確かに石については詳しいけれど、あいつらが探している石は知らないわ。」
「あたい、改めて自己紹介するね。名前はルカ・カイラ。年は二五歳でブラジルの出身さ。髪の毛は桃色の短髪で、丸顔の、肌の色は褐色さ。身長は一七〇センチメートルあって、女の中では背は高い。ジャックナイツの中では、一番の力持ちさ。くれぐれもあたいを怒らして、ガイラにさせないようによろしく」
カイラ。
「登竜門に参加したのは、アトランティスで採れるオリハルコンで作った武器の調子を確かめるためさ。」
「そして鍛冶屋として最強の武器を作って、抑止力として、二度と愚かな戦争が怒らなければ良いなと思っている。」
カイラ。
「あたいは元々、アトランティスの505軍の兵士だったのさ。警察組織で警備隊の、505番隊ではなくて、505軍の兵隊として、実行部隊で働いていたのだ。しかし実際に戦争に参加するのが怖かった」
「そしてあたいが参加した戦争で、ラビン・カノンという女の子が大怪我を負った事件がニュースでも流れていただろ? あの戦争に参加していたのさ。大人の身勝手で起こした戦争で、子供が被害を受けるのがたまらなかった。相手国の子供だって、子供には何の罪がない。戦争が起こらなかったら、あの子は怪我をせずに済んだのさ」
「それからあたいは軍の兵隊から足を洗って、こうやってアトランティスで鍛冶屋をやってるのさ」
それを聞いていたマジカルキッズのセインが、女の子らしい声で言いました。
セイン。
「カイラさんって、優しいのですね」
ジャック。
「(カイラでも怖いのか、殺し合いが怖いのは、俺だけじゃないんだ)」
しかしジャックは、アトランティス人として、セインをどこかで見たことがあるのです。
ジャック。
『この子は、どっかで見たような記憶が……』
パンドラの箱を持っているジャックたちに、まだ刺客は来ません。
そこでライサ坊ちゃんに、遊びに行きたい場所のリクエストを聞きました。
ジャック。
「まだ時間がありそうだし、ライサ坊ちゃんは、どこか行きたいところはありますか?」
ライサ。
「僕は、不思議なチョウチョを探しに行きたーい!」
そこでジャックたちは、アトランティスの北部にそびえ立つガイアン山から、ふもとにある樹海に入っていきました。
その森は、神秘的で同じ光景が続く、周りと気温が数度低くなっているところでした。
ライサ。
「チョウチョ。チョウチョー」
そんな中でいきなり、こんな男の声が聞こえてきました。
男。
「余の顔を見忘れたか!!」
しかし森の中で、その声が発せられる人の姿がわかりません。
しかしカイラだけは、見覚えがある男の姿を見つけました。
カイラ。
「あっ! あいつだ。登竜門であたいが倒した怪盗ゾットだ!! あいつは怪盗のくせに素性を明かして、幼い頃に生き別れになった双子の兄を探していたのさ。そのために全世界で注目されている登竜門で、顔を出して、あたいと戦ったのさ」
「ゾットは、メガネをかけて、帽子をかぶっているが、顔は面長で、紫色の中くらいの長さの髪をしているあの男さ。アトランティス人で、身長は一七五センチメートルで、スーツを着ている三五歳の男だ。森に紛れ込むような変身を得意にしている怪人なのさ」
ゾクラ・ゾット。
「よくぞ見つけてくれた。さすが私を倒しただけのことはある」
「しかし登竜門に参加しても、兄のゾクラ・ゼット兄さんには会えていないがね。しかも怪盗のくせに素性を明かしたものだから、警察の505番に追われているな」
「たしかあなた方は、キングスカップの優勝賞金をもらっていますよね。それを私の逃亡資金として譲ってはもらえないでしょうか?」
カイラ。
「そんもの、ダメに決まってるだろーが!!」
ゾクラ・ゾット。
「それならこうしよう。この森にいる昆虫の中で、樹液を争うバトルの結果を予想しましょう。そのバトルの予想で私が勝ったなら、お金を譲ってください。もし私が負けたなら、あなた方が知りたい情報を教えます。これならどうですか?」
ジャック。
「(知りたい情報? 石のことについて知っているかも)」
ゾクラ・ゾット。
「そうですねー、ここに二匹の虫がいます。スズメバチと、チョウチョのオオムラサキがいますね。この二匹で、樹液を争うバトルで、どちらが勝つかを当てる予想のゲームをしましょう。」
「さぁ、ジャンケンで勝った方に選択権があります。このゲームであなた方を、ゾっとさせてあげます」
イシは、ハサミに強い。
ハサミは、カミに強い。
カミは、イシに強い。
ゾクラ・ゾット。
「さぁ、後出しなしよ、ジャンケンぽい!!」
ゾットは、パー(カミ)を出しました。
カイラは、チョキ(ハサミ)を出しました。
ジャンケンは、カイラが勝ちました。
ゾット。
「あーしまった。ジャンケンで負けてしまった」
カイラ。
「よっしゃゃゃゃあ。当然、チョウチョなんかよりも強い、スズメバチをあたいは選ぶね」
ジャンケンで勝ったカイラがスズメバチを選んだということで、ゾットはオオムラサキを選んだことになります。
そして実際に、樹液を出している木に行って、樹液をめぐるバトルを見守りました。
カイラ。
「いけー、スズメバチ!!」
この勝負は、ハチが圧勝すると思いきや、なんとオオムラサキは、その自慢の羽をバタバタと使って、ハチを追い払いました。
なんと樹液を独占したのは、オオムラサキでした。
ゾクラ・ゾット。
「はっはっはっはっ。余の勝ちである。なんなら他の昆虫で試しても良いですよ。オオムラサキは、あの昆虫界で最恐を誇るスズメバチよりも強いのですからね。勝てるのならの話ですがね。お金は私のものです。はっはっはっはっ……」
ちょうどそんなところに、ライサ坊ちゃんがある虫を捕まえて、やってきました。
ライサ。
「じゃ、カマキリ!!」
セイン。
「きゃ!? カマキリ」
なんとライサが捕まえてきたカマキリは、あっさりとオオムラサキを捕らえて食べてしまいました。
カマキリは、チョウチョの天敵です。
ゾクラ・ゾット。
「ま、ま、まさかカマキリを持ってくるとは……。余の負けである……」
この勝負は、ライサの勝ちです。
ジャックは、怪盗ゾットが負けたということで、知りたかったことを聞こうとしました。
ゾクラ・ゾット。
「仕方がない、知りたかったことを教えましょう。登竜門でも言わなかったことですが、私の双子の兄の、ゼット兄さんはとても頭が良くて、小さい頃からコンピューターをいじっていました。私と、兄さんを見比べるポイントは、右頬に手術の傷の痕があるところです。兄さんは事故で傷を負って、その手術費用が出せなくて、手術費用を負担してくれる里親に預けられたのです。それ以来私は兄さんに逢っていない。」
カイラ。
「お前の兄貴の話なんて、聞いちゃいねぇーよ!」
こうしてゾットは、帰って行きました。
カイラ。
「何でぇ、ゾットのやつは大したことがなかったな。しかしセインは男のくせに、女みたいな声を出していたな。もっと気合を入れないと、この状況でパンドラの箱を守りきれないぞ」
セイン。
「わ、私、実は女の子なんだ」
一同。
「えぇぇぇえー!?」
セーヌ。
「私の本当の名前は、セーヌ。スペルは同じよ」
それを聞いてジャックは、今まで気になっていたことを聞きました。
ジャック。
「あなたはもしかして、アトランティスの国王夫妻との間で生まれて、隠されたとされるセーヌ一三世ですか?」
セーヌ。
「そうです。一五年前に女王のサラから生まれた子です。アトランティスは、男系の子供しか国王になれないということで、女の子として生まれたことを隠されて、男の子として育てられました。しかし多分私は、父であるエッジオ国王の血は引き継いでおりません」
カイラ。
「じゃ、もしかしてエッジオ国王とは、腹違いの子供ということ?」
セーヌ。
「いえ、私は多分、サラのクローン人間の一番目だと思います」
一同。
「えー!?」
カイラ。
「ま、まぁ、人間は誰にだって、人に言えない過去はあるさ」
そんなところに、ジュリサの携帯電話に、情報が入りました。
『プルルルルルッ・・・プルルルルルッ・・ピッ』
ジュリサ。
「は、はい、もしもし……。はい、あっ、そうですか。はい、ありがとうございます」
携帯電話を切ったジュリサは、ジャックたちに伝えました。
ジュリサ。
「私が掛け合っていた用件で、確約が取れました。アトランティスを牛耳っている、四大権力者の四天王のうちの、三人に協力関係が得られました。アトランティスの国王代理の女王のサラと、マルタマ教の教皇のファニート法王と、軍と警察組織の最高指揮官であるファビウス大佐の協力関係が結ばれました」
シロン。
「ファニート法王には、私がかけあったの」
カイラ。
「ファビウス大佐には、あたいがかけあったのさ」
ジュリサ。
「しかし世界の経済さえも牛耳っていると言われている商業王のランドリュークの協力は、まだ得られていません。彼の協力を得られたら、アトランティス全体の支援を得られることになります。ですのでなんとかランドリュークの支援を取り付けて、人類の代表をしている我々が動きやすくするべきです」
カイラ。
「ランドリュークといえば、ブラックバロン・エンタープライゼスという総合会社で大儲けして、その資金でサン・レナードという秘密結社を作ったという話だ。そこの会長に就任したのは、キリスト教徒による地球支配を持続することが目的らしい。何やら、レオナルド・ダ・ビンチを崇拝している団体らしい。それに国際連邦のイセックも影で操っているのもランドリュークという噂さ」
そんな話をしているところです。
なにやら周りの緑が『ザワザワ』と、騒ぎ始めました。
すると地面が、地震が起こったのではないかという揺れを伝えて、ジャックたちを襲いました。
ジャック。
「ど、どうしたのだ!?」
『グラグラグラグラァァァ!!』
すると地下からマグマが吹き出したかと思うくらいの、火の玉が現れて、その火の玉の中から、一人の男が出てきました。
アレス。
「私の名前はアレス。火を司る、火星の星の神だ」
アレスは、オレンジ色の短い髪をしていて、もみあげが長くて、眉毛が濃くて、ほりが深い。肌はピンク色で、身長が一八〇センチメートルの男です。
神の道具であるアダマス製の金剛のヨロイを着ている。
アレス。
「待たせたな、人類の代表たち。私はゼウス様の命令で、君たちを倒すためにやってきた。さぁ、早速、私と勝負してもらおうじゃねぇーか」
その言葉を聞いて、カイラが真っ先に手を挙げました。
カイラ。
「あたいはさっきの昆虫バトルで、不完全燃焼だったから、体がウズウズしてるんだい。あたいが戦わせてもらうよ」
その果敢な姿を見たジャックは、感心します。
ジャック
「カイラは女の子なのに、決闘を受けるなんて勇敢だ……」
アレス。
「それなら話が早い。さぁ早速、勝負をしよう」
カイラ対、アレスの戦いが始まりました。
カイラは鍛冶屋ですが、ファイティングスタイルは素手です。
カイラ。
「えい、やぁぁぁぁぁああ!」
カイラの拳がアレスにヒットしました。
会心の一撃です。
しかし金剛のヨロイで守られているアレスは、びくともしません。
アレス。
「はっはっはっはっ、このヨロイは、どんな攻撃の衝撃も吸収するように作られている。あなたがどんなに力があったとしても、その素手では、私の肉体にダメージを与えることはできません」
しだいに、カイラの攻撃は沈黙しました。
カイラ。
「うぬぬぬぬ……。あっ、そうだ、衝撃を吸収するカミは、イシに強い。しかしカミは、ハサミに弱いはずだ。チョウを倒したカマキリのように!」
カイラはクロノスの金剛のオノをつかみました。
カイラ。
「ちょっと、このオノを借りるよ!」
しかしそのオノはとても重たくて、人間が扱えるものではありません。
アレス。
「そんなくそ重いものに、何な意味があるのかい。そんなものはそもそも、人間程度のものが使えるものではないのだよぉぉお!」
しかしカイラは奮起して、人格が、カイラからガイラにかわりました。
ガイラ。
「うりゃゃゃぅゃゃあ、私のファントムガイストの特殊能力は、火事場のくそ力ぁぁぁあ!!」
なんとガイラは、あのクロノスのオノを持ち上げました。
ガイラから、霊気のようなものが発せられています。
アレス。
「な、何…?」
ガイラ。
「そのヨロイがカミのように衝撃を吸収するのなら、ハサミのようなものでぶった切ったら良いのだ!!」
ガイラはアレスに向けて、金剛のオノを振り下ろしました。
金剛のオノの一撃が、アレスのヨロイに響きます。
『バリバリッ、パキンッ!!』
ガイラの一撃を食らった金剛のヨロイは、正面の部分だけがパッカリと、縦に割れました。
そしてアレスのヨロイは、着脱しやすいようになって割れてしまいました。
これでこの勝負は、ガイラの勝ちです。
アレスは素直に、火星のスターバッジと、金剛のヨロイを手渡しました。
しかしアレスは、最後にこのままではゼウスに顔向けできないということで、一人の使徒にターゲットを絞って攻撃をしました。
アレス。
「勝負には負けましたが、私はセーヌさん、あなたの過去を知っています。あなたは人間のクローンで、昔はコピー人間の一番目ということで、ファーストダッシュと呼ばれていた」
「サラのクローンの子供は三つ子だった。あなた方はサラのおなかの中で、三人が育っていた」
「あなたは母親のお腹の中にいる胎児の頃に、三つ子の他の胎児に食べられそうになりましたね。あなたは不幸中の幸いで、助かりましたが、もう一人の胎児は、ゼウスによって呪われた方の胎児に食べられました」
「ゼウスがクローン人間に対して、自然の摂理が乱れるということで、三つ子のうちの一人が呪われた。あなたはそのことを、今でも辛い思い出として持っていますね」
「あなたはクローン人間だから、母親の時の記憶も持っていますね。あなたの母親は、死に対して、特別に怖かったはずです」
セーヌ。
「や、やめてぇぇぇえー!!」
『パリーン!!』
これが人間の光のカーテンのオーロラが壊れた音です。
アレスの精神攻撃で、セーヌは自分を守るオーロラが壊されました。
オーロラは、オーラの塊で、光のカーテンによって魔法攻撃を跳ね返す力があります。
マジカルキッズは、この魔法攻撃から身を守る、オーロラを持っている人材が選ばれています。
アレス。
「はっはっはっはっ、これでゼウス様のもとに帰れる」
そう言ってアレスは火の玉に包まれて帰って行きました。
そこには、セーヌが身を丸めて、怯えながら昏睡状態になっている姿があるだけでした。
第六章 霊界旅行
ここは、神々が住む空中庭園。
ゼウス。
「またしても人間にヤラレタだと……。何たるざまだ!!」
「……まぁ、済んでしまったことはもう良い。私は最終的に、結果が得られれば良いのだ」
ゼウス。
「パンドラの箱を持っているジャックナイツというやからに、私が一五年前に差し向けた呪いに、呪われた小娘がいるな。そのクローン人間の母親のサラには気を付けなければいけない。その小娘は、サラのコピー人間だ」
「私は人間のサラがクローン人間を作ることを聞いて、計画を破綻させるとめに、まだサラのお腹にいる段階の、胎児の時に呪った」
「サラのお腹には、三人のクローン人間が育っていた。しかしクローン人間技術は、我々神の領域に迫るものとして、自然の摂理を超えてしまうと思ったのだ。そこで私は、一人の呪った胎児を操って、残りの二人の胎児を食べさせようとしたのだ」
「しかしあの運命の三女神が、人間の科学の可能性を支持して、三人すべての胎児を助けた」
「その三人が、ファーストダッシュ(コピー人間の一番目)の、セーヌ。私が呪って他の胎児を食べさせようとした、セカンドダッシュ(コピー人間の二番目)の、セクラ。そしてセクラに襲われて、肉体の一部を食べられた、サードダッシュ(コピー人間の三番目)の、ゼシリアだ。」
「しかし運命の三女神は、私でも従うことができぬ。私も運命に従わなくてはいけない時が来るかもしれぬな。運命を変えられるのは、星使いだけか……」
ゼウス。
「今度はウラノスじいさんが、人間退治に行ってはくれぬか? 神と人間の違いを見せつけてくれ。」
ウラノス。
「あい、わかった」
ウラノスは、黄緑色の肌をしていて、頭は禿げた白髪姿で、杖をついて、腰を曲げた老人だ。
ジャックたちは、精神破綻をしている昏睡状態のセーヌを抱えて、アトランティスの樹海をさまよっていました。
その中に、人が休めそうな洞窟を見つけたので、その樹海の洞窟で休憩をするために移動しました。
その穴は横穴式で、人が多勢は入れるくらいの大きさで、まだ奥に進むと進めそうだが、怖くてその先には行ってません。
外の光がまったく入らない薄暗い空間です。
ジャック。
「セーヌ姫、元気を出して!」
ラングドンク。
「なぁ、ジャック。これからこの姫を抱えて、どうする気なのだ?」
ジャック。
「とりあえずセーヌが目を覚ますまで、ここにいようよ」
ラングドンク。
「しかし物理的な傷なら計算することはできるが、彼女の怪我は精神だぜ」
ジャスパー。
「この姫が、戦える状態まで回復するのを、ここで待つつもりなのか? 団長のジャックや、これからどうするんだよ!」
ジャック。
「待ってあげようよ!」
ジャスパー。
「こんな団長だから、ダメなんだよ!」
しばしの休憩時間が過ぎます。
ラングドンク。
「オラも動物の治療はできるが、人間の場合は……。オラ、改めて自己紹介をするが、名前はラングドンク。カメルーン出身で、二二歳の男だ。肌は褐色で、オレンジ色のモヒカン頭をしている。身長が一九〇センチメートルあって、顔が長くて、鼻がデカいのが特長だ」
ラングドンク。
「なんだか今のセーヌは、肉体と精神が乖離しているように見える」
そのさなかで、先に洞窟にいた人物が話しかけてきました。
エゲル・ゾレン。
「何だ、騒がしいと思ったら、登竜門に参加していたあんたらか」
ラングドンク。
「あっ、こいつは、オラが登竜門で倒した闘竜士のエゲル・ゾレンだ。エゲル・ゾレンは、髪が金髪で、オールバックにしている孤独な男さ。鋭い目をしていて、背が一八〇センチメートルの、グルジア人の、四〇歳のこの男だ。手にはドラゴンを刺す剣を持っているだろ」
「ショーとしてドラゴンを殺すパフォーマンスをしている許せねぇーやつだ。ドラゴンだからといって、動物を殺して良いわけがない! オラは動物使いだから、動物たちの気持ちがよくわかる。なんせオラが登竜門に参加したのは、絶滅が危惧される動物の保護を訴えるためだったからさ」
エゲル・ゾレン。
「私は闘竜士として、力試しのために登竜門に参加したくらいだから、体がウズウズしていて仕方がないのだ。だから誰か私と、対決してくれないか?」
ラングドンク。
「今は、おめぇーみたいなやつと、争っている時間はないのだ」
エゲル・ゾレン。
「じゃ、こうしよう。私がクイズを出す。それに答えられたら、そこにいるお嬢さんを助ける方法を教えてあげよう。これならどうだ」
ラングドンク。
「本当か? それなら聞こう」
カイラ。
「コイツもゾットみたいに、どうでも良い情報をくれるだけなのじゃねぇ~か?」
エゲル・ゾレン。
「ここに一匹の、ドクロを巻いた毒蛇がいます。その毒蛇を食べても平気な、二匹目の動物がいます。そしてその二匹目の動物を食べる、三匹目の動物がいます」
「しかしその三匹目の動物は、最初の毒蛇に食べられてしまいます。三匹目の動物の天敵は、毒蛇です。さてその明らかにしていない二匹の動物は何か?」
ラングドンクは、動物使いです。
しばらく考えて、答えました。
ラングドンク。
「その毒蛇を最初に食べる動物は、多分ハリネズミだ。ハリネズミはその体毛の針で、蛇の攻撃をカウンターで跳ね返すから、蛇を苦手にしていない。それにハリネズミは、蛇の毒を中和する能力を持っている」
しかしラングドンクは、三匹目の動物がわかりません。
ラングドンク。
「う~む……」
そんなときに、ライサ坊ちゃんが現れて、遊んでいました。
ライサ。
「なぁ、ラングドンク。この棒で棒遊びしよ?」
このライサの発言で、ラングドンクはひらめきました。
ラングドンク。
「あっ、そうだ。ハリネズミを食べる動物? 最強のカウンターを持っているハリネズミでも、頭を使って倒せば良いのだ。そうだサルだ! サルは棒という道具を使ってハリネズミを倒す。そして食べてしまうと聞いたことがある。それにサルは、蛇に弱い。ジャンケンのような関係で、サルは、ハリネズミには強いが、蛇には弱い」
「わかったぞ。二匹目の動物はハリネズミで、三匹目の動物はサルだ!」
エゲル・ゾレン。
「うぬぬ……、正解だ。さすが私を倒しただけのことはある。そのお嬢さんのことだが、このジパング製の霊界具現化発生装置を使って、肉体から離れた魂のオーブを霊界から連れ戻すしかないだろう。これは君らにくれてやる。それではサラバだ」
そう言ってエゲル・ゾレンは、霊界具現化発生装置を置いて去っていきました。
エゲル・ゾレンが去ってしばしの時間が経ったあとでも、セーヌは昏睡状態です。
アイザック。
「ワシは医者だが、アレスの精神攻撃で、セーヌの魂は心を閉じて、肉体から離れてしまっている。もうこれはリスクは高いが、霊界発生装置を使って、霊界探査をして、霊界にさまよっているセーヌの魂を取り戻しにに行こう!!」
霊界具現化発生装置は、ジパングの設楽カンパニーが開発した装置です。
アイザック。
「しかし気を付けなければいけないことがある。霊界には、あの星の神の一人であるデス・ハデスが住んでいる。そして地獄の番犬である、頭が三つあるケルベロスも住んでいる。しかしいずれ星の神と戦う運命にあるのなら、直接こちらから戦いに挑むこともありなのかもしれん」
「この霊界具現化発生装置を使う者として適しているのは、未成年の子供だ。未成年だと、純粋に霊界を具現化することができる。発生してから、霊界探査をしよう」
「そこで未成年の、ジャックと、ジュリサと、パードンと、ノヴァが、深層心理の中に存在している霊界に行ってくれ」
「霊界具現化発生装置で探索することが出来る深層心理の世界は、九階層ある。一番下が地獄。その上が冥界。その上が黄泉の国。その上が三途の川。その上が霊界。その上が仙界。その上が桃源郷。その上がエデンの園。その上が天国と同一視される、空中庭園。今回は第五階層の霊界を探索しよう」
「多分セーヌの魂は、第五階層の霊界でさまよっていると思う。そこからほかの階層に移動していないだろう。そのフロアを支配しているのが、デス・ハデスだ。くれぐれも別の階層に移動しないように。そして時間をかけて移動していると、精神に負担がかかるからな」
ラングドンク。
「長時間、霊界に居座らないように。そしてハデスに出会ったと思ったら、オラが強制的に参加するから安心してくれ」
最後にアイザックは言いました。
アイザック。
「霊界にはハデスの他に、ケルベロスも住んでいる。そいつは厄介だ。くれぐれも、背中を向けると追いかけてくるから気を付けることだ」
そしてアイザックは、洞窟の中で霊界具現化発生装置を起動しました。
『プシュー!』
装置の周りは、白い気体のようなものが発生して、モヤモヤとした煙が漂いました。
そしてジャックと、ジュリサと、パードンと、ノヴァが瞳を閉じて、霊界探査のために集中しました。
しだいに四人は、霊界に行くために睡眠状態になりました。
そして四人は、完全に眠りに入って、霊界に逝ってしまいました。
ジャック。
「う・・う・・ん、・・。はっ、ここは、もうここは、霊界か? ジュリサ、パードン、ノヴァ。みんないるよな。さ、さぁ、探そう。セーヌの魂を!」
四人が霊界になれ始めて、セーヌの魂を探索している頃。
ジュリサ。
「なんかジャックさんって、セーヌさんのことになると、妙に気合が入りますよね」
ジャック。
「そ、そんなことないですよ」
しかしジャックは心の中で思っていました。
「(セーヌ姫は、僕が絶対に助けるからね)」
ジャックたちは、白くぼやっとした空間を、セーヌの魂を探しながら、さまよっていました。
そんなジャックたちに耳に、唸り声のような音が聞こえてきました。
「ヴぅぅぅぅぅう。」
ジャックたちがその音が鳴っている方向を向くと、噂の地獄の番犬である、犬の頭が三つあるケルベロスがいました。
「ヴぅぅぅぅぅぅう。」
ジャック。
「し、しまった。ケルベロスに出会ってしまった。しかし奴に、絶対に背中を向けるなよ」
しかしパードンは、怯えていました。
パードン。
「ケ、ケルベロス!? うわっこわい!」
パードンはそう言いながら、ケルベロスに背中を向けて、反対の方角に逃げてしまいました。
ケルベロス。
「ヴぅぅぅぅう、ワンワンワンワン!!」
ケルベロスは、パードンのあとを追いかけようとしました。
そこでジャックと、ジュリサと、ノヴァは、別々の方角に逃げて、頭が三つあることを利用して、追いかけるケルベロスを拡散させようとしました。
それにつられてケルベロスは、一瞬、頭が行く方向と、体が行こうとする方向がズレて、混乱しました。
ケルベロス。
「ヴぅワ!? ワンワンワンワンン!」
しかしケルベロスは、獲物をパードンに定めて追いかけました。
ジャックたちも走っています。
ジャック。
「パードンが逃げるから!!」
真っ先に走り出したパードンは、運動音痴ながら、全力ですべての力を込めて走ります。
すると『ドンッ』と、パードンは何かにぶつかって、こけてしまいました。
これで、ケルベロスはパードンに追いつきました。
しかしケルベロスは、パードンがぶつかった者を認識すると、途端に命令が解けたかのように、その場からすぐに離れていきました。
パードンがぶつかったのは、一人の男性でした。
するとその男性は、パードンに対して声をかけました。
その男。
「坊や、大丈夫かい? ケルベロスなら、吾輩が追い払ったよ」
パードン。
「あ、ありがとうございます。お、おいらの命の恩人です。お名前はなんと申しますか?」
その男。
「吾輩の名前は、デス・ハデス」
パードン。
「デ、デス・ハデス!?」
ジャックたちがパードンに追いついて、ついに星の神の一人であるハデスに出会ってしまいました。
デス・ハデス。
「吾輩の名前は、デス(死神)・ハデス。地下を司る、冥王星の星の神である」
デス・ハデスは、黒い髪色で、七三分けの髪型をしている。鼻が長くて、肌が白い。一七五センチメートルで、紫の服を着ている。
頭には、神の道具であるアダマス製の隠れカブトをかぶっている。
そのハデスに対して、ジャックは聞きました。
ジャック。
「僕たちは、人間のセーヌの魂のオーブを探しに来ました。あなたが仕切っているこのフロアに、セーヌという人間の魂は存在しているのでしょうか?」
デスハデス。
「あぁ、そうだ。セーヌの魂は、ゼウスに言われた通りに、吾輩がここに大切に管理しているよ」
なんとセーヌの魂は、ハデスが直接、厳重に管理していました。
ジャック。
「そのセーヌの魂を、僕に渡してくれませんか?」
デスハデス。
「それは出来ない。なぜならゼウスに、探しに来ても渡すな、と言われているからね。絶対に欲しいのなら、吾輩と戦って、勝つしか方法はないがね」
ジャック。
「そうですか……。それなら僕が、戦いましょう」
ジャックは震える躰にムチを打って、無理矢理にでも闘争本能を高めようとします。
ジャックは、震える手で、魔女のホウキを手に取りました。
ジュリサ。
「ジャックの奴、妙に張り切っちゃって……」
ジャックと、デス・ハデスとの戦いが始まりました。
魔女のホウキを持ったジャックは、ハデスとの間合いを詰めます。
ジャックは、イケる、と思った瞬間に、力みました。
ジャック。
「エイャャャャャア!」
しかし次の瞬間、ハデスの姿は消えました。
なんとハデスは、隠れカブトによって姿を隠せるのです。
そんな状況に、ジャックはうろたえます。
ジャック。
「そ、そんな。消えている。どこにいるのだ…?」
デス・ハデス。
「シャャャャャャアァァ」
『バシィィィィィィィン!!』
ハデスの攻撃がジャックに命中しました。
ジャックはその攻撃で、吹っ飛ばせれました。
デス・ハデス。
「これで決まりだな。吾輩はね、この隠れカブトをかぶって、負けたことはないのだよ!!」
その時です。
『バガガカカカギャァァァァンン!!』
そのものすごい音と共に、金剛のヨロイを着た使徒のラングドンクが、強制的に霊界に入ってきました。
ラングドンク。
「ジャック、待たせたな。現実世界の眠っているジャックの顔の眉間にシワが出来たことで、デス・ハデスに出会ったことがわかったぜ。デス・ハデスさんよ、ここからはオラが参戦するぜ」
ラングドンクの目は、血走っています。
こうして、ラングドンク対、デス・ハデスの戦いが始まりました。
デス・ハデス。
「何度やっても同じこと。吾輩が隠れカブトをかぶって、カウンター戦法をとったら、誰も傷つけられる者なんていないのだよ!」
そう言ってハデスは、再び姿をくらましました。
しかしラングドンクは、静かに目を閉じて、何やら波動を感じ取っているようです。
ラングドンク。
「わかる! ハデスの位置がわかる。このアイザックじいさんから借りた、魔導放射線を計る機械の波動計を見ていたら、ハデスがいる方角になると波動計の針が振れる」
そして次の瞬間に、ラングドンクは、ハデスに対して攻撃を仕掛けました。
ラングドンク。
「そこ!!」
『ピシッ!』
ラングドンクの攻撃は、ハデスにヒットしました。
しかし。
デス・ハデス。
「ふん。甘いな、たとえ私にヒットしたとしても、このくらいでは致命傷にはならぬ」
なんとラングドンクの拳は、デス・ハデスをとらえましたが、ハデスは防御態勢を取っていました。
デス・ハデス。
「だから言っただろ。吾輩がカウンター態勢を取ったら、百パーセント勝てるのだよ!!」
『バシィィィィィィン!!』
なんとラングドンクも、ハデスの攻撃で吹っ飛ばされました。
そして着ていた金剛のヨロイも脱げ落ちました。
デス・ハデス。
「これで我輩の勝利である。次は君たち子供が、吾輩と戦うのかね?」
これを聞いたパードンは、怯えました。
パードン。
「う、ぇぇぇぇええん」
しかし。
ラングドンク。
「ふっふっふっふっ……」
デス・ハデス。
「ん、貴様は何を笑っているのかね?」
ラングドンク。
「オラのファントムガイストは、人間爆弾。自分の細胞を、爆発する爆弾に変えることができる。時には時間差でもね」
ラングドンクから、霊気のようなものが発せられています。
『バッツバンッ!!』
次の瞬間。
ハデスのところで、爆発音がしました。
なんとラングドンクが念を送ると、ラングドンクの爪の細胞が残っていたハデスのもとで、人間時限爆弾が破裂しました。
その爆発で、ハデスは吹っ飛ばされて、隠れカブトも脱げ落ちました。
デスハデス。
「吾輩の、ま、負けか……」
こうしてジャックたちは、霊界で見事にデス・ハデスを倒しました。
そしてハデスから、冥王星のスターバッジと、隠れカブトと、セーヌの魂のオーブを受け取りました。
そして現実世界のアイザックが、霊界具現化発生装置を止めて、ジャックたちは完全にこの世界に戻ってきました。
現実世界に戻ってきたジャックは、セーヌの胸に魂のオーブを入れ込みました。
そしてセーヌの、精神回復を待ちました。
しばらくすると、セーヌは次第に意識を取り戻しました。
セーヌ。
「う、うぅぅぅ。はっ、あぁ、わたし、悪夢を見ていたようだわ……」
ジャックはセーヌが回復したことを、誰よりも喜んでいました。
こうしてセーヌは再び、使徒の中に入って旅を続けることができました。
第七章 アストロマンス
ここは、星の神々が住む空中庭園。
ゼウス。
「どいつもこいつも、何をしておる!」
デスハデス
「す、すまぬ……」
ゼウス。
「奴らは着実に力をつけつつある。我々神が、強引にサルから進化を引き上げたことだけはある。人類とは、我々別の星から、地球にやってきたエイリアンが、サルとヘビを掛け合わせて作った生物なのだ」
「ヘビの細胞核を、我々宇宙からやってきた異星人の科学技術で、サルの卵子に授精させて人間を作った。だから人類は、ヘビの獰猛さと、サルのずる賢さを兼ね備えている。同じ人類同士が憎しみあって戦争が起こるのはそのためだ。今でも、大昔から、世界各地で蛇を崇めている信仰が残っているのは、そのためだ。現代で同じように作ったのが、ドラゴリアンだ。つまりブレンドモンスター技術だ。そのときに我々神は、その生命体を自分たちに似せて作ったのだ。だから我々宇宙人と、人間は似ているのだ」
ゼウス。
「サルは、いくら進化しても、サルはサルだ。人類と、チンパンジーの、共通の祖先である類人猿の化石が見つからないのは当然だ。我々が強制的に引き上げたのだからな。類人猿から、人類に進化したというのが、進化論だ。しかし肝心の、その進化の過程をつなぐ生物の化石が見つかっていない。それがミッシングリンクと呼ばれている」
「それが見つからないのは、地球人がまだ持ち合わせていない科学技術で、我々神が一気に類人猿から、人類に、進化を促したからだ。だからいま人間たちが必死になって探している、ミッシングリンクは見つからない。だから進化論が埋まるわけがないのだ。人類は類人猿から進化したのではなくて、神が進化させたのだ」
「我々は、科学技術を使って、半永久的に生き続ける。寿命がないのだ。その神の科学技術を、人間に伝授した輩がいる。つまり裏切り者だ。今は誰だかわからないが、見つけたら懲らしめてやる!」
ゼウス。
「ウラノスじいさん。なぜ人間退治に行かなかった?」
ウラノス。
「いや、人間の方からハデスに行ったもんじゃから、わしゃ……」
ゼウス。
「まぁ良い。次はアフロディーテ、君の出番だ。行ってくれるな?」
アフロディーテ。
「はい。お望みとあらば」
アフロディーテは、薄黄色の肌の、鮮やかなピンク色の長い髪をした、絶世の美女です。
ジャックたちが、こちらから星の神のデス・ハデスに戦いを挑んだ試合で勝利して、セーヌの魂のオーブを持ち帰った。
そしてセーヌは、その持ち帰った魂が戻されて、今は元気になって生活することができている。
ジャック。
「何故か、セーヌのことがとても気になる。もう大丈夫なのかな?」
ジャックは、セーヌのことが気になって、セーヌを訪ねました。
ジャック。
「セーヌ姫、まだパンドラの箱を刺客から守る旅を、続けられる?」
セーヌ。
「うん。今は大丈夫よ。心配してくれてありがとう……。でも私、母上様のクローン人間だから、母上の記憶も少しあるの。それも少し思い出しちゃって……。セクラが、ゼシリアを襲うところも……。私は怖かったの……」
ジャック。
「うん。もう思い出さなくても、良いよ。セーヌ姫と話せて安心した」
この二人の様子を見て、ジュリサは不機嫌になります。
ジュリサ。
「なにさ、あの二人……」
ジャックは、霊界旅行で活躍してくれた、ノヴァのところにも行く。
ノヴァは一人で、勉強をしていました。
ジャック「ノヴァ、あっ、勉強中だったかい?」
ノヴァは、勉強道具たちをしまう。
ノヴァ「え、いや、この世界のことについて、調べていただけよ。それより何? 用事でもあるのでしょ?」
ジャック「あ、いや、ただお礼を言いたくて、ノヴァは女の子なのに、こんな危ない旅に付いてきてくれて、セーヌの魂の時は、ありがとね。これからも人間の代表として、最後まで頑張ろうね。それでは、勉強熱心なことは肝心だ」
そう言い残して、ジャックは去って行きました。
ノヴァ「…女の子……人間…」
旅を続けるジャック一行を、星の神が襲ってくる気配がありません。
そこでジャックは、再びライサが行きたいところのリクエストを聞きました。
ライサ。
「ぼく、飛行機が見たい!」
ジャック一行は、ライサの希望通りに、アトランティス空港に行きました。
アトランティスの空港は、島の西側にあります。
広い平地に空港は建てられていました。
そこから見る大西洋の地平線は、壮大でした。
無事空港に着いたジャックたちは、しばらく飛行機を眺めることにしました。
ライサ。
「うわぁー。すごーい!!」
ライサは空港で、キャッキャッと、はしゃいでいます。
しかしそんなところに、見覚えがある顔の人物を、外の飛行場で見つけました。
その人物は、飛行機のエンジンに鳥が入らないようにする仕事の、鷹匠という鷹を扱う人ともめていました。
ジャスパー。
「あっ、あいつは、俺と登竜門で戦ったショウだ。俺が登竜門に参加したのは、キングスカップで優勝して、世界王者になるためだったが、あいつは病気の母親の薬代を稼ぐためだと言っていたな。ショウは茶色の髪を流した髪型をしていて、目は切れ長の、面長の顔をしているアイツだ。身長は一六五センチメートルで、忍者の格好をした、ジパング人の一九才の男だ」
ジャスパー。
「改めて俺も自己紹介するな。名前は、ゼクシン・ジャスパー。髪は緑色で、長髪を後ろで束ねている。目は青色で、視力が良い。ロシアの出身で、身長は一八二センチメートルで、二九歳の、スナイパーの男だ」
ジャスパー。
「俺が行って、仲裁してくるか」
飛行場の外に、ジャックたちも行きました。
近代的な建物と、見晴らしが良い景色の場所です。
ショウ。
「カラスを銃で撃ってイジメるな!」
管理人。
「鳥がエンジンに入ったら、飛行機の安全が保たれないのだよ。カラスは、鷹を恐れないから、この銃で撃たないといけないのだよ!」
ショウと、管理人が、争っています。
その中で、管理人はショウの頭を小突きました。
『カン!!』
すると、みるみるショウの様子が変わりました。
ジャスパー。
「まぁまぁ、二人共……」
ショウ。
「フン、フン、フン、フン。おいら、怒ったどー!」
怒りに燃えたショウは、いつもとは違う様子になりました。
それを見たジャスパーは、慌てています。
ジャスパー。
「あっ、まずい。登竜門の時みたいに、テングになってしまう。登竜門では、拳銃を使えないから、テングになったショウに手こずったのだよ。テングになってしまったら、誰もコイツを止められないぞ!」
ショウ。
「フン、フン、フン。おいらは病気の母親の薬代を稼ぐために、科学者の人体実験を受けた。お金をもらうために、実験台になったのさ。そのなごりで、おいらが怒ると、移植されたテングのDNAが活発になって、テングに変身するのだ!!」
「おいらの能力は、カラスの翼が生えて、カラステングに変身することができるのさぁぁあ!」
カラステングに変身したショウは、天高く舞い上がって、空中からジャックたちを攻撃し始めました。
ショウ。
「うりゃぁぁぁっあ」
ジャック。
「セーヌ、危ない!」
ジャックは思わず、そばにいたセーヌをかばいました。
ジュリサ。
「・・・」
ここでスナイパーのジャスパーが、自分の銃を取り出して、ショウを標的にしました。
ショウ。
「カラスはね、賢くて、強くて、仲間を大事にするから、生態系の頂点に立つような生物なのだよ!! しゃゃゃゃゃぁぁあ」
『パンッ!!』
ジャスパーの銃の乾いた銃声の音がしました。
見事ジャスパーの玉は、狙い通りに、ショウの急所を外して、ショウの体の一部をかすりました。
そしてジャスパーは、持っていたマスキャラを入れているパケットを取り出して、中からカラスの天敵の、軍鶏を呼び出しました。
空中で玉がかすったショウは、落ち込んで怯えています。
ショウ。
「うっ、うっ、うっ……。ぐすっ、怖いよー。ぐすっ」
ショウは今度は、泣き始めました。
すると、みるみるカラスの翼が閉じてきて、空中から降りてきました。
そしてショウは、今度は、泣き始めたことで、だんだん水の怪物であるカッパに変身しました。
ショウ。
「おいら、怒るテングに、泣くとカッパに変身するんどすー」
そこを狙っていたジャスパーは、地上に降りたショウに詰め寄って、シャモを使って忠告しました。
ジャスパー。
「もうこんな、乱暴な真似はするなよ」
シャモ。
「コケッ!」
ショウ。
「……ガッテンしょうちの助」
私の名前は、バロン・ランドリューク。
いつもメガネをかけて、本を読んでいる。
私も今年で、もう六九歳じゃ。
もう腰が曲がり始めて、髪の毛も白髪姿になっとる。
しかし髪の毛を、オールバックに決めることは忘れとらせんわ。
いつもお決まりのエメラルド色の服を着て、杖を持っている。
杖は私の、第三の足じゃ。
世間では私のことを、アトランティスの帝王と呼んでおる。
しかしいつ見ても、レオナルド・ダ・ビンチ先生の作品は素晴らしいのぉ。
芸術とは、心を麗してくれる。
イタリアが生んだ、最高の巨匠じゃ。
ダ・ビンチ先生は、遠い昔から現代の我々に、教えてくださる。
過去は過去のもの。未来は自分たちのもの。
再び人類は、サルから人間に進化したように、人類から、選ばれた人類に覚醒する必要がある。
ゼウス神が進めている人類削減計画の実行まで、あまり時間がない。
私とパートナーシップを結んでいる、グラッシュ博士の船の完成はまだかね?
私はあの船に乗れる、選ばれた人間なのだよ!
私にはあまり時間がないのじゃよ。
病という怪物は、本物の怪物なんかよりも恐ろしいものじゃ。
ブラックバロンという会社で稼いだ、余るほどの金で、健康的な若い肉体を買えればよいのじゃが、そういうわけにもいかぬ。
私は、金の使い道を間違えたのかね?
万能ワクチンだって、金があるからナンボでも手に入る。
しかしワクチンは、予防するのに効果を発揮するが、進行中の病にはあまり効かない。
私は、永遠の命にはこだわっていない。
もうすでに、バベルの塔は完成しつつある。
あとは、燃料の調達だけが問題じゃ。
冥土の土産に見たいものじゃ。宇宙という空の上で輝く星たちを。
こちらは、ショウを破って、しばし空港観察をしているジャック一行。
ジュリサ。
「やっぱりまだみたい。まだアトランティスの帝王と呼ばれている、ランドリュークさんから、ジャックナイツへの支援の確約が取れていない」
ジャック。
「どうしたものか……、こちらはアトランティスを代表して、刺客と戦っているというのに」
そんな時に、空港の空の上から、とてもまばゆい光り輝く物体が、降りてきました。
ジャック。
「ま、まぶしい、セーヌ姫、大丈夫か?」
『プシュウぅゥゥキラキラキラキラ!!』
するとそのまばゆい光が止まって、ジャックたちに向かってきます。
しばらくするとその輝きが止まったので、ジャックたちは目を開けることができました。
ジャックたちが目を開けると、そこには非常に美しいひとりの女性が立っていました。
アフロディーテ。
「私の名前は、アフロディーテ。金(機械)を司る、金星の星の神よ」
アフロディーテは、髪は長めのピンク色。肌は薄い黄色で、ドレス姿で肌を露出している。顔は絶世の美人顔で、身長が一六五センチメートルで、フェロモンを漂わせている女性です。
足には神の道具である、アダマス製の空飛ぶ靴を履いている。
アフロディーテ。
「あなた方には恨みはないですが、ゼウスの命令により、骨抜きにしてあげるわ」
アフロディーテの美貌を見た男性陣は、
男性陣。
「……はい。骨抜きにしてください!」
セーヌは、アフロディーテにメロメロの男性陣の中に、ジャックが入っているのを見てがっかりしました。
セーヌ。
「ジャックさん、ひどーい!」
アフロディーテ。
「さぁ、誰が私と、対戦する?」
男性陣。
「はい。はい。はい。はい。はい」
男性陣は、我先にと立候補しています。
女性陣。
「・・・」
しかしその男性陣の中に、男前のジャスパーは加わっていませんでした。
アフロディーテ。
「さぁ、男共。私を捕まえてごらんなさい」
そう言ってアフロディーテは、自分が履いている空飛ぶクツで空中に舞い上がりました。
男性陣。
「待ってくださーい!」
するとジャックは、空を飛べる魔女のホウキで、追いかけようとしました。
しかし他の男も、自分も空を飛んで追いかけようと、魔女のホウキの取り合いになっています。
男性陣が、もめ始めました。
男性陣。
「俺に魔女のホウキを貸せー!」
アフロディーテ。
「おほほほほほほ。人間たちの醜い争いを見るのが楽しいわ」
その様子を見たジャスパーは、思いました。
ジャスパー。
「このままではいけない。俺が何とかしてやる!」
ジャスパーは、自分の銃を取り出して、アフロディーテを狙い始めました。
しかしアフロディーテは、その動きをキャッチしていました。
アフロディーテが飼っている鷹を呼び出して、ジャスパーを襲わせました。
アフロディーテ。
「さぁ、狩りなさい。生身の人間たちを」
ジャスパー。
「うわっ、何だこの鳥!? やつは鷹匠か!」
ジャスパーの攻撃は、アフロディーテが事前に芽を摘みました。
アフロディーテ。
「空を飛べる能力があれば、生態系の上位に立てるほどのものなのですよぉぉお!!」
そこでジャスパーは、ハデスの隠れカブトをかぶりました。
隠れカブトをかぶることによって、アフロディーテに自分の存在を隠しました。
そしてジャスパーは、自分の銃を取り出して、空中で舞っているアフロディーテを標的にしました。
ジャスパー。
「猟師には、犬狩りが強い。犬狩りには、鷹匠が強い。鷹匠には、猟師が強い!!」
ジャスパーは、狙いをアフロディーテの空飛ぶ靴にしました。
ジャスパー。
「俺のファントムガイストは、イーグルアイ。どんなに離れているところでも、標的にすることができる。顔が良い奴は、相手に顔の良さを求めないものなのだよ!!」
ジャスパーから、霊気のようなものが発せられています。
『パンッ!!』
見事にジャスパーの玉は、アフロディーテの空飛ぶ靴に命中しました。
するとフラフラと、アフロディーテが地上に堕ちてきました。
空飛ぶ靴を脱がされたアフロディーテは、戦意喪失です。
アフロディーテ。
「うっ、わ、私の負けですわ……」
この勝負は、ジャスパーの勝ちです。
アフロディーテは、素直に金星のスターバッジと、空飛ぶ靴を手渡しました。
アフロディーテが去ったあと。男性陣が正気に戻りました。
ジャック。
「あ、もうアフロディーテさんはいないのか……。セーヌはケガはなかった?」
セーヌ。
「もう、知らない!」
ジュリサ。
「・・・」
アフロディーテを倒したあと、星の神はもう残り二人になりました。
ジャックたちはあと二回、守り抜くことだけを考えていました。