【凛々しい美少女(ただのビビり)の場合】
……くそぅ、次からは頑張って長くします。
と言うかこのままだと、こっちの話は勘違いもの路線なりますね、はい。
……さて、どうしようか。俺は困っていた。それはそれは、かなり。
簡潔に言うと、行くあてが無くなったからだ。何故かと言うと、今日から三日間ギルドは休みらしい。
勤労感謝の日みたいなな感じで、皆さんゆっくり羽を伸ばしましょうらしい。まあ俺にはそもそも、その羽を伸ばす場所すら無いのだけどな。
さっきのオッサンにでも着いて行けば良かったな、いや、いろいろと辛すぎるか。
さっきから街をあてもなく歩き回っているが、男達がチラチラとこちらを見てくるのは美少女だからだろう。そのまま家に泊めてくれ、頼むから。
まあ、そんな事をしたら絶対に確定的に襲われるよね、うん。ひとまずそれは省こうか。
……と、あれはなんだ? 何か女の子が必死に叫んでるんだけど。誰か助けてやれよ。……ふむ、目が合ったようだな。
「す、すみません!! そこの美人なお姉さん!」
「……俺の事か?」
「お、俺……? と、とにかく! 助けてくれませんか!」
可愛らしい顔立ちをした、地球で言う高校生ぐらいの女の子がこちらに向かって必死に頭を下げてくる。
「まあ落ち着け。何を助けて欲しいんだ?」
「その、私の友達が今ゴブリンに襲われていて……。ギルドも今日は休みであてがないんです!」
……ふむ、一つ教えてやろう君。完全に人選ミスだよ! 何で俺にそれを言ったんだよ、あそこに居るムキムキのおっちゃんとかで良いじゃないか!
と言おうとした口はしかし、何故か別の動きをしてしまった。
「それはどこだ? 早いうちに行かないと間に合わないぞ。連れて行ってくれ」
「……は、はい! ありがとうございます!」
……俺の口よ、何をしてくれているんだ。戦闘力が並の人間以下であろうこの俺が行っても犠牲者が増えるだけだろうが!
恐るべし、日本人の押しの弱さ……。ダメとハッキリ言えないんだよね……。
まあ、言ったからには着いていかなくては……ってあの子速っ! 凄いスピードじゃないかおい!
「おい、ちょっと待て!」
急いで追いかけ始める俺。……ん? どんどん距離が縮まっているな。この身体、身体能力ヤバいだろ。
あっと言う間に街を出て、二人で草原を突き進む。
「――それにしても、風の魔法で身体強化をした私と素で同じ速さなんて凄いですね! やっぱり私の目に狂いはなかった!」
犬耳が生えていたらピョコピョコと動いていそうなテンションで話しかけてくる。勿論、猛ダッシュをしながらである。……それよりも、魔法でドーピングした人と互角ってなんだよマイボデー。しかもまだ余裕があるぞ。
それにしても、なんでこの子はこんなにテンション高いんだろう。
「――それよりも、後どのくらいで着くんだ? 友達が危ないだろう」
「もうすぐ着きます! ……あ、見えてきました!」
そう言って女の子が指差した先には確かに、緑色の皮膚をした気持ち悪い生き物が五体、一人の美少女を取り囲んでいる。美少女は、魔法か何かでゴブリンとの間に半透明な壁を作っているようだ。
だがそれも、もう長くは持たないだろう。それは、苦悶に満ちた美少女の表情が物語っている。
「……ふんす!」
俺は、猛ダッシュの勢いそのままにゴブリンの一体にドロップキックで突っ込む。それに気付いたゴブリンは、ギョッとして回避行動を取ろうとするがもう遅い。
助走約三キロメートルと、もはや助走ではない距離をつけて放たれたドロップキックは、ゴブリンに命中すると…………その体を上半身丸ごと消し飛ばした。
……え? いやいやおかしいだろ! 感触も何も無かったぞおい。
しばしの間呆けていた回りのゴブリンだが、我に返って一番の脅威である俺を標的にして襲い掛かかる。
「トゥ! トゥ! ヘァー!」
それを俺は、さっき消し飛ばしたゴブリンが使っていたのであろう地面に落ちていた、刃こぼれマックスな短剣を拾って無茶苦茶に振り回す。
すると、この明らかにバグなスペックを持つ体のおかげか、真空波が出現した。そう、ソニックブ○ムだ。
「ギィィイイ!?」
ゴブリン達は耳に不快な悲鳴をあげると、真っ二つに切断された。それも、一人残らず。
「はぁ、はぁ……」
……これは、俺がやったのか。
――そう、俺がコロシタ。
そう認識すると共に込み上げて来た強烈な吐き気をすんでのところで押さえ込むと、俺は膝から崩れ落ちた――。
ソ○ックブームって伏せ字いるのかな……?
私の場合どうしてもパイナップル頭の、軍人なのにストリートで戦う人が思い浮かぶから困る。