《元美少女(ただのへんたい)の場合》
Q.この小説ってわざわざ男の方と女の方を一緒にしなくて良いよね? 分けて書けよ。
A.もう少し待ってください。ちゃんと二つの世界は絡むんです! ……きっと、恐らく、多分。
P.S.そろそろタイトルがネタ切れだよ……。
食卓と言えば普通は、家族が揃って和気藹々と食事をしている模様を思い浮かべるだろう。まあ中には、食事は黙ってする所もあるかもしれないが。
そんな食卓の筈が、何故か異様に重苦しい雰囲気に包まれていた。
座っているのは二人の男女。その男の方である私が、主にこの雰囲気を生み出しているのだろう。
「……あ、あのー」
この重い沈黙を破ったのは、向かい合う男女の女の方であり、私が今居る身体の元の持ち主である少年の妹さんだった。
「本当に、兄さんなんですよね……?」
……さて、どう答えたものか。それにしてもこの妹さん、いきなりど真ん中直球とはやるわね。
「そうね……。この身体はれっきとした貴方の兄、西園寺 圭のモノよ。ちゃんと血も繋がっているもの」
「この身体? ……じゃあ兄さんの中身は、一体誰なんですか?」
中身か。この娘、やはり中々に鋭い。目を向けると、たとえ独り言でも文字通り一字一句聞き逃さない、とばかりに食い入るような目で見つめて来る。
かと思えば、少しずつ目をそらし始めた。その頬は、微かにだが朱に染まっている。……何を照れているのかは、私の知るところではない。
「……なんでこんなに格好良く。しかも髪と目も色が変わっているし……」
何やらボソボソと呟いているようだが、ここは軽く流そう。
「そうね……。ここではないどこか遠くの世界の、しがない四番目の元王女よ」
「お、王女様!? それに、元って……?」
この質問はちょうど良い。これを一緒に喋ってしまえば、中身が入れ替わった事の説明と、その入れ替わった私の事も一緒に纏められる。
「それはね……」
こうして私は洗いざらい話した。初対面の他人と言っても差し支えの無い彼女に全てを。
「……と言う訳。これで解ったかしら?」
「そう、ですね……」
彼女はそう言うと、顎に手を当てぶつぶつと思考の海を漂い始めた。
手持ち無沙汰になってしまった私は、机の上に置かれているすっかり冷めてしまった朝食に手を付ける事にした。
メニューは、鯖の塩焼きに卵焼き、白いご飯に赤だしの味噌汁だ。まあメニューの名前を知っているとは言え(神に知識をインストールされたからだ)、私はついさっきまでエァースに住んでいた身。これが地球にやって来て初めての食事だ。
しかし身体は覚えているのだろうか、先程からうっとうしいくらいに空腹を自己主張しているし、更には口内の涎が止まらない。
流れるように私は箸を扱い、白く輝く米を口に運んだ。
――瞬間。私は雷に打たれたかのような感覚に陥った。
何だコレは。私はこんな食べ物を知らない。いや、そもそも食べ物とはこういうものだったと言うのか……。
いきなり頭を抱えて塞ぎ込んだ私の不審な行動を見てか、考える人のようなポーズを解除した妹さんがこちらに声を掛けてきた。
「えーっと、お口に合いませんでしたか? ……すみません、王女様と言うくらいだし、もっと豪華な食事をいつも摂られてましたよね……」
そんな事を言いながら不安げにこちらを上目遣いで見つめて来る妹さんに、私は二回目の衝撃を味わった。
――か、可愛い。
……何を隠そう私は、無類の可愛いもの好きだ。特に、エァースに生息していた、イヌーと言う生き物は大好きだった。地球で言う、犬によく似た生き物だ。だがこの妹さんは、そのイヌーをも上回る可愛さを持っている。そもそも……。
おっと、少し私の悪い癖が出てしまったようだ。既に涙目と化している妹さんをまだ見物気持ちもあるが、誤解を解くとしよう。
「ええ、そうね。この料理は私の口には合わないみたい」
何を言っているんだ私はーー!!
ほら見て! 妹さんがもう泣く三秒前くらいの顔をしてるじゃない! 本当に可愛……って違う!
「クスッ、冗談よ。ただ、こんなにも美味しい料理を食べたのは初めてだから、少し驚いていたの」
慌ててそう言って、今の私に出来る精一杯の笑顔を形作る。それをボケーッと見ていた妹さんは、唐突にボッと沸騰した。
「あ、ああ相手は兄さん相手は兄さん相手は兄さん……」
何をそんなに照れているのか。今の身体は、そんなにも美形なのだろうか。
「それで、私の説明は解ってくれたかしら?」
この表情を見る限り、恐らく答えは既に出ているのだろう。
「それは――」
何故だろう。いつのまにか王女様がはっちゃけていた。
私は悪くない。悪いのは文字を打ったこの右手だ。
誤字脱字誤用がありましたら、是非ともご教授お願いします。