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《元第四王女の場合》

お気に入り登録、ありがとうございます!

これを糧に、頑張って書いて行きます。

 ――私は今、猛烈に後悔していた。出来るならば、過去の自分を殴ってやりたいくらいに。

 それは何故かと言うとこれまた馬鹿らしいのだが、要するに、加減を間違えたのだ。

 第四王女である私が姉様達を差し置いて才能を発揮してしまうとマズイ。その考えに至ったのは褒めるべきだろう。

 そこで私は、我が儘で少し手のかかる妹を演じようとした。だけど我が儘と言っても、私にはどうすれば良いのか全く見当がつかなかった。

 なら真似をすれば良いじゃないと考えた私は、我が儘な王女が登場する書物を読み漁った。

 だがそれが間違いだった。いくらリアリティに富んでいる本を選んだとはいえ、現実と空想は違うのだ。物語の中の我が儘姫のように、周りから訳も無く愛される筈が無いのだ。

 それは、最初は私も疑った。初めてお父様に我が儘を言った時は、お父様が何度も聞き直してきたもの。

 それでも将来の為、平穏な暮らしの為と思い、物語の姫さまのように我が儘尽くしの生活を送った。

 自分の部屋に、全く欲しくもない贅沢の限りを尽くしたような家具が増えていくのは、かなり複雑な気持ちだった。

 更にそれが、私達王族が守るべき民の血税から出ているのだと考えると、涙が止まらなかった。

 日に日に私をみる眼差しが、ゴミを見るようになっていく。でもそのうち元に戻ると考え、態度を変えずに振る舞っていた。

 そして今日、私はいきなり着の身着のままでお城を放り出された。事実上の死刑かしらね。

 私は悟った。今までしてきた事が全て間違いで、決して許される事で無い事を。

 それでも周りの民から情報を集め、懸命に考えた。その結果、もう二度とお城に戻る事は出来ないという事実を再確認させられただけだった。

 あてもなく呆然と町を彷徨う。決して裕福とは言えないけど、それでも幸せそうに笑う人々を見て、私は心の中で叫んだ。

 ――私はただ平穏に暮らしたかっただけなのに! と。

 心の中とは言え思いっきり叫んだのが原因なのか、私の意識は闇に飲まれて行く。

 このままここで倒れると危険だ、なんて事も頭によぎったが、もうどうでも良かった。






 自分の身体が思いきり引っ張られるかのような感覚に、私の意識は急激に浮上した。

 マズイ、さらわれたか? と思うと同時に、一気に冴え渡る頭。

 急いで体を起こし、辺りを見回す。まず私の目に飛び込んで来たのは、目が眩む程の白だった。

 そのまま目をいくらこらしても、眼前に映るのは白、ただそれだけ。さらわれたとしても、ここはどこなのだろう?

『ようこそ。ここは神の間だよ』

 直接頭に響くかのような声、多分これは念話だろう。

「……貴方は誰? どういう目的で私をさらったの?」

 そう聞くと、声の主は少しの間を置いて、こう言った。

『ふむ。別に我はさらってなどいない。いや、魂だけをさらったと言うのが正しいか』

 訳の解らない事をのたまう声。少しでも多く情報を集めなくては。

「……それで、ここは何処なの? 貴方が創った結界?」

『結界と言うよりは、世界だろうな』

 ……コイツは、私を煙に巻こうとしているのか? さっきから意味が解らない。

『そんな事はどうでも良いんだ。それよりも、貴様に普通の日常と言うものを与えてやろう』

 何故、コイツが私の願いを知って……。

『簡単だ。貴様の願いは強く、神たる我にまで届いたのだ』

「……貴方が、本当の神であるという証拠はあるのかしら?」

『そんなモノは無い。ただ貴様は従えば良いのだ、この我に』

 ……これ以上刺激すると、少し危ないか。少し様子を見る事にしよう。

「……それで、普通の日常とはどうやるのかしら?」

『……なに、簡単だよ。ある所に、非日常を願った者が居た。それの魂と、貴様の魂を入れ替えるだけだ』

 そう言うや否や、私の体が見えない何かに引っ張られ始めた。

「……!!」

『案ずる事は無い、直ぐに済む。それと、貴様は人間にしては賢しいようなので、少し知識にサービスをしてやろう』

 そんな声を最後に、私の体はなすすべも無く引っ張られ、漆黒の穴へと引きずり込まれた。

 途中で若い少年のような人間とすれ違ったのが、やけに頭に残っていた。






「……!! ハァ、ハァ……」

 最後に落下する感覚を味わい、ようやくあの結界のような場所から抜け出す事が出来た。

「……ここは、何処かしらね」

 さっと周りを見ると、そこは見覚えの無い部屋だった。更には私には何か全く解らないヘンテコな物が……

「ぐっ!? うぅぅ……」

 未知なる物について考察しようとすると突然、頭に激痛が走った。

 脳髄を焼くような痛みに、私は思わず倒れ込むと、ガチャリとドアの開く音がした。

「兄さん、朝です……って、兄さん!?」

 私を何故か兄さんと呼んだ女性の声が、こちらへと駆け寄って来る足音がする。

「に、兄さん、わわ! 何で髪の色が変わってるの!?」 最後の力を振り絞り、頭を上げるとそこには、心底慌てているような顔の、可愛らしい女の子が居た。

場面転換に使用するのが気絶ばっかりで申し訳ございません。


それと、王女様の口調と内心の口調での違いに疑問を持った方が居るかと思いますが、あれは彼女が我が儘な姫様っぽい口調をわざと演じているからなのです。




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