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【急展開(ただのテンプレ)】

どう頑張っても一話がなかなか長くならない。

誰かコツを伝授してください。

「あ、あの! 大丈夫ですか!?」

 さっきまでゴブリンに襲われていた美少女がこちらを心配そうに覗き込んでくる。

「大丈夫。それより君のほうこそ大丈夫か?」

 これは予想だが、魔法を限界近くまで使ったからだろう。彼女の顔は蒼白で、少し苦しげな表情をしている。

「私は魔力を少しばかり使い過ぎただけなので大丈夫です。それより、本当にありがとうございます! もう駄目だと思って諦めていました」

 そういって美少女は深く頭を下げてきた。その仕草には、上流階級の人間特有のどことなく漂う品の良さが滲み出ている。

「いや、気にするな。それよりも俺を呼んでここまで連れてきたこの子にそれは言ってやりな」

 助かったのはあんなに周りの目も気にせず、必死に助けを求めた少女のおかげだろう。俺と言う存在がここに居るのは、偏に彼女が起こした行動の結果なんだから。

「いやいや私なんかじゃなくて貴方のおかげだよ! 私からも本当にありがとう!」

 俺にそう感謝を告げ、無事を喜び合う二人。キマシ……じゃなくて、本当に嬉しそうに笑う二人。

 その心からの笑顔を見て、俺はこの子達を守る事が出来たんだ、そう実感した。

 母さんの言葉が脳裏に蘇る。

 あれはそう、俺が小さい頃、虫を無慈悲に殺した時だった。

「こら圭! 命って言うのはね、例えそれがどんな生き物であろうとも理由なく奪っちゃいけないの!」

 あの頃の俺は、その言葉の意味がよくわからず、ただ母さんの剣幕にビビって泣いていた。

「……でもね、時にはどうしてもゆずれない理由の為に命を奪ってしまう事もある。そういう時は胸を張って前を向きなさい! そうじゃないと、奪われた命の方は可哀相だから」

 そう言って、恐らくは人生最大のドヤ顔を泣きじゃくる俺に向けた母さん。多分この言葉は、その頃戦争映画にハマっていた母さんが、自己満足の為に俺へ言った戯れの言葉だったのだろう。

 ――だけど、そんな母さんの言葉と、何より嬉しそうに笑う二人を見て、俺の心はふっと軽くなった。

 そのまま何かを悟ったかのような気持ちで二人を見つめていると、突然ハッとした表情になった美少女の方が、こちらに向かって話掛けてきた。

「そういえば自己紹介を忘れていました! 私はレムアです。先程は本当にありがとうございました」

 それに続けて、少女の方も自己紹介を始める。

「私も忘れてた! えっと、私の名前はクリンだよ! お姉さんはなんて名前なの?」

 ……どうしよう、名前なんか全く考えてなかった。この身体の名前も記憶に無いし。まあとりあえずは自分の名前で良いか。

「俺の名前はケイ。お二人さんよろしくな」

 そう簡潔に自己紹介すると、レムア――美少女お嬢様の方が、形の良い眉を少しひそめてこう言った。

「あの……何故一人称が俺なのですか? こう言っては何ですが、全く似合っていませんよ」

 ……おおぅ。やべぇ凄いショック。この娘恐ろしい。真面目で優しそうに見えて毒舌……と言うよりは、言いたい事をハッキリと言うタイプか。

「……ゴメンな。もう癖でなかなか直らないんだよ」

 俺が肩を落としてそう言うと、栗色の毛がクリンとなっている明朗快活な少女、クリンが内緒話をするようにレムアの耳元に口を寄せた。

「ちょっとレムア! ケイ姉さん落ち込んでるじゃん! 事実だからって、もっと優しく伝えなきゃ」

「でもああいうのって、ハッキリと言った方が結局はいいじゃない。ケイさんの為にも」

 …………ねえ、死んでも良い? この娘ら、人を悪気なくけなす事に関しては最強すぎるぞ本当に。って言うかケイ姉さんってなんだケイ姉さんって。俺はお前の姉さんでも何でもないから。

 依然ひそひそと話し合う二人だったが、結論が出たのか二人は同時に顔を上げた。

 その表情は酷く優しげで、まるで全てを包み込む聖女の微笑み。

「ごめんなさい、私が間違ってました。私はケイさん、貴方がどんなに変人であろうとも受け入れますから」

「その恥ずかしい口調はケイ姉さんの個性だもんね! 個性は直したくても直せないから仕方ない!」

 だが時には、そんな笑顔も人を再起不能にする最強の武器たりえるのだ。

 ――そう、俺の心は完膚なきまでに打ちのめされていた。

「ゴメンな、俺ちょっと死んでくるわ」

 無理矢理に笑ってそう言うと、レムアとクリンが二人がかりで必死に止めてくる。

「少し待って下さいケイさん! 死ぬなら私がお礼をして心残りをなくしてから死んで下さい!」

 ……完全に心が折れ、呆然となった俺が復活するのには約一時間を要した。


「それで、さっきお礼って言ってたけどどういう意味だ? 別にキスはいらないぞ、欲しいけど」

 俺が最後だけ聞こえないようにそう言うと、レムアがこれだけはゆずれない! と言う表情になって語りだした。「私の家の教えは、『受けた恩は必ずその場で返せ! 後々に回すと面倒だから』というものです。この教えを破るわけにはいきません!」

 その横では、クリンが同調するようにぶんぶんと頭を上下に振っている。

 ……じゃあ、本当にしてくれるのかな? キス。やべえよファーストキスだよ。

「そう? じゃあレムアの方からして欲しいな」

 俺がそう言うと、レムアは少し首を傾げながら質問をしてきた。

「して欲しい……ですか? えっと、何をですか?」

「何って……キスだよキス。さっき言ったじゃん」

 キスを耳にしたレムアは、意味がわからない、という表情をした。

「……ええと、キスと言うのは、もしかしなくても接吻の事でしょうか?」

「そうそう、接吻の事だよ。……それとさ、俺初めてだからさ、優しく頼むよ」

 ――瞬間、顔を沸騰させたレムアからビンタが飛んできたのは言うまでもない。

大体の方はわかると思いますが説明しておきます。

【】サブタイトルをこれで囲んでいる方は平凡少年のお話。

《》こちらで囲んでいるのは王女様のお話。

となっております。

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