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辻本隆之

連載です。つたない文章ですがよろしくお願いします。


病院から出ると雨が降っていた。


俺は傘を家に忘れたことに気づいてため息をついた。



俺が葵嶋高校きしまこうこうの校門にたどりついたのはそれから15分後だった。


もちろんビチョビチョである。


ただいまの時刻は11時26分。当然遅刻だ。


まぁ、いつものことなのでなんの問題もないが。


とりあえず下駄箱に向かうことにした。



靴をはきかえた後はいつも通りに保健室に直行した。


保健室のドアを開けると、保険医の柿崎翠かきざき みどり先生がいた。


先生は俺の方をチラッと見た後、すぐに手元の書類に目を落とした。


柿崎先生は30代前半の女性だ。身長が高く、立ったら172センチの俺とほとんど変わらない。


顔立ちは綺麗なのだが、しわくちゃな白衣や目の下のくまのせいで色々台無しである。



「挨拶ぐらいして下さいよ」


俺が言うと


「何言ってやがるんだ。保健室登校のくせに」


ぞんざいな言葉づかいも色々台無しにしてる気がするな。


「相変わらず冷たいですね」


「知ってる」


「学校に来てるだけいいじゃないですか」


「……っ!」


俺がそう言ったとき、先生が一瞬顔を歪めたのを俺は見逃さなかった。


先生は俺の質問には答えずに、


「…病院には行ったのか?」


「行きましたよ」


「どうだった?」


「いつも通りですよ。良くも悪くもなっていません」


俺はそう言った後、少しだけ乾いてきた学ランを脱いだ。


先生は書類から目を上げると俺に背を向けた。ちょうど窓の外に視線をさまよわせるかのようだった。


「なぁ辻本つじもと


「なんですか?」


「まだ…、まだ……死にたいか?」


その言葉を発した先生の手は強張っていた。


「たまに」


隠してもしょうがないので、正直に言った。


「……そう…か」


「別に大丈夫ですよ。どうせ後1年くらいで死ぬんだし」


―――パァン!!


俺がそう言った途端、先生は俺に平手打ちをくらわせた。


…何だかとても痛かった。


「…痛いです」


「だろうな」先生はなんだか泣きそうな顔をしていた。


「何でそんなことを言うんだ!?」


「俺は事実を言ったまでですよ」


「本当にそう思っているのか!?お前は!」


先生の手が俺の胸ぐらを掴んだ。涙を隠そうともしてない。


「お前の命は後1年で終わるかもしれないんだぞ!?」


「知ってますよ」


「頼むからそんな言い方はしないでくれ…!!」


「…すいません」


俺は先生と目をあわせることはできなかった。



それから2分後。


俺は学校の校門を出た。


あんなことがあった後ではどうしても居づらかったからな。


雨はもう止んでいた。


雲の隙間から太陽が顔をのぞかせている。


あまりにも綺麗なその光に俺は顔を伏せた。


いつの間にか脱いだ学ランは乾いていた。



俺は辻本隆之つじもと たかゆき。ある病気で余命1年と宣告された、葵嶋きしま高校2年のしがない男子高校生だ。


――――ある特殊な能力を除いて。






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